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依頼消化編
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だいぶ走って数時間、リッカの視界には豪華とは言い難いがそれなりに大きな街の門が見えてきていた。門番もしっかり立っているようで、フェリとウルにストップをかける。突然のことにノアとタイチが身を乗り出してリッカへ問いかけた。
「どうした?」
「門番がいる。流石にこのままのサイズで行くのは混乱を招くだけでしょー?」
「確かにそうだね、失念していたよ……じゃあここから歩いていこうか。そんなに遠くないし、予想以上に早かったしね。」
「ってことだから、ちょっと下りるね?」
『りょうかーい!』
横道にそれてからフェリとウルの上からそれぞれが降り、身を整える。ウルは身体を縮め中型犬ほどのサイズになった。小さくなったウルにタイチが青いリボンを巻いていることから、誤射防止だろうと考える。中には魔獣というだけで従魔であるかの確認もせずに魔法を打ち込んでくる者や、切りかかってくる者もいるのだ。故にノアの従魔であるノーツやルキにも同じようにリボンやスカーフが巻いてある。
リッカの従魔の神獣たちは封印の印があるのでいいとして、フェリをどうするかでリッカは考えていた。
「んー……」
『りっか?』
「フェリ、これくらいの大きさになれる?」
そう言ってリッカが示したのはウルよりもさらに一回り程小さいサイズ。フェリはその大きさを確認すると、やってみる!と快い返事をし、ぐぐぐっと自身の身体に魔力を込めた。みるみる内に小さくなっていき、小型犬ほどのサイズになる。そのサイズに満足したのかリッカはおっけー!と親指を立てた。
「フェリの今度作るか買うかするから今回はこれで我慢してくれる?」
『え……でもこれ、りっかのりぼんじゃ……、』
「そうだけど、これは見た目をよくするためのリボン。実際はリボンで結ってるんじゃなくて、髪紐で結ってるんだ。だから、大丈夫。」
そう、リッカが差し出したのはリッカがよく髪の結び目につけているリボンだった。リッカは普通の髪紐と飾りのリボンの二種を使っているためリボンを外してもさして問題がないのである。きゅっと苦しくないくらいでフェリの首にリボンを巻くと、元の道付近で待っていたタイチやノアの元へ向かった。
「あれ?それってリッカくんがいつも身に着けてるリボンだよね?」
「持ち合わせがないからねー。フェリには悪いけど、今回はちょっとこれで我慢してもらうよ。」
「珍しい。リッカが準備してなかったのか。」
「すっかり失念してたの!さ、行こ?これで騒ぎにもならないでしょ。」
二人を促してリッカは先頭を歩く。歩幅が小さくなった分フェリの歩くスピードは落ちてしまったが、それでもリッカ達と歩くスピードは変わらないようで、苦労はしないようだった。
街の大きな門付近に到着し、検問所でアカデミーのバッジを見せるとすぐに通してもらえた。これが入寮の時にバッジ諸々を渡してくれた女性が言っていたことだろう。なるほど、確かに便利である。街に入ってすぐ、ノアが早速で悪いけど、と言葉を続けた。
「宿をとる前に、ギルドに行って依頼の確認をしようか。」
「はーい。あ、そうだ聞きたかったんだけど、今いい?」
「いいよ。何が知りたいんだい?」
「アカデミーのすぐ近く……入寮の時に通った門の方にはそれなりに大きい街があったじゃない?そっちのギルドの依頼はないの?あそこは王都だって聞いてたからそっちの依頼があるのかなって思ったら割と遠出したし……。」
リッカの疑問にノアは理解したのかにっこりと笑いながら答えてくれる。
「あのね、あそこはリッカくんも言ってる通りロアという国の王都で、アカデミーも王都にあることになるんだけど、王都は王都直属の騎士たちが守っているんだよ。採取系の依頼とかは王都のギルドからもアカデミーに来たりするんだけど、討伐系は王都のギルドからアカデミーには来ないんだ。王都だし、冒険者も実力者が揃ってるんだよね。人も集まるし。それに、いざとなればその直属の騎士が派遣されるんだよ。だから主にアカデミーに来るのは王都の外のギルドからってことになる。まあ、遠方の街のギルドの冒険者でも対応できるだろうけど、人は少ないし、なにぶん数も多いしね。」
教えてくれたのはアカデミーに来るギルドの依頼の仕組みだった。詳しく教えてくれたそれに納得し頷いた。
「なるほど……そういうことだったんだね。」
「はー……いろいろあるんだな。」
「まあね。さて、じゃあ行こうか。この街は結構来てるから案内もできるよ。」
そう言って歩き始めたノアの足取りにためらいはない。言葉通り何度もこの街を訪れているのだろう。すたすたと目的地へ進むノアについてリッカとタイチも歩き始めた。
「どうした?」
「門番がいる。流石にこのままのサイズで行くのは混乱を招くだけでしょー?」
「確かにそうだね、失念していたよ……じゃあここから歩いていこうか。そんなに遠くないし、予想以上に早かったしね。」
「ってことだから、ちょっと下りるね?」
『りょうかーい!』
横道にそれてからフェリとウルの上からそれぞれが降り、身を整える。ウルは身体を縮め中型犬ほどのサイズになった。小さくなったウルにタイチが青いリボンを巻いていることから、誤射防止だろうと考える。中には魔獣というだけで従魔であるかの確認もせずに魔法を打ち込んでくる者や、切りかかってくる者もいるのだ。故にノアの従魔であるノーツやルキにも同じようにリボンやスカーフが巻いてある。
リッカの従魔の神獣たちは封印の印があるのでいいとして、フェリをどうするかでリッカは考えていた。
「んー……」
『りっか?』
「フェリ、これくらいの大きさになれる?」
そう言ってリッカが示したのはウルよりもさらに一回り程小さいサイズ。フェリはその大きさを確認すると、やってみる!と快い返事をし、ぐぐぐっと自身の身体に魔力を込めた。みるみる内に小さくなっていき、小型犬ほどのサイズになる。そのサイズに満足したのかリッカはおっけー!と親指を立てた。
「フェリの今度作るか買うかするから今回はこれで我慢してくれる?」
『え……でもこれ、りっかのりぼんじゃ……、』
「そうだけど、これは見た目をよくするためのリボン。実際はリボンで結ってるんじゃなくて、髪紐で結ってるんだ。だから、大丈夫。」
そう、リッカが差し出したのはリッカがよく髪の結び目につけているリボンだった。リッカは普通の髪紐と飾りのリボンの二種を使っているためリボンを外してもさして問題がないのである。きゅっと苦しくないくらいでフェリの首にリボンを巻くと、元の道付近で待っていたタイチやノアの元へ向かった。
「あれ?それってリッカくんがいつも身に着けてるリボンだよね?」
「持ち合わせがないからねー。フェリには悪いけど、今回はちょっとこれで我慢してもらうよ。」
「珍しい。リッカが準備してなかったのか。」
「すっかり失念してたの!さ、行こ?これで騒ぎにもならないでしょ。」
二人を促してリッカは先頭を歩く。歩幅が小さくなった分フェリの歩くスピードは落ちてしまったが、それでもリッカ達と歩くスピードは変わらないようで、苦労はしないようだった。
街の大きな門付近に到着し、検問所でアカデミーのバッジを見せるとすぐに通してもらえた。これが入寮の時にバッジ諸々を渡してくれた女性が言っていたことだろう。なるほど、確かに便利である。街に入ってすぐ、ノアが早速で悪いけど、と言葉を続けた。
「宿をとる前に、ギルドに行って依頼の確認をしようか。」
「はーい。あ、そうだ聞きたかったんだけど、今いい?」
「いいよ。何が知りたいんだい?」
「アカデミーのすぐ近く……入寮の時に通った門の方にはそれなりに大きい街があったじゃない?そっちのギルドの依頼はないの?あそこは王都だって聞いてたからそっちの依頼があるのかなって思ったら割と遠出したし……。」
リッカの疑問にノアは理解したのかにっこりと笑いながら答えてくれる。
「あのね、あそこはリッカくんも言ってる通りロアという国の王都で、アカデミーも王都にあることになるんだけど、王都は王都直属の騎士たちが守っているんだよ。採取系の依頼とかは王都のギルドからもアカデミーに来たりするんだけど、討伐系は王都のギルドからアカデミーには来ないんだ。王都だし、冒険者も実力者が揃ってるんだよね。人も集まるし。それに、いざとなればその直属の騎士が派遣されるんだよ。だから主にアカデミーに来るのは王都の外のギルドからってことになる。まあ、遠方の街のギルドの冒険者でも対応できるだろうけど、人は少ないし、なにぶん数も多いしね。」
教えてくれたのはアカデミーに来るギルドの依頼の仕組みだった。詳しく教えてくれたそれに納得し頷いた。
「なるほど……そういうことだったんだね。」
「はー……いろいろあるんだな。」
「まあね。さて、じゃあ行こうか。この街は結構来てるから案内もできるよ。」
そう言って歩き始めたノアの足取りにためらいはない。言葉通り何度もこの街を訪れているのだろう。すたすたと目的地へ進むノアについてリッカとタイチも歩き始めた。
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