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第9章

大賢者ミナトと忘却の巫女ユナ

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 ソフィア、ユナも驚いた表情で黒髪の青年と、メーデイアに風属性禁呪魔法ゴッドブレスを放った赤髪の女性を見つめた。

「な、何者なの!? 風属性禁呪魔法ゴッドブレスをあの一瞬で……!?」
 ソフィアが赤髪の女性を見つめて話した。

 次の瞬間、ミナト達、全員に超上級治癒魔法エイルが発動し、瞬時に傷口が癒される。
「「!!!?」」
 ミナト達が驚いて周りを見ると背後からオレンジ髪の女性が両手を広げて超上級治癒魔法エイルを使用した事が分かった。

超上級治癒魔法エイルを詠唱破棄で使用!? しかも回復速度は私と同じくらい早いわ!!」
 ユナがオレンジ髪の女性を見つめて話した。


「なんとか間に合った感じか……?」
 黒髪の青年が赤髪の女性を見つめて尋ねる。

「ええ……! その子からクレアさんの魂の気配がするわ!! 間違いなくその子が初代、巫女の語り部みこのかたりべよ!!」
 赤髪の女性が微笑んで応えた。

「全員、傷口は癒したよ。
もうっ! 2人とも移動が早過ぎだよ!!」
 オレンジ髪の女性が顔を膨れさせて話した。

 突如、出現した3人を見つめてミナトが口を開いた。
「君達は一体何者なんだ……? 敵……ではないんだろう?」

「あ、すみません、ミナト様!
ミナト様のお考えの通り、私達は敵ではありません。
私がルナマリアで、黒髪の青年がユウキ、そして、オレンジ髪の女性がフィオナです!
私達は貴方達を助ける為にここに来た者です!!」
 赤髪のアンナがミナトに向かって応えた。

「私達を助ける為に……? どうやってここが分かった? 私達は君と同じ赤髪の女性、ソフィアの先読みの力さきよみのちから片翼の女神かたよくのめがみメーデイアの降臨場所を特定したが、君達はどうやって私達の居場所を特定したのだ?」
 ミナトが不思議そうに尋ねた。

 アンナは予想外の問いに一瞬、固まり考える。
 すぐにユウキが口を開いて応えた。
「ルナも先読みの力さきよみのちからが使えるんだよ! それでアンタ達の居場所を特定したんだ」

「それは嘘ね! 巫女の神技みこのしんぎはその世代に最大で3種類、別々の人間に宿る事は光の神レナによって決められている! 私が先読みの力さきよみのちからを使える以上、そのルナマリアって 先読みの力さきよみのちからを扱える訳がないわ!」
 ソフィアがユウキとアンナを睨むように話した。

「それは何年も前にレナが決めた事だろう? 今はアンタだけの専売特許じゃねーんだよ。それにその力なら俺でも使える!」
 ユウキがソフィアを見つめて応えると、ソフィアがユウキに近づいて話した。
「はっ! 貴方もですって? とんだ大ぼら吹きね!
貴方、格好も黒髪、黒眼でメーデイアと一緒! 怪しいわね」

「私達が助けてあげたのに、なんて態度なの!」
 フィオナが怒った表情でソフィアを睨む。

「ソフィア、言い過ぎだ! 謝るんだ」
 ミナトがソフィアに話しかけたが、ソフィアは顔を背ける。

「はは……、見た目も勝気な性格もお前そっくりだな」
 ユウキが顔を赤くしているアンナを見つめて話した。

「何を話している?」
 ソフィアがユウキを睨んで尋ねる。

「いいぜ! 疑うなら証拠を見せてやるよ」
 ユウキがニヤリと笑って話した。

「何を……!?」
 ソフィアが警戒して杖を構える。

 次の瞬間、ユウキが先読みの力さきよみのちからを発動させる。

 リィィィーーーーン!!

 ユウキとその場にいた巫女のアンナ、フィオナ、ソフィア、ユナに耳鳴りが聞こえる。
「「!!!?」」
 ソフィアとユナが驚いた表情でユウキを見つめた。

 間髪入れずにユウキがフィオナを見て叫ぶ。
「フィオナ! ユナさん! 20秒後にメーデイアが瓦礫の中から炎属性禁呪魔法スーパーノヴァで急襲してくる! 2人で火属性防御魔法ファイヤシールドを展開してくれ!」

「分かった!」
 フィオナが頷いて応える。

「あ、はい!」
 ユナが驚いて応える。

「ルナ! ソフィアさん! 2人で禁呪魔法を!!」
 ユウキが2人に命令する。

「何を……!」
 ソフィアが反論しようとすると、アンナがソフィアの両手を握って目を見つめて話した。
「信じて……! 未来で信じてくれたように」

 ソフィアはアンナが何を言っているか分からなかったが、アンナの瞳を見て不思議と信じてみたくなった。
 アンナとソフィアが禁呪魔法の詠唱を始める。

「ミナトさん! ルナとソフィアさんの攻撃でメーデイアは数秒動けなくなります! その隙に俺達の絶技でトドメを刺しましょう!! 俺達が力を合わせれば、今のメーデイアなら封印なんてせずに消滅させる事が出来る筈です!!」
 ユウキがミナトを見つめて話した。

「あ、ああ! 分かった!!」
 ミナトがユウキを見つめて頷いた後、息を吸い込んで口を開く。
「ソフィア・フォン・ヴィクトリア!!」
 ミナトがソフィアの巫女名みこなを叫ぶと、ミナトはえんじ色の光に包まれ、その光は柱となった。
 その後、その光の柱はミナトの体型に収束し、周りに留まった。

「フィオナ・ジェマ・クリスティーナ!!」
 ユウキがフィオナの巫女名みこなを叫ぶと、ユウキはオレンジ色の光に包まれ、その光は柱となった。
 その後、その光の柱はユウキの体型に収束し、周りに留まった。

「「!!!?」」
 ミナト、ソフィア、ユナが驚いてユウキを見つめた。

寵愛の加護ちょうあいのかごも使うのか!! ……それなら私も本気を見せよう!!」
 ミナトがユウキを見つめながら微笑んで話した。
「ユナ・ルーナレス・シンシア!!」
 ミナトが更にユナの巫女名みこなを叫ぶと、ミナトを包んでいた光は薄紅色に変わり、更に身体中から黄金色の粒子状の光が立ち昇るように煌めいている。

「「!!!?」」
 ユウキ、アンナ、フィオナがミナトを見て驚く。
「凄え!! 流石、伝説の大賢者! 人間で俺やアレンより強い奴がいたなんてな! 嬉しいような悔しいような……」
 ユウキが微笑みながら話した。

 すぐに瓦礫が吹き飛び、中からメーデイアが姿を現し、炎属性禁呪魔法スーパーノヴァをユウキ達に向けて放つ。
 しかし、フィオナとユナが完全詠唱の火属性防御魔法ファイヤシールドを展開し、ユウキ達全員を覆う。

「なっ!?」
 行動を完全に予測されたメーデイアは驚く。炎属性禁呪魔法スーパーノヴァはフィオナとユナが展開した火属性防御魔法ファイヤシールドによって完全に防がれる。
「おのれっ!」
 メーデイアが禁呪魔法を放とうとした瞬間、アンナとソフィアが完全詠唱の禁呪魔法をメーデイアに向けて放つ。
「「雷属性禁呪魔法キュクロープス・エンド!!」」

 2人分の神の雷がメーデイアに直撃する。
「馬鹿なっ!!?」
 何が起きているか理解出来ないメーデイアは、大ダメージを受けて膝をつく。

「「終わりだ!!」」
 ユウキとミナトの叫び声を聞いて顔を上げるメーデイアは、悔しそうな表情でユウキを見つめて叫んだ。
「お前らさえ……、お前らさえ、現れなければーーー!!」

 ユウキが先に絶技を発動させる。
刹光剣せっこうけん!!」
 ユウキが叫ぶと同時に光と風が爆発したようにユウキを中心に広がり、凄まじい速度でメーデイアの後方に移動した。
 すぐにメーデイアを中心に帯状の光が円形に広がり、メーデイアが声にもならない叫び声をあげる。

 間髪入れずにミナトがメーデイアの方を向いて、剣を地面に刺した後、刀身とつばが交差した十字部に手をかざした。

「ミナト、終わらせて!!」
 ユナが涙目で叫ぶ。

「貴方が……、世界の……、過去からの願いを叶えるの!!」
 ソフィアも涙を流して叫んだ。

 ミナトが瞑っていた瞳を開けて呟いた。
福音の起源ヴァンジェローム・アンファング!!」
 ミナトが高めていた加護の力の全てがミナトが地面に刺した剣からメーデイアに向けて光となって放たれる。
 
「まさか……!? 神である私が……!!?」
 ミナトが放った光がメーデイアを包み込むと、メーデイアの身体はボロボロと崩れ始めた。
 ユウキ、アンナ、フィオナは、崩れゆくメーデイアの身体から黒い影が逃げるように天に向かって移動したのを目にした。

 ミナトの一撃でメーデイアは完全に消滅し、暫しの静寂が訪れた後、すぐにユナがミナトに抱きついた。
「ミナトぉ!!」
 ユナが涙を零しながら嬉しそうに叫んだ。

 少し離れたところで、涙を浮かべながら嬉しそうにソフィアが口を開く。
「やったわね……。私達の……、いえ、世界の夢が叶った……。ミナト……、貴方のお陰よ」

 ミナトは微笑んで口を開く。
「私だけの成果じゃないさ……。君や、ユナがいてくれたお陰だ!」

 涙を拭いたユナが、顔を上げてミナトを見つめて口を開く。
「それに、過去に平和を願った人達のお陰でもあるのよね?」

「ああ、その通りだ!
そして……、私達の危機を救ってくれただけでなく、私達並みの戦力を持った彼らが手伝ってくれた事が大きかった!」
 ミナトが微笑んでユウキ達を見つめる。

 ソフィアは涙を拭いた後、ゆっくりユウキに近づいて頭を下げた。
「助けてくれたのに疑ったりして、すまなかった……。君の先読みの力さきよみのちからは本当だった……。
ミナトの言う通り、貴方達が来てくれなかったら、ミナトやエマちゃんを救えなかったし、メーデイアを倒せなかった。
本当に……、ありがとう!」

 それを見たユウキ、アンナ、フィオナは顔を見合わせた後、ユウキがソフィアを見つめて微笑んで口を開く。
「お礼を言いたいのは俺達の方さ。
貴方達は貴方達がまだ知らないところで俺達を何度も助けてくれた。
だから俺達はそれを返しただけなんだよ!
だから……、頭を下げる必要も、お礼を言う必要もない!
こちらこそ……、ありがとうだよ、ソフィアさん!!」

 ソフィアはまた涙を浮かべてながら顔を上げた後、ユウキの微笑んだ顔を見て口を開く。
「君は……、不思議な魅力を秘めた男だな。
君が話した内容の全てを理解は出来ないが、何故か不思議と納得してしまう。
君の話す事が何故か正しいと感じさせる雰囲気を持っている。……そういう所はミナトに少し似ているな。
……君も、君の2人の巫女を大切にするんだ」

 それを聞いたアンナとフィオナが顔を少し赤くする。

 ユウキがアンナの方を振り返って口を開く。
「エマちゃんは助けられた! これで本当の世界のクレアさんも助かるんだよな?
後はどうすれば元の世界に帰れるんだ?」

「えっ、えっと……、悪夢の原因を取り除いたから、後はクレアさんが目覚めるのを待つだけ。もうすぐ帰れる筈よ」
 アンナがユウキを見て応えた。

 2人のやり取りを見ていたミナトが微笑んで口を開く。
「そうか……。君達はこことは違う別の世界から来たんだな。
そして、ユウキ達はメーデイアの事を知っていて、ユウキは帰る場所をと言った」

「ミナト、どういう事……?」
 ソフィアがミナトに尋ねる。

「つまり、今、私達がいるここは偽物の世界……、ルナマリアさんの言葉で言うなら夢の世界って事さ。
恐らくユウキ達の目的はメーデイアからエマを守る事! その為に私達と協力してメーデイアを倒した。
そうだろ、ユウキ?」
 ミナトがユウキを見つめる。

「……ああ、やっぱりミナトさんは凄えな……。あれだけのやり取りで分かるのか」
 ユウキが驚いた表情で応えた。

「「!!!?」」
 ソフィアとユナが驚く。
「そ、それでは本当に私達が生きているこの世界が夢の世界だというの……!?」
 ソフィアが驚いて口を開いた。
にわかには信じられませんね……」
 ユナも驚いて口を開いた。

「隠すつもりは無かったんですけど、信じて貰えないと思って……。
私達の本当の目的は、この夢の世界のメーデイアの手からエマちゃんを守って、一緒に元の世界に帰る事なんです。
これは3代目となった巫女の語り部みこのかたりべが見ている悪夢なんです」
 アンナがミナトを見つめて話した。

「そうか! 巫女の語り部みこのかたりべの特殊スキルの影響で、メーデイアの恐怖を知ってしまった未来の巫女の語り部みこのかたりべが、悪夢にうなされているという事か!
……なんて事だ。私のせいだ」
 ミナトが落ち込んだように顔を伏せる。

「しかし、世界の為に必要な事です。実際、ミナト様が残した戦いの記録や、メーデイアに関する記述のお陰で私達は未来を切り開けそうなんですよ」
 フィオナが庇う様に話した。

「……世界の為に必要な事だったとしても、1人の少女を傷つけていい理由にはならない……。私はやり方を間違ってしまった……。最低の男だ……」
 ミナトが歯を噛み締めて話した時、エマがミナトに近寄って両手を握って口を開いた。
「悲しまないで、ミナト様……。
片翼の女神かたよくのめがみの事が凄く怖くて、少し辛い目に遭うと思うけど、ミナト様が私達を巫女の語り部みこのかたりべとして選んでくれた事……、凄く嬉しかったよ……。
私達は他の子と違って魔力がある分、身体が弱くて普通の子みたいに生きられない。誰かの為に生きる事も、自分の為に生きる事もままならない……。
存在理由が無かった私達に理由をくれたのはミナト様だった……。
1人辛くて泣きそうな時、ミナト様の記憶を思い出すだけで勇気が出たんだ……。
どんな時も優しく、強くて、勇敢で、みんなを笑顔にするミナト様が大好きだよ」

 ミナトを涙を零して呟いた。
「ごめんね……、
ううん……、ありがとう……」

 ゴゥン……!
 クレアの悪夢が完全に終わり、辺りの景色が歪み始める。

 ユウキ、アンナ、フィオナは元の世界に帰る前兆だと感じ、互いを見つめ合って頷く。
 それを見たソフィアがアンナを見て口を開く。
「……帰るのね?」

「……うん、短い間だったけど、会えて嬉しかった」
 アンナが涙を浮かべて話した。

「いつかまた、本当の世界で会える……?」
 ソフィアがアンナを見つめて尋ねる。

 アンナは涙を一粒零して応える。
「うん……、必ず!」

「ユウキ! 君達が未来から来て、その時代の巫女の語り部みこのかたりべが悪夢を見ているという事は、君達の世界ではメーデイアは生きているのだろう?
つまり、私達は本当は今日、この日、メーデイアを倒せなかった。そうだな?」
 ミナトが真剣な表情でユウキを見て話した。

「……ああ、そうだ」
 ユウキも真剣な表情で応えた。

「……短い間だったが、君がどういう男かある程度分かったつもりだ! だから、頼む! 私達に代わり、世界を平和に導いてくれ! 君なら……、必ずやり遂げられる筈だ!!」
 ミナトがユウキの瞳を見つめて話した。

 ユウキが微笑んで応える。
「ああ! 必ず!!」

 ユウキの台詞を聞いて、微笑んだミナトは静かに頷く。

 ユナがユウキ達に近づいて話しかける。
「いつでもいいから私達の村、神代かみしろの村に遊びに来てね!」

「「!!!?」」
 ユウキとアンナが驚く。
「ユナ様、今なんて……!?」
 アンナがユナを見つめて尋ねる。

「ああ、ごめんなさいね。
神代かみしろっていうのは、片翼の女神かたよくのめがみの代わりに世界を導く巫女達の事、つまり終焉の巫女しゅうえんのみこの事を言うのだけど、古い言葉だから貴方達の時代では村の名前が変わってるかもしれないわね……」
 ユナが困ったように笑って話した。
 ユウキ、アンナは、その表情によく似た笑顔を知っていた。
 
「「ま、まさか…………!?」」
 ユウキとアンナが同時に呟いて、ユナを見た後、ミナトの方を見つめる。

「そ、そういや何となく似てる……!」
 ユウキが驚きながら呟いた。

「それじゃあ、2人が……!?」
 アンナも何かに気づいて叫んだ瞬間、世界が暗転し、ユウキ達はそこで意識が途絶えた。


   ◇ ◇ ◇


 ユウキ、アンナ、フィオナは、マインドダイブが解け、元のクレアの部屋で目覚める。
 それに気づいたアベルがユウキ達に声をかける。
「皆様! お目覚めになられましたか!!
それで……、クレアは……?」

 アンナが微笑んで応える。
「クレアさんは無事です! クレアさんが目覚められなかった原因である悪夢の元凶を断ちました。直に目覚めるでしょう」

 アベルとエステファニアが胸を撫で下ろして微笑む。
 すぐにクレアが目を覚まし、天井を見つめて呟く。
「んっ……。……ここは…………?」

「「クレアっ!!」」
 アベルとエステファニアが涙を浮かべてベッドに歩み寄る。

「お父さんと……、お母さん……? どうしたの2人とも……」
 クレアは2人が泣いているのを見て、不思議そうに尋ねた。

「お前は、片翼の女神かたよくのめがみが1年前に世界に流した映像を見てから、目覚めなくなっていたんだ……。
それを、この巫女様達が治してくれたんだよ」
 アベルが涙を流して応えた。

 クレアはユウキ達を見つめてハッとして、呟く。
「夢の中でミナト様や私を助けてくれた人達……!!」

「もう大丈夫! 私達が夢の中のメーデイアは倒したから、怖くないでしょう?」
 フィオナが微笑んで話した。

「そうか……、あれは夢なんですよね……。
現実の世界にはまだ片翼の女神かたよくのめがみがいて、 約束の日やくそくのひが来れば、また地上に降り立って世界を滅ぼそうとするんですよね……」
 クレアが顔を伏せて不安そうに呟いた。

 それを見たアンナがすぐに口を開く。
「クレアちゃん、私達をよく見て! どこかで見た事ないかしら?」

 クレアは顔を上げて不思議そうにユウキ達を見つめる。
 クレアはすぐにハッとして口を開く。
「あっ! 1年前に片翼の女神かたよくのめがみと闘っていたお姉ちゃん達だ!!」

 アンナは微笑んで口を開く。
「思い出した? 私達は現実の世界でも片翼の女神かたよくのめがみと闘ってもう一歩のところまで追い詰めたのよ!
だから約束の日やくそくのひ片翼の女神かたよくのめがみが現れてもお姉ちゃん達がまたやっつけるから大丈夫!」

「ほ、本当!?」
 クレアが嬉しそうに尋ねた。

 ユウキが微笑んで応える。
「ああ、本当だ! 片翼の女神かたよくのめがみは俺達が必ずぶっ倒す! だから今日から安心していいんだ」

 ユウキとアンナに、ミナトとソフィアの影を見たクレアは、涙を浮かべた後、微笑んで静かに頷いた。
 アベルとエステファニアは、ホッとして泣き出したクレアを優しく抱きしめた。

 ユウキ、アンナ、フィオナは家族の時間を邪魔しないように静かに部屋を出る。


 暫くしてアンナがユウキを見つめて話しかける。
「ねぇ、ユウキ……。ミナト様とユナ様の事…………」

「ああ……、間違いない……。
ミナト様には手の甲に見覚えのある切り傷があったし、ユナ様にも口元にホクロがあった」

「えっ!? 2人ともなんの話……?」
 フィオナが不思議そうに尋ねた。

「ミナト様と、ユナ様はメーデイアとの戦いの後、次元の歪みに飲み込まれて元の世界セインツに飛ばされたのよ!
そしてミナト様とユナ様は、私のお母さんが異世界ルインに戻してくれる鍵を、自分達に送ってくれる事を元の世界セインツで何年も待っていた!」
 アンナがフィオナに応えた。

「赤毛で不思議な力を秘めた身寄りの無い少女が、自分達の目の前に現れればミナト様達ならすぐにそれが鍵だと気づく筈だ!」
 ユウキが考えるように話した。

「そしてミナト様達なら私だけじゃなく、ユウキの中に秘められた力の存在にも気づく筈!」
 アンナがユウキを見つめて話した。

「だからか……。
あんなに優しかったあの2人がアンナの虐めを静観していたのは、俺がアンナを助ける事で、2人の絆を強める為……」
 ユウキが顔を伏せて話した。

「私達が世界を平和に導く鍵になる事を、お母様だけじゃなく、ミナト様もユナ様も初めから分かっていたんだわ!」
 アンナも冷や汗を流して話した。

 フィオナは2人が何を話しているか理解出来ずに困惑した表情を浮かべて話した。
「ちょっと、ちょっと! 本当に訳わかんないよー! ミナト様とユナ様がなんだっていうのよ!」

 ユウキとアンナがフィオナの方を同時に振り返り、先にアンナが口を開く。
「前、私達が元の世界セインツで身寄りの無い時に育ててくれた人達の話をしたでしょう?」

「えっと……、神代かみしろのおじちゃんと、おばちゃんの事……?」
 フィオナが思い出しながら尋ねる。

 ユウキがフィオナに応える。
「ああ! その神代三翔かみしろみと神代優奈かみしろゆうなこそ、大賢者ミナトと忘却の巫女ぼうきゃくのみこユナ、その人なんだよ!」

 フィオナは驚きのあまり、言葉を失った。
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