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授業編
課外授業
しおりを挟む昨日あれだけの不安を覚えていた課外授業だったが、ルーベンはリッカ達に突っかかってくることもなく穏やかに始まった。と言うのもその課外授業のある場所が場所だったため、リッカ達には馴染みがなく担当の教師であるカガチと共に集合場所に集まったからである。
カガチの従魔である二号と戯れながら現れたリッカ達に突っかかろうにも、リッカ達と親しくしているだろうカガチを前に口を出すことができなかったとも言えるが。
「よし、皆集まっているな。大体知っていると思うが今日の課外授業はテイマー科らしく、自分の従魔を見つけることだ。二年で凡その契約の陣は学んでいるだろうからいちいち説明はしないぞー?けどまあ、手本もなく最初から一人でやるのは不安だろうし……そうだなぁ、」
カガチが声を上げ、その場に集まっていた三年のAクラスのメンバーが口を閉じ顔を上げる。リッカもカガチから少しだけ離れた場所で話を聞いていたのだが嫌な予感がし、顔を俯かせていた。もちろんタイチもどこか別の方向を見ている。にやりとしたカガチはリッカ達の方に近寄り、ぽんっと肩に手を置いた。
「手本、頼むわ。」
「……僕が?」
「そう、お前が。四匹も従魔いるし、慣れてんだろ?」
「そういう問題じゃないよ。……それに、多分陣違うと思うけど。」
「ヤマト式のか?」
「んーん、フィラノ式のやつ。」
だから、契約のやり方も多少異なる、と。そうリッカは告げるのだがカガチはまあいいだろうとそのまま話を進めてしまった。実際のところ、大元の陣は変わっていないのだがヤマトはテイマーが多い国。従魔との繋がりを深くするための陣を独自に生み出したので他で使われるものとは異なる。さらにフィラノは特にその傾向が強く、ヤマト式とも異なる陣を生み出しているのだ。封印の呪とはまた違うフィラノ式は契約の時、魔力を余計に使う代わりに魔獣との意思の疎通がしやすくなるというもの。そういうこともあって、フィラノ式の陣は通常よりも複雑で難しいものとなっている。
普通の陣での契約の場合、陣を用意して“我、汝との契約を望む者。”と告げれば相手がそれを了承していれば完了される。きちんとした文言が決まっている一般的なものと違ってフィラノ式は文言は決まっていない。その分魔力で補完している形だ。ちなみにタイチもフィラノ式のを使っている。
「……まずは従魔になってくれる子を見つけないといけないんだけど。」
「ああ。だから、とりあえずまずはお前らも相手を見つけることからしろ。どっちにしろ契約するには相手の了承がいるのは知っているだろう?リッカの契約の手本を見せてもらってからお前らもやるか。そうだ、リッカがきちんとできるのかって不安を覚える奴もいるだろうが、こいつ……タイチ含めこいつらは特例が効いていてこういう課外授業以外の座学は免除されているくらい実力はある。安心しとけ。」
「……はあ。ちなみにここまで言っちゃってる上で一応聞くけど拒否権は?」
「ない。ま、ここいらで実力を示すのもアリだぜ?」
「……分かったよ。」
カガチの説明はある一人を指して言っているようだった。もちろんルーベンである。昨日のやり取りを知っているのか、カガチはルーベンが何か対抗して言ってくることを想定してそう説明したのだ。ちなみにこの説明のせいでリッカも逃げられなくなった。自分じゃなくてもタイチではだめなのか?と言う視線をカガチやタイチに投げかけてもそれぞれ目を逸らされるだけである。
「じゃ、他に異論もないってことで、とりあえず相手を見つけてこい。くれぐれも興奮させるんじゃねぇぞ、自分の力を見誤るな。難易度の高い魔獣は今の前らには絶対に無理だ。……よし、みんな分かってんな?行ってこい!」
自分の力も分からずに難易度の高い魔獣に行っても無駄に怪我をしたり下手すれば命を落としかねない。カガチの合図とともにそれぞれ仲の良いものと魔獣を探しに散り散りに歩き始めた。リッカとタイチもそれに倣い歩いていく、と言うことはせずに、何やら首を傾げている神獣たちに声をかけた。
「みんなどうしたの?」
『……泣いてる。』
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