もしもが叶う世界なら...

Koala(心愛良)

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Kiyoka's story

第1話 Kiyoka-1

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短大を卒業して、社会人5年目。
車が故障してしまい、久々にバスの揺れを体感する。
日差しが痛すぎる外に比べると、窓ガラスを突き抜ける日光の感触はあるが空気はキンキンに冷たい車内に感謝したい。
アパートから職場近くまで約1時間。自家用車のように音楽に合わせて声を出すこともできない。学生時代は毎日あったこの無言の時間を、懐かしく感じながら過ごしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「もし、だよ。私がスカウトされてモデルデビューとかしちゃったらどうする?」
「え、そしたら周りにめちゃめちゃ自慢する。」
「離れていっちゃったりしない?」
「しないよ。」
という、「ちゃ・ちゅ・ちょ」が多く、どーでもいい会話が後ろの席から聞こえてくる。
(ごめん。初対面というか対面もしてないけど素人目からしても無理だよあんた。)
乗車してきたときに見かけた姿を思い出しながら心の中で突っ込んだ。

夕方、終点近くのバスの中は制服を着た清香キヨカとその後ろに座る同じく制服を着たバカップル、そして前方に座るサラリーマン風の男性だけになっていた。清香はいつもこの路線バスで通学する。高校は駅の近くにあり、駅から終点まで乗っていれば家に着く。乗り継ぎがないので、通学は楽だ。

「じゃあ、もし、俺が浮気しちゃってて別れようって言ったらどうする?」
「えー。そんなの絶対許さない。めっちゃ泣く。でもそんなことするわけないじゃん!」
「しないよ。」
(こりゃ、浮気してんな。)
後ろのバカップルの終わりが近づいていることを何となく予知し、心の中で拝んだ。なんで拝んだかは分からんが。

終点1つ前のバス停が見えてきたが、待っている人はおらず誰も降車ボタンも押していなかったためそのまま通りすぎた。ということは、このバカップルラジオを終点まで聞き続けなくてはいけない。小銭ではなく、ICカードなので両替で席を移るタイミングも無い。

〔もしも、運転士さんがコミュニケーション高めな人なら「前が空いてるので前方に移動しませんか?」なんて声掛けをしてくれないだろうか...〕

なんてことを思いながら、終点までバスに揺られていた。
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