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Kiyoka's story

第4話 Kiyoka-4

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「そんなこと言わないで!」
母が険しい顔、今思えば悲しい顔をしてこちらを見た。

「私が一緒に帰るから大丈夫よ。」

優しい祖母の声がした。
清香達にとっては救いの言葉だ。

「お母さん、大丈夫よ。皆でここに泊まるつもりで、こっちに来たんだから。」

「そんな言わないで、あなたが泊まってくれるなら私は安心して戻れるわ。色々取りに行きたい荷物もあるし。」

病院に泊まらなくても良いことに安堵し、
その時の母、祖母、そして祖父の表情など何も気にしていなかった。




祖母と私たちは3人並んで祖父宅で寝ていた。
祖母は寝れていなかったのかもしれない。





早朝。
祖父は亡くなった。

連絡を受け、ギリギリ駆けつけた私たちの前で。
病院の先生が聴診器を当て、目を確認し...
医療ドラマなどでよく見る光景だ。

時計が示す時間を読み上げた。





色々な手続きをし、祖父は帰宅した。
大人は慌ただしく動く。
涙を流す間もないほど、次々とやるべきことが出てくるらしい。

いつ、どこで知った知らない葬儀屋がたくさんのカタログを開いている。

田舎だからだろうか、何も知らせていないのに近所の人が次々とやってくる。

1日がとても長く、でもあっという間に過ぎた。

夜、1つの部屋に清香たち姉弟は寝ていた。
正確には、清香は横になっていた。
もっと正確に言うと、寝たふりをしていた。

ふすま1つ挟んだ隣の部屋で、大人たちはアルバムを広げながら祖父の思出話をしていた。

「お父さん若いね。」
「俺も似てきたかな。」
駆けつけた叔父さんの声だ。

「頭そっくりね。」
「若いときはフサフサしてたんだけどね。あなた達が物心つく頃にはもう、寂しいことになってたからね。」

「こんな話してたらお父さんに怒られるね。」
「親父、恐かったからな。お袋も苦労したろ。」
「お父さんほとんど家にいなかったしね。」

悪口?と笑い声が聞こえる。

「でも、昨日の夜お父さんすごく急に元気に喋ってて。お母さんを呼んでこい!ってずっと言ってたんだよ。お前じゃない!っていうから、失礼な!って言い返したりしてたけど、母さんどこだ!ってずっと。あんなにつっけんどんな感じだったのに、やっぱりお母さんのこと大好きだったんだね。」

「いや、ただただ子どもに弱ってるとこ見られたくなかったのよ。」
話ながら、祖母がふすまを開けたのですぐに寝ているふりをした。
「孫達にもね。」

頭にあたたかい手の温もりを感じたと同時に、頬に冷たい水が1滴落ちてきた。

朝から涙1つ見せていなかった祖母が、初めて流した涙がその時であることは私しか知らない。

後悔した。

ただのワガママで病院から、祖父のもとから祖母を引き離してしまったことを。





「この間、お爺ちゃんに買ってもらったんだ!私のこと大好きすぎるからさ。」
嬉しそうに報告してきた友人の声でハッとする。

高校の制服とピッタリ!とは言いきれない高級ブランドの財布だった。確かにかわいい。
「ちゃんと早めにお爺ちゃん孝行しなよ~」
と冗談めいて返した。
「もし、私が将来すっごくお金持ちになったら家買ってあげるんだ。」
こんなやり取りをするのはもう何度目かだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大人に近づいていた高校時代は、特に何度も繰り返し思い返していた。そして今は、その高校時代後悔を繰り返していた自分を度々思い返す。


社会人になった今でもこの時の後悔は消えることはない。
これが、「また今度ね。」「次はちゃんとするよ。」で済ませることのできることだったら良かった。

違う世界に旅立ってしまった祖父の命は、この世界に戻ってきてはくれないのだ。

この後悔を口にしたことはないが、が叶ってくれるのならば、あの日のわがままを取り消したい。
そして、祖母にもう一度会って子どもの私ができなかった「ごめんなさい」を伝えたい。

が叶う世界なら。

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