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Kiyoka's story
第5話 Kiyoka-5
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バスに揺られてどのくらい経っただろう。
そんなに経っていないと思っていたが、降りるバス停に到着しそうになっていた。
慌てて降車ボタンを押し、かけ降りた。
時間を見ようとスマホを手に取ると、母から着信が入っていた。
「もしもし。ごめん、バスに乗ってた。」
「お疲れ様。あんたも大変ね。実はお祖母ちゃんの遺品整理してたらノートが出てきてね。あんた達のことが書いてあったから持って帰ってきたのよ。そっちに送ろうか?それか、今度帰ってきたとき持ってってもいいけど。」
「今度帰ったときに読もうかな。四十九日もあるし。」
「分かった。じゃあ、1ヶ所だけ写真撮って送ってあげる。」
「分かった。ありがとう。」
祖母は、スーパーで突然倒れて亡くなるまでずっと一人暮らしをしていた。毎日日記を書いていたことは小さい頃から知っていた。
きっとそれだろうと思っていた。
母から画像が届いた。
通知を開くと涙が止まらなくなった。
大人になって、こんなに外で泣いたのは初めてかもしれない。
【清香ちゃん
おじいちゃんが天国に行っちゃった日に
一緒に居てくれてありがとうね。
かわいい寝顔を見ることができて
おばあちゃんはとっても安心したのよ。
こんなにかわいい孫を私たちのところに届けてくれた
神様にありがとうって言わなきゃね。
もしも、わがままを言っていいのなら
私がおじいちゃんに会いに行く日がきても
清香ちゃん達をずっとおじいちゃんと一緒に
見守り続けることができますように。
神様はご褒美に叶えてくれるかしら。
いつまでもいつまでも笑顔のあなた達を見ていられます
ように。】
その当時書いたものなのか、最近思い付きで書いたのか、画像からは読み取れない。
ただ、私がずっと後悔していたあの日を、祖母は「ありがとう」と言ってくれていた。
もしかしたら、あの日私たちに付いて家に戻ったことを後悔していたかもしれないのに。わがままを言った私達を責めたかったかもしれないのに。
誰にも見られる予定の無かったであろうそこには「ありがとう」と...
ここに記されたもしもは、祖母のわがままなどではない。私達の願いだ。
もしも願いが叶うのであれば
ずっとずっと祖父母が一緒に
いつまでも笑顔の私達を
見守り続けてくれますように。
その為には、
祖父母に恥じない、悲しませない生き方を...
そんなに経っていないと思っていたが、降りるバス停に到着しそうになっていた。
慌てて降車ボタンを押し、かけ降りた。
時間を見ようとスマホを手に取ると、母から着信が入っていた。
「もしもし。ごめん、バスに乗ってた。」
「お疲れ様。あんたも大変ね。実はお祖母ちゃんの遺品整理してたらノートが出てきてね。あんた達のことが書いてあったから持って帰ってきたのよ。そっちに送ろうか?それか、今度帰ってきたとき持ってってもいいけど。」
「今度帰ったときに読もうかな。四十九日もあるし。」
「分かった。じゃあ、1ヶ所だけ写真撮って送ってあげる。」
「分かった。ありがとう。」
祖母は、スーパーで突然倒れて亡くなるまでずっと一人暮らしをしていた。毎日日記を書いていたことは小さい頃から知っていた。
きっとそれだろうと思っていた。
母から画像が届いた。
通知を開くと涙が止まらなくなった。
大人になって、こんなに外で泣いたのは初めてかもしれない。
【清香ちゃん
おじいちゃんが天国に行っちゃった日に
一緒に居てくれてありがとうね。
かわいい寝顔を見ることができて
おばあちゃんはとっても安心したのよ。
こんなにかわいい孫を私たちのところに届けてくれた
神様にありがとうって言わなきゃね。
もしも、わがままを言っていいのなら
私がおじいちゃんに会いに行く日がきても
清香ちゃん達をずっとおじいちゃんと一緒に
見守り続けることができますように。
神様はご褒美に叶えてくれるかしら。
いつまでもいつまでも笑顔のあなた達を見ていられます
ように。】
その当時書いたものなのか、最近思い付きで書いたのか、画像からは読み取れない。
ただ、私がずっと後悔していたあの日を、祖母は「ありがとう」と言ってくれていた。
もしかしたら、あの日私たちに付いて家に戻ったことを後悔していたかもしれないのに。わがままを言った私達を責めたかったかもしれないのに。
誰にも見られる予定の無かったであろうそこには「ありがとう」と...
ここに記されたもしもは、祖母のわがままなどではない。私達の願いだ。
もしも願いが叶うのであれば
ずっとずっと祖父母が一緒に
いつまでも笑顔の私達を
見守り続けてくれますように。
その為には、
祖父母に恥じない、悲しませない生き方を...
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