ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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授業編

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 「飛竜スカイドラゴン……?またそんな大物とやりあってたのか!?」
 「またってなんだよ!それにやりあってないし!仲良くなっただけですー!」
 「仲良くって……それはそれでどうかと思うぞ……。」
 「いいじゃん、仲良きことはいいことでしょ?ほら、カガチさんも来たし僕らも向こうに行くよ。どうせノアとかに報告しなきゃいけないし、その時に一から十まで全部説明してあげる。」
 
 リッカが生徒の真ん中で事情説明をしているカガチを見ながらタイチにそう言い、カガチの方へ歩を進めると、少し納得いかないという表情をしながらもタイチは黙ってリッカの後ろからついてくるようだった。
 寄ってきたリッカとタイチに気づいたカガチが、訝し気な表情でリッカを見る。何かを疑っているような視線にリッカは分かりやすくむくれた。

 「何さ」
 「お前、《鎮静カーム》まで使えたのか……あれは一応光属性の上級魔法なんだがな……。」
 「ん?なんで知ってるの?いなかったよね?」
 「ベルが報告してくれたぞ。ったく、使えるにしても無茶しすぎだ。例の件に関しても。」
 「ベルから聞いたにしても、何の魔法かまではいってなかったと思うんだけど……あと、カガチさんからしたら無茶かもしれないけど、僕からしたら無茶じゃないから。それに言葉も通じたし。」
 「ま、どういう状態でどうなったのかっていうの聞けば大体わかるぞ。しかも……また手懐けたのか。」
 「手懐けてないから。ちゃんとお話しして仲良くなるだけ!っていうか、それで何の魔法かわかるカガチさんも大概だよ。」

 リッカの言葉にカガチは答えない。むしろ突進牛ラッシュキャトルと意思の疎通ができ、親しくなること自体あり得ないようなことではあるため、カガチは何も言えなかった。常日頃から魔獣と意思疎通が取れ、最初からリッカへの好感度が爆発していて、魔獣とすぐに親しくなることができるリッカは常識から外れてしまっていると言っても過言ではない。本人にそう伝えることは恐ろしくてできないが。
 まあいいか、とカガチは一つ息をつくと、首を垂れているルーベンへ向き直った。当の本人はリッカの行動ですっかり懲りているのかなんとも言えないが、カガチは教師として今後のことも考えどっちにしろ説教をしなければならないのだ。それを理解しているリッカは自分が責め立てたいのを我慢し、口を閉じた。

 「ルーベン、自分がしたことの重大さ、分かっているか?」
 
 重く告げられたそれに小さくこくりと頷く。

 「今回は俺だけじゃなくリッカやタイチ、《隠蔽ハイディング》が使えるベルがいたから負傷者もいなかったし、大事にもならなかったが……一歩間違えれば負傷者どころか死者がいてもおかしくない騒動になってもおかしくなかったんだからな。」
 「……はい。」
 「俺は最初に言ったはずだ。自分の実力相当の魔獣と契約をしろ……自分の力を見誤るなと。何故、突進牛ラッシュキャトルに手を出した?」

 ルーベンはカガチの鋭い眼光にびくりと怯み、気まずそうに視線を逸らす。明らかにやましいこと、自分勝手な理由があると言っているようなものだ。カガチが小さくため息をつき、先ほどよりも幾分か優しい声色でなんでだ?と尋ねると、ルーベンも堪忍したかのようにほそぼそと語り始めた。

 「アイツに……あの新入りに負けたくなかったんです。……年も、アイツの方が下だし、アイツに……あんだけの魔獣と契約する力があるなら、Aクラスである俺にも、できると……。」

 ルーベンの言い分を聞いたカガチは微妙な表情になり、肩を落とす。そもそも、比べることが間違っている。リッカとルーベンではそもそも潜在能力の差から大きいものがあり、実力差も相当なものがある。それに年齢は関係ないのだ。それに、カガチはちゃんと、リッカが他とは違う強い力を持っているということは示唆しているので、ルーベンには弁明の余地もない。

 「……お前、俺がリッカとタイチは特例が効いて座学がすべて免除になってるって言ったの、聞いてなかったのか?座学が免除になるっつーことはもう冒険に出ることには何の問題もないって言ってるようなもんなんだぞ?まだ座学も受講しなければならないルーベンが叶う相手じゃないに決まってるだろ。」
 「ぐ……」
 「とにかく、これで懲りたろ?まだアカデミーに所属していたいのであれば今後言いつけを破るようなことは絶対にするなよ。俺も、無暗に生徒を減らすような真似はしたくないからな。」
 「う……、は、はい。」

 最後の一押しと言わんばかりの鋭い視線にたじろいだルーベンは再度顔を俯かせた。ここでリッカへの謝罪がない以上ルーベンがどう思っているのかなんてたかが知れている。当のリッカはあまり気にしない質なので、どうでもよいのだろうが、タイチはいい顔をしているとは言えなかった。しかし、リッカが望んでいない以上割り込むわけにもいかず、ただひたすら、悶々としてしまう。
 そんなタイチの様子に気づいたのか、リッカは口元に笑みを浮かべながらぼそりと呟いた。



 「次があれば本当に容赦はしないよ。」

 おそらくタイチにだけ聞こえたそれに、タイチは微妙な表情をしてしまうのだった。実際にかなりムカついているのでかわいそうとは思わないが、リッカが容赦しないことでどういう影響がでるのか、考えるだけで恐ろしい。
 リッカが容赦しない、ということはリッカの従魔である神獣たちも容赦しないということだろうと考えてしまったのだ。うーん、と困ったように唸るタイチを気遣ってくれるのは、頭の上にいる幸運兎ラッキークロ―リクのローリアだけである。

 
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