ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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リッカとタイチ

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 「あの、近い……です。」
 「ああすまんすまん、つい……な?それで、ノアと君たちが和解したところで話を進めてもいいか?」
 「和解って……別に喧嘩していたわけじゃないよ?」
 「変わらないだろ?リッカ君に誤解させて変に警戒させてしまっていたんだからな。」
 「むう……」

 ジルとノアのやり取りにリッカもタイチも目を丸くした。まるで親子のようなやり取りに驚いたのだ。ただのアカデミー長と生徒のノリではないように思える。その視線に気づいたのか、苦笑いしながらノアはその視線に答えた。

 「あー……僕とアカデミー長、ジルさんは一応親子のようなものなんだ。半森人族ハーフエルフはどちらの種族からも嫌われやすいからね……たまたまジルさんと出会って、引き取ってくれたの。」
 「たいしたことじゃないさ。その才能、野放しにしておくのはもったいないと思っただけだ。」
 「才能……?」
 「魔法の適性が高いらしくてね。僕は魔法使いメイジ科に属しているんだ。」
 「え、テイマー科じゃなくて……?」
 「従魔がいるからテイマー科ってわけじゃないんだよ。だから、魔法が使えるけど剣士ソードマンだったり剣の扱いに優れているけれど魔法使いメイジを名乗ってたりね。まあ、テイマー科以外で従魔連れているのなんて僕ぐらいだろうけどね。何故って聞かれても半森人族ハーフエルフだからとしか言えないけど。とはいえ、人は見かけによらないってことさ。」

 僕もその一人、と指先に小さな光を灯した。詠唱もなく発動された魔法はおそらく初級魔法の《ライト》だろう。驚くほどの速度で発動された魔法は無駄もなくきれいに灯っている。流石に先生黄龍の指導のいいリッカもまだここまでには至っていない。
 驚いている様子のリッカ達に満足して、ノアは魔法行使をやめジルに説明を続けるように促した。

 「さて、それじゃ説明に入るぞ。特待生枠のことだ。」
 「……それなんですけど、いいですか?」
 「ああ、なんだ?タイチ君。」
 「クートベルアカデミーを受験するにあたっていろいろ調べてはいたんですけど、その中に特待生コースなんて無かったと思うんですけど……。」
 「ああ、確かに正式に記しているわけではないからな。それに特別枠の合格者を求めているわけではないし。あくまで例外的な実力を持っている受験生が現れたときにとる措置だから。」
 「そうだったんですね……」

 納得したように頷いたタイチを見てジルは満足したようにうんうんと声を出し、また説明を再開した。

 「それで、特待生コースなんだが、君たち二人だけ別の授業とかじゃなくて上の学年の授業に混ざる形になるんだ。」
 「え、それだけですか……?」
 「まあな。これから渡す資料の理解度でどの学年になるかは決めるんだが……ほら、これだ。」
 「……分厚いですね。」
 「そりゃあ六学年分あるからな。って言っても学ぶのは最初の三学年で、あとの三学年は主に実践学習になる。」

 六学年分、と言われうへぇと嫌そうに顔を歪めるが、文字が小さいわけではないため、本当に三学年ほどの量しかないのだろう。要は最初の三学年で知識的なものを詰め込み、後の三学年でアカデミーの庇護下の元実際に冒険者として動き経験を積んでいくのだ。そうすることによって卒業後、あまり混乱せずにそのまま冒険に出ることができるという訳である。ちなみに、依頼等もきちんとしたギルドから回してもらっているらしい。

 「最初の三学年は進級試験に筆記と実践があるんだけど、後の三学年は進級試験の代わりにポイント制で進級できるか決まるんだよ。」
 「ポイント制?」
 「依頼をこなして、その依頼の難易度によって報酬と一緒にポイントがもらえるんだけど、進級するためには何ポイント以上ないといけない、ってやつね。」
 「なるほど……そういう仕組みなんですね。……とりあえず、これ、確認したらいいですか?」
 「ああ。とりあえず、頼む。」

 一ページ目をぺらりとめくって書いてあるのは気候や土地ごとにいる魔獣の種類。そこからぺらりぺらりと速読の要領で目を通していくが、書いてあるのはすべてリッカが書物で読んだものばかりだった。本当にあの書庫にはテイマーのすべてが載っていたというのか。結局、序盤に魔獣全体のこと含め契約に関する記述があり、中腹に記されているのがまさかの封印の呪などの呪術や魔法に関するもの、最後に記されていたのは神獣、聖獣に関する記述とその他テイマーに関した内容が書かれていた。
 渡された資料の内容にふ、と息をつき横を見るとちょうど読み終わったのか、同じようにタイチも顔を上げている。こっちを見たタイチの表情は何とも言えない表情をしていた。

 「あーやっぱり?」
 「試験前に、リッカんとこの書庫で読んだ……。」
 「だよね。僕なんて本を読んだ挙句父様と先生にみっちり教えられてるんだから……。」
 「?……どうしたんだ?」
 「もう読み終わったのかい?早いね。」

 リッカとタイチの様子を不思議がっているジルとノアだったが、曖昧な表情の二人に何かを察したのか驚いた表情をしていた。何故リッカとタイチがこんな微妙な表情をしているのか、分かってしまったのだろう。

 「まさか、全て知っている内容だったか?」
 「はい、もうばっちり……。」
 「……こりゃあもう四年からか?」
 「そうですね……あえて三年から、と言うのもいいと思いますけど。せっかくアカデミーに入るんですし。」
 「あーまあ、そうだなあ……しかし、神聖なる獣をつれているんだ。今更神獣様の座学なんかいらないだろう?」
 「では、課外授業だけ一緒に受けるというのは?その他は四年以上の生徒のように依頼を受けてもらう形で。」
 「まあそれならいいか……。」

 本人たちを差し置いてぽんぽん話が進んでいくことにリッカとタイチは首を傾げることしかできない。ジルとノアの間で決着がついたのか、二人で顔を見合わせ頷いていた。
 
 「決まった、君たちはさっき話したように基本三年の課外授業にだけ参加し、他の時間は依頼消化に努めてくれ。基本的に三人から六人のパーティを組んで動くんだが、そこのところはノアと三人で組めば問題ないだろう。」
 「はあ……ノアさんは他に組んでる方いないんですか?」
 「いないよ。今までずっと一人でやってきたんだ。」
 「それらならなおさら、僕らと組むの嫌じゃないです?」
 「君たちなら全然問題ないよ。むしろ大歓迎さ。」

 そう微笑まれて二の句が続けれなかった。まあリッカとしても先のノアとのやり取りでマイナス感情はほぼなくなったに等しい。神獣たちに絶対に手を出さないということも含めて信頼はおけるだろう。タイチはそもそもそう負の感情はなく、反対ではないようだ。
 神獣たちも反対していないみたいで、リッカは一つ息をついてノアを見た。

 「……よろしく、お願いします。」
 「よろしくお願いします。」
 「こちらこそ、よろしくね。リッカくん、タイチくん。」

 にこりと笑ったノアはどういうわけか、しんそこ嬉しそうに笑っていた。


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