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第7章
終わりの始まり
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「……さま、…………様! ルナ様!!」
「あぁああーーーーーー!!」
アンナは自身の肩を揺らして叫ぶディアナの声と、誰かの騒がしい泣き声で目を覚ました。
「……ディ……アナ? 私、どうしてこんなところに……」
暗い部屋の真ん中で床に寝転がっていた自分の状況を把握出来ずに戸惑うアンナ。
「ルナ様は片翼の女神達との戦いの後、ナスターシャが再び目覚めた時の事を考慮して、自身に封印魔法をかけたのです。それから約1ヶ月経っています」
ディアナが優しく現状を説明する。
「そうだ……! 私、自分に魔法をかけて……、でも、1ヶ月!? なんでそんなに早く封印が解けたの!? 1年以上は保つように魔法をかけた筈だったのに……!!? ……それに、私、まだ自分の人格のまま……!??」
アンナが困惑した表情に変わる。
ディアナがアンナの問いに応えようとした瞬間、先程から部屋中に響いていた泣き声が一層大きくなる。それは、ディアナの背後から響いているのが分かった。
「あぁああーーーーーー!!」
アンナにはその泣き声の主がすぐに分かった。そして、同時に最悪の胸騒ぎを覚え、恐る恐るディアナに呟く。
「……ディアナ……。そこを退いて……、後ろを見せて……」
ディアナはアンナのその台詞を聞くと、悲しい表情を浮かべた後、顔を伏せ、アンナの命令に逆らうように動かなかった。
それを見て、自身が想定した最悪の状況の可能性が高くなった事を感じたアンナはディアナに向かって叫んだ。
「そこを退いて、ディアナっ!!」
アンナの叫び声に身体をビクっとさせて、諦めたようにその場を退くディアナ。
ディアナの背後には、床に横になっている誰かに顔を埋める後ろ姿のフィオナが見えた。先程から泣き叫んでいるのはアンナの予想通りフィオナだった。
フィオナが顔を埋める相手のその顔は、アンナの位置から見る事が出来なかったが、アンナにはその相手の正体と現在の状態が分かってしまった。なぜならフィオナが世界中の全ての悲しみを孕んだように泣き叫んでいたからだ。フィオナがこの異常な泣き方をする相手はアンナが知る上ではたった1人しか思いつかなかった。
アンナは身体を震わせながら立ち上がり、ゆっくりフィオナに近づく。
フィオナは背後に誰かが近づいたのを感じ、伏せていた顔を上げ、泣いてぐちゃぐちゃになった顔でアンナを振り返った。
フィオナが顔を上げた事で床に横になっていた者の顔がアンナの視界に入る。
アンナは血の気が引いた状態となり、身体を更に震わせてフィオナに今、一番聞きたくない質問をした。
「フィ……オ……ナ……。ユウキ……どうしたの……? なんで泣いてるの…………?」
その質問にまた、我慢できなくなったフィオナはアンナに抱きついて泣き出した。
「あぁああーーーー!! ルナマリアぁ~! お兄ちゃんがぁ~! ユウキお兄ちゃんが~~!!」
そのどうしようもない状況を見て、フィオナから質問の答えを聞き出す事を諦めたアンナはディアナの方を振り返って叫んだ。
「ディアナ……!」
暫くディアナも黙っていたが、決心した表情に変わり、重い口を開いた。
「……ルナ様が自身を魔法で封印した後、ナスターシャの存在を恐れ世界中がルナ様の封印を解いて亡き者にしようと動き出したのです。
その代表として、アレン・アルバートが選ばれました。初めはアレンはこれを拒否していたのですが、姑息な上役達がアリシア様を人質にとり、強制的にアレンを従わせたのです。その流れで所在の分からなくなっているワクール以外の王の盾フレイヤとミアも仕方なく王の剣に従う形となりました。
王の剣、王の盾、そして世界中を敵に回してもルナ様を救い出すことを決心したユウキに賛同して、私とフィオナ様は、ユウキと共に王の盾と王の剣を撃破し、この場にたどり着いたのですが、ちょうどルナ様の封印が解け、ルナ様の身体を奪ったナスターシャが最後の障害となりました。
ユウキとフィオナ様はこれを想定して、ある特殊スキルを身につけていた為、ルナ様の心を取り戻す為にこれを使用しました。
……しかしこのスキルには命を落とす危険があったのです。ルナ様の心を取り戻し、フィオナ様はスキル使用後も無事だったのですが、ユウキは…………」
アンナは驚愕の事実を聞かされ、ゆっくりフィオナを引き剥がして、ユウキに近づいて膝をついた。
アンナは、目を瞑ったままのユウキの前髪を震えた手で撫で、信じられないという表情を浮かべる。
すぐにハッとした表情に変わり、フィオナに話しかける。
「そうだわ! フィオナの時守りの力で今をやり直せばいいじゃない! ユウキが死なないように……」
フィオナが下を向いたまま、大粒の涙を零してゆっくり応えた。
「……時守りの力が……、使えないの……。みんなの前で少しでも役に立ちたくて、修業の時に毎日使っていた反動で……、一番大事な人を助けたい時に……、使えなくなるなんて…………」
アンナは時間が止まったように動かなくなる。
それとほぼ同時に前の部屋の扉が勢いよく空いた。
バカンっ……!!
扉の前には傷ついたフレイヤとミアが立っていた。すぐにミアが話しかける。
「フィオナ様……! アレン様とアリシア様がどこにもいません!! どこに行かれたか知りませんか?」
ミアが心配そうに尋ねる。
少しして、フィオナが下を向いたまま口を開いた。
「……王の剣とアリシアも亡くなりました……」
「!!!!?」
アンナとフレイヤ、ミアは驚愕の表情に変わり、フレイヤが口を開いた。
「なんて事だ……! エリーナ、アリシア様、アレン様、そして……ユウキ。世界を救う事が出来る可能性を秘めた4人を失ってしまった……!
エリーナ様、アレン様、ユウキの圧倒的な戦闘能力。アリシア様の求心力と世界の民を動かす力。
この4人に変わり得る者など存在しない……。
…………はっきり言おう……、世界は終わりだ…………」
アンナは目の前に眠ったように横たわるユウキを見つめる。すでに身体は冷たくなっていた。
アンナは目の前の視界が歪む感覚を覚え、その場に倒れた。
◇ ◇ ◇
時は、片翼の女神達との死闘から2日後のルイン世紀1997年5月15日まで遡る。
「お兄ちゃん……? ユウキお兄ちゃん……?
………………良し! 起きてない……」
ユウキは誰かの小声で目を覚ます。
ユウキが目を開けて初めに視界に飛び込んできたのは、唇が触れるかというほどの距離まで顔を近づけているフィオナの顔だった。
「うわぁああ! フィオナ……! 顔が近いよ!」
ベッドで横になっていたユウキは、驚きながら上半身を起きしてフィオナを引き離す。
「……ちぇっ……、あとちょっとでキス出来ると思ったのに……」
フィオナは顔を少し赤くしながら少しふて腐れたような表情で呟いた。
「ここは……!?」
ユウキが周りを見渡して尋ねた。
「フィオナ城の特別客室みたいだね……。さっき、私も目覚めたんだけど、その事をメイドの娘が慌てて知らせに出て行ったわ」
「っていうか、なんでいきなりキスしようとすんだよ!?」
ユウキが顔を赤くして少し怒るように話した。
「だって、ユウキお兄ちゃんとルナマリアは私に見せつけるようにキスしたじゃない!!」
フィオナが更に頬っぺたを膨らませて話した。
それを聞いたユウキは頭を抱えるようにして話した。
「あれはルナじゃなくて、ナスターシャだろ? それに見せつけるようにしてないだろが!」
「見せつけるようにしてたもん!! 私にもしてくれなきゃ許さないから!」
フィオナが顔をずいっと近づけて怒ったように話した。そして、唇をキスをねだるように突き出した。
「……はぁ、わかった……。とりあえず頬っぺたにチューでいいか?」
ユウキは自身に顔を近づける美女にドキドキしながら尋ねた。
「唇じゃなきゃ、やだ!!」
ユウキの鼓膜が破れるかと思うほどの大きさでフィオナが叫ぶ。
ユウキは両耳を両手で押さえた後、そっとフィオナを見つめ返すと、フィオナが絶対に譲らないという表情で睨んだ。
ユウキは唾をゴクリと飲み込む。
「わっ……わかったよ……。一回だけだぞ……」
フィオナが耳まで真っ赤にしたままコクリと頷き、目を瞑った。
ユウキもドキドキしながろ顔を近づける。
2人の唇が触れようとした瞬間、部屋に何者かが入って来た。
バタン……!
「フィオナ様、目覚められたと使いの者から連絡が……!!?」
ディアナがキス寸前の2人を見つけ、その場で固まる。
「ユウキお兄ちゃんのエッチーーーー!!」
フィオナがユウキの頬を打って吹き飛ばした。
暫くして、部屋の中央のテーブルに気まずそうに座っていた3人だったが、ディアナが口を開いた。
「申し訳ありません……。タイミングが悪い時に部屋に入ってしまったようで……」
ユウキが打たれた頬をスリスリ手で押さえながら話した。
「お前、メイドの報告を受けてからすんなりこの部屋まで辿り着いたみたいだな? なんでいつもは道に迷うのに、こんな時だけすんなり部屋に辿り着くんだ?
あー、あれか? 普段はワザと可愛いこぶってるんだな? それで俺に胸揉まれたり、尻尾や尻にイタズラされたからそれを根に持って、ワザと邪魔したんだろ?」
椅子から立ち上がってディアナが叫ぶ。
「そんな訳あるか! 私だって空気ぐらい読めるわ!!」
「はっ! お前が空気を読んだところなんて一度も見たことねぇけどな!」
ユウキがフィオナからの被害の当て付けにディアナを弄る。
「もう許さん、貴様!」
ディアナが立ち上がって横に置いてあった槍を握った瞬間、フィオナがテーブルをバンっ! と叩く。
ディアナとユウキがビクっとなって固まってフィオナを見た。
「ユウキお兄ちゃん……。ディアナさんの胸やお尻にイタズラをしたって何……!?」
フィオナが怒りのこもった声で尋ねた。
「あっ! いや……、ほら、ふざけてちょっと触っただけだよ……。仲良い者同士の軽いスキンシップ的な……」
ユウキがしどろもどろになりながら応えた。
「ユウキお兄ちゃんの馬鹿ーーーー!!」
フィオナが下級炎属性魔法を放ってユウキを吹き飛ばした。黒焦げのユウキが倒れたまま呟いた。
「……なんで、あんな事言っちゃったかな、俺……」
少しして部屋の扉からもう1人女性が入ってきて話しかけた。
「……全く、貴方達はこの緊迫した状況でよくふざけてられますね……」
頭を抱えて部屋に入って来たのは、ユウキ達が戦った黒髪、黒い瞳の美女だった。
「!!!? メーデイア!!?」
ユウキが慌てたように近くにあった剣を取る。
それを見たディアナが慌てたようにユウキを止めるように叫んだ。
「待て、ユウキ! この方はアンジェラ様! 覚えているだろ? この方がメーデイアを自身の身体に封印しておられたお陰で世界は今もこうして存在しているのだ。私達が戦った姿はこの方のものだが、あの時、この方の身体を操っていたのがメーデイアで、メーデイアの姿はアンジェラ様のように内巻きの髪型ではなく、アンジェラ様の身体から出てきた外巻きの髪型をしたあの女の方だ!!」
ユウキとフィオナは忘れていた戦いの記憶を思い出し、構えを解いた。
ユウキが下を向いて話す。
「そうか……。……やっぱりエリーナが死んだのも……、アンナが1人あの場に残ったのも……全部夢じゃなかったんだな……」
顔を下に向けて悲しむユウキとフィオナを見て、ディアナが口を開いた。
「……ああ、エリーナ姉様が亡くなられたのは非常に残念だが、ユウキ、お前は分かる筈だ……。
今もエリーナ姉様は私達の中で支えてくれている。そして、エリーナ姉様がこの場にいたら必ずこう言った筈だ。
"顔を上げて前を向け!"と」
暫く黙っていたユウキとフィオナだったが、フィオナが顔を上げて応えた。
「……そうですね……。このまま落ち込んでいたらエリーナさんに怒られてしまいそうですね……。
今はこれからについて早急に話し合いましょう!」
しかし、ユウキはそれでも下を向いたままだった。
それを見たフィオナがユウキに声をかける。
「ユウキお兄ちゃん……。今は前を向こう……」
「……エリーナは俺を庇って死んでしまったんだ。少し割り切るのが難しい……」
ユウキが握り拳を作って顔を伏せたまま応えた。
ディアナがいつもの様にユウキの身体を槍の柄で軽く叩いて話した。
「ユウキ……! それはエリーナ姉様が、お前なら世界を救えると思ったからだ。
お前になら、私やルナ様、そして世界を託せると思ったからなんだぞ!」
「ディアナにはわかんねぇだろ! 俺の気持ちも……。エリーナの気持ちも……」
ユウキが叫んで顔を逸らした。
「わかるさ……! 最後のエリーナ姉様が放った光を浴びた際にエリーナ姉様の意思や記憶が頭の中に流れ込んできた。お前もその意思を受け取ったからわかる筈だ!
エリーナ姉様は私達に全てを託してくださったのだ! これからの世界を……! そして、お前にならルナ様を愛する者として任せる事が出来ると確信したから笑ってこの世を去った!!
……エリーナ姉様の……、その気持ちに応えたいと思わないのか、お前は?」
ディアナが少し涙を溜めて応えた。
ユウキがハッとした様に顔を上げてディアナを見つめて話した。
「……ディアナ……お前強くなったな」」
「……エリーナ姉様は私にも最後の意思を残してくれた……。"自分亡き後、自分の代わりにルナとユウキを頼む"と……。
エリーナ姉様の様に強くなる為にも、私まで落ち込んでいられない……」
ディアナもユウキ達が目覚めるまで沢山の涙を流したのだろう……。ディアナの目は薄らと腫れていた。
少ししてアンジェラが口を開く。
「みなさん、少しは落ち着きましたか?
それじゃあ、席について下さい……。現在の世界の情勢とこれからについて説明します」
皆が席に着き、ユウキがアンジェラを見つめて尋ねる。
「それより、まず、あんたは何者なんだ……? 味方……って事でいいんだよな?」
「……そうですね。まず、それから説明しましょうか。ディアナにはもう説明しましたが、2人にはまだでしたね。
自己紹介が送れました。私の名前はアンジェラ。極光の巫女です」
「!!!? きょっ……! 極光の巫女!!?」
フィオナが驚いたように叫んだ。
ユウキがフィオナの驚いた様子を見て尋ねた。
「極光の巫女ってなんだよ、フィオナ?」
「異世界には、異世界創世前の文献が数多く残ってるの。それはつまり、異世界創世前に別の世界がある事の証明。禁呪魔法なども異世界創世前の幻の魔法と呼ばれている。今、私達が使っている力より更に強力な力を使う神々の世界、名を神聖世界と呼ぶのだけど、極光の巫女はその世界の頂点に立つ最高神、光の神レナから特別に力を与えられた最古の巫女のこと……!」
「最古の巫女……! 一番最初の巫女って事か!」
「ええ、しかし極光の力はメーデイアの封印が解けた際に殆ど奪われてしまいました。今は普通の力が弱い女神と変わりません。
ほら、光輝いていた右翼が消えているでしょう? これが極光の力が失われた証拠です」
アンジェラが2人に分かるように応えた。
「……アンジェラ様、教えて下さい。メーデイアとは何者なのですか? アンジェラ様の身体から出てきた本物のメーデイアにも左側に翼がありました。メーデイアも極光の巫女なのでしょうか?」
フィオナが真剣な表情で尋ねる。
「……それを伝えるにはかなり昔の話をしなければなりません。……少し長くなりますが、この機会に話しておきましょう」
アンジェラはそう言うと目を瞑って遠い昔の記憶を思い出しながら、ユウキ達に話し始めた。
「話は神聖世界創世前まで遡ります。
無の世界から新しい世界を作り出す為、光の神レナと暗黒神エレイオスが長きに渡って激しい戦いを繰り広げました。なんとか暗黒神エレイオスを倒した光の神レナは、その後、自身の子供達の住う場所として、神聖世界を創造します。
先程、フィオナちゃんは神々の世界と言っていたけど、今の異世界の人々と比べて少し強力な力が使えたところ以外は殆ど普通の人間と変わらない民が暮らしていました。
光の神レナは自分の代弁者として、神聖世界の女性の中から特に不思議な力に優れ、心の清い者を選定し、極光の力を与え、極光の巫女として世界の統治を任せてきました。
それから数千年の間、神聖世界は平和な時代が続きましたが、私が極光の巫女を務める時代にある問題が起きたのです」
「ある問題……?」
フィオナがアンジェラに尋ねる。
「極光の巫女として力を受け取るに相応しい程の強大な力を秘めた巫女が2人同時に現れたのです」
「!!? メーデイア!!」
「ええ、メーデイアは私とほぼ同等の力を秘めていた巫女でした。なぜなら、メーデイアは私の双子の妹。同じ日に生まれた姉妹だからです」
「「!!!?」」
ユウキとフィオナが驚いた表情に変わり、ユウキが口を開いた。
「双子の姉妹!? だから2人は顔が殆ど同じなのか……」
アンジェラは少し考えたような素振りをした後、顔を上げて再び話し始めた。
「光の神レナは歴史上で初めて、極光の力を私とメーデイアの2人に二等分して与えたのです。それで、右翼の力は私が、左翼の力はメーデイアが管理する事となったのです。
私とメーデイアは仲の良い姉妹でした。それは互いが極光の巫女となってからも変わりませんでした。
最初は極光の力を二等分した事は、多くの者から反対されましたが、私とメーデイアは手を取り合い、歴代の極光の巫女の時代よりも更に神聖世界を発展させた事で、徐々に人々から認められるようになっていきました。
平和な時代は続き、私はその間に運命の人に巡り合い、10年近くが経った頃、2人の間には黒髪の男の子を儲ける事が出来ました。
……しかし、神聖歴5745年7月7日、暗黒神エレイオスに心を支配されたメーデイアは、神聖世界を滅ぼす為に、神聖世界の首都アークティカに部下を従えて攻め込んで来たのです。
光の神レナによって倒された暗黒神エレイオスはいつの間にか復活し、メーデイアに接触を図って闇の巫女へと堕としていたのです!
首都アークティカはメーデイアの襲撃で陥落寸前でした。私は息子を産んだばかりで極光の巫女としての力が弱まっている所を狙われました。
そして……、私と私の夫ヒューゴは最後の辛い決断をしました」
「辛い決断……?」
ユウキがアンジェラに尋ねる。
フィオナの方を向いていたアンジェラは少しの沈黙の後、ゆっくりユウキの方を向いて応えた。
「……息子だけでも生き延びて貰う為に、元の世界に異世界転送させる事を決断したのです。
私は産まれたばかりの息子が出来るだけ優しい心を持った方に拾われるように祈りを込めて異世界時空転送魔法を唱えました。
息子は七色の光の球体に包まれて天高く舞い上がった後、天井にぶつかる前に消失し、その後の事はわかりません」
「……なんて悲しい話なの……」
フィオナが胸を押さえるように呟いた。
ユウキは自分を見つめるアンジェラの瞳から目を逸らす事が出来なかった。
アンジェラは視線を戻し、話を再開する。
「息子を異世界時空転送魔法で元の世界に送った後、すぐにメーデイアが私とヒューゴが待ち構える玉座まで辿り着きました。
メーデイアとの死闘は長い間続き、戦いの中、私を庇ったヒューゴは還らぬ人となりました。私は世界の為に、妹メーデイアを自分の身体に封印する事にしたのです。
封印は……なんとか成功しましたが、その時の磁場の影響が世界中に広がり、神聖世界の人々のそれまでの記憶が全て消え去りました。私は人々を導く者として、片翼の女神を名乗り、世界の新しい始まりの日として、それからの世界を異世界と名付けたのです。
これが……、異世界創世の日となりました」
「それでは、今、この世界に住む人々は神聖世界に住んでいた人々の子孫にあたるということですか!?」
フィオナが驚いた表情で尋ねた。
「その通りです」
ユウキが少しして口を開いた。
「でもおかしいだろ? あんたが封印を成功させて、世界の人々に悪さをしないように統治していたのなら、なぜ世界はこんなにも争いの絶えない世界になっているんだ? それに、メーデイアはあんたの身体を操ってルーメリアを襲撃出来たんだよ?」
「メーデイアの封印には成功しましたが、メーデイアの中に潜んでいた暗黒神エレイオスまでは上手く封印出来なかったのです。
直接、光の神レナの子供達に手を下せない暗黒神エレイオスは不治の呪いや疫病、大旱魃等の世界に大きな影響を与える災厄をばら撒きました。
そうする事で異世界内で小競り合いが起き、やがてそれは大きな戦争まで発展していったのです」
「不治の呪い……! まさか…………!!」
フィオナが何かに気付いて叫んだ。
アンジェラが頷いて応える。
「そう……、ウェルシュの呪いも暗黒神エレイオスがばら撒いた災厄の1つです。暗黒神エレイオスは人の負の感情により力を高める事が出来る邪神。人々に災厄をばら撒く事で自身の力を長きに渡って少しずつ高めていたのです!
そして、ルイン世紀1000年、力をある程度高めた暗黒神エレイオスはまず、1つの大陸を3つに分けた。これは、思想や文化の違いによって大きく3つに分類し、それまで以上に人々を争わせる狙いがありました。更に、暗黒神エレイオスは、私のメーデイアの封印の一部を解き放ちました。短い時間ながらも100年に一度、私の人格とメーデイアの人格が入れ替わり、世界を更に混沌に陥れ始めました。
メーデイアは人格の入れ替わるその日を啓示の日と名付け、世界の情勢を各国の都合の悪いように伝え、より人々が争うように仕向けていたのです。
そのメーデイアと暗黒神エレイオスの狙いに気づいた私は、光の神レナに相談し、ある対策を立てました」
「終焉の巫女と、番いの命……!!」
フィオナが真剣な表情で呟く。
「ええ……! 終焉の巫女は、私が選んだ清い心の少女に極光の力を分け与えて生み出し、光の番いの命は、光の神レナが創造されました。……しかし、私と光の神レナの対策に誤算が生まれました。私が3つの国の争いを治めさせようとして終焉の巫女を生み出す際に、暗黒神エレイオスは呪いをかけていたのです」
アンジェラが下を向いて話した。
「それが、30年の寿命か……!」
ユウキが呟くと、アンジェラは静かに頷いた。
「そうです……。私は終焉の巫女が世界の民の先頭に立ち、それを番いの命が影でサポートする事で世界を平和に導こうと考えていましたが、暗黒神エレイオスの呪いのせいで、終焉の巫女を巡った新たな争いの火種が出来てしまったのです……。
そして、ルイン世紀1500年、メーデイアの人格に入れ替わる時間が伸びている事に気付いた私は、暗黒神エレイオスの力が最大まで高まりつつある事と、メーデイアの封印が解けかかっている事を確信します。そして、先読みの力を使い、世界の終わりの日を確認し、それを世界の人々に伝えた」
アンジェラが顔を上げて話した。
「それが……、約束の日……!!」
フィオナが冷や汗を流しながら話した。
アンジェラは続ける。
「暗黒神エレイオスとメーデイアの狙いは、世界に災厄をばら撒き、世界を混沌に陥れ、負の感情が最大まで高まった時に世界の人々を消すこと。なぜなら、死に対する恐怖の感情こそ、最大の負の感情だからです。
そして、エレイオスは新たな争いの絶えない世界を生み出し、それを繰り返す。もし、約束の日にメーデイアを倒せなければ、世界の破滅という最大の負の感情を取り込んだ暗黒神エレイオスが誕生し、もう光の神レナですら止める事が出来ない……!
世界の人々は暗黒神エレイオスとメーデイアから家畜のように飼われ続け、消耗されるだけの未来が待っているのです!!
だから、皆様、お願いです! どうか、愚かな我が妹を倒し、暗黒神エレイオスと共に神器に封印して下さい!! それしか世界を救う手段はありません!!」
アンジェラが悲痛な表情で頭を下げた。
ユウキがすぐに口を開いて応えた。
「アンジェラさん、顔を上げて下さい……!
俺たちは元々そのつもりです。それに貴方は世界の為に出来るだけの事をしてくれた。今、異世界が存在しているのは貴方のお陰です。ルナやフィオナに逢えたのも、他の仲間に逢えたのも貴方のお陰なんです。
だから……そんなに辛そうな顔で下を向かないで下さい……」
長年、苦しんできたアンジェラは顔を上げて一筋の涙を零して応えた。
「ありがとう……、成瀬ユウキ」
「あぁああーーーーーー!!」
アンナは自身の肩を揺らして叫ぶディアナの声と、誰かの騒がしい泣き声で目を覚ました。
「……ディ……アナ? 私、どうしてこんなところに……」
暗い部屋の真ん中で床に寝転がっていた自分の状況を把握出来ずに戸惑うアンナ。
「ルナ様は片翼の女神達との戦いの後、ナスターシャが再び目覚めた時の事を考慮して、自身に封印魔法をかけたのです。それから約1ヶ月経っています」
ディアナが優しく現状を説明する。
「そうだ……! 私、自分に魔法をかけて……、でも、1ヶ月!? なんでそんなに早く封印が解けたの!? 1年以上は保つように魔法をかけた筈だったのに……!!? ……それに、私、まだ自分の人格のまま……!??」
アンナが困惑した表情に変わる。
ディアナがアンナの問いに応えようとした瞬間、先程から部屋中に響いていた泣き声が一層大きくなる。それは、ディアナの背後から響いているのが分かった。
「あぁああーーーーーー!!」
アンナにはその泣き声の主がすぐに分かった。そして、同時に最悪の胸騒ぎを覚え、恐る恐るディアナに呟く。
「……ディアナ……。そこを退いて……、後ろを見せて……」
ディアナはアンナのその台詞を聞くと、悲しい表情を浮かべた後、顔を伏せ、アンナの命令に逆らうように動かなかった。
それを見て、自身が想定した最悪の状況の可能性が高くなった事を感じたアンナはディアナに向かって叫んだ。
「そこを退いて、ディアナっ!!」
アンナの叫び声に身体をビクっとさせて、諦めたようにその場を退くディアナ。
ディアナの背後には、床に横になっている誰かに顔を埋める後ろ姿のフィオナが見えた。先程から泣き叫んでいるのはアンナの予想通りフィオナだった。
フィオナが顔を埋める相手のその顔は、アンナの位置から見る事が出来なかったが、アンナにはその相手の正体と現在の状態が分かってしまった。なぜならフィオナが世界中の全ての悲しみを孕んだように泣き叫んでいたからだ。フィオナがこの異常な泣き方をする相手はアンナが知る上ではたった1人しか思いつかなかった。
アンナは身体を震わせながら立ち上がり、ゆっくりフィオナに近づく。
フィオナは背後に誰かが近づいたのを感じ、伏せていた顔を上げ、泣いてぐちゃぐちゃになった顔でアンナを振り返った。
フィオナが顔を上げた事で床に横になっていた者の顔がアンナの視界に入る。
アンナは血の気が引いた状態となり、身体を更に震わせてフィオナに今、一番聞きたくない質問をした。
「フィ……オ……ナ……。ユウキ……どうしたの……? なんで泣いてるの…………?」
その質問にまた、我慢できなくなったフィオナはアンナに抱きついて泣き出した。
「あぁああーーーー!! ルナマリアぁ~! お兄ちゃんがぁ~! ユウキお兄ちゃんが~~!!」
そのどうしようもない状況を見て、フィオナから質問の答えを聞き出す事を諦めたアンナはディアナの方を振り返って叫んだ。
「ディアナ……!」
暫くディアナも黙っていたが、決心した表情に変わり、重い口を開いた。
「……ルナ様が自身を魔法で封印した後、ナスターシャの存在を恐れ世界中がルナ様の封印を解いて亡き者にしようと動き出したのです。
その代表として、アレン・アルバートが選ばれました。初めはアレンはこれを拒否していたのですが、姑息な上役達がアリシア様を人質にとり、強制的にアレンを従わせたのです。その流れで所在の分からなくなっているワクール以外の王の盾フレイヤとミアも仕方なく王の剣に従う形となりました。
王の剣、王の盾、そして世界中を敵に回してもルナ様を救い出すことを決心したユウキに賛同して、私とフィオナ様は、ユウキと共に王の盾と王の剣を撃破し、この場にたどり着いたのですが、ちょうどルナ様の封印が解け、ルナ様の身体を奪ったナスターシャが最後の障害となりました。
ユウキとフィオナ様はこれを想定して、ある特殊スキルを身につけていた為、ルナ様の心を取り戻す為にこれを使用しました。
……しかしこのスキルには命を落とす危険があったのです。ルナ様の心を取り戻し、フィオナ様はスキル使用後も無事だったのですが、ユウキは…………」
アンナは驚愕の事実を聞かされ、ゆっくりフィオナを引き剥がして、ユウキに近づいて膝をついた。
アンナは、目を瞑ったままのユウキの前髪を震えた手で撫で、信じられないという表情を浮かべる。
すぐにハッとした表情に変わり、フィオナに話しかける。
「そうだわ! フィオナの時守りの力で今をやり直せばいいじゃない! ユウキが死なないように……」
フィオナが下を向いたまま、大粒の涙を零してゆっくり応えた。
「……時守りの力が……、使えないの……。みんなの前で少しでも役に立ちたくて、修業の時に毎日使っていた反動で……、一番大事な人を助けたい時に……、使えなくなるなんて…………」
アンナは時間が止まったように動かなくなる。
それとほぼ同時に前の部屋の扉が勢いよく空いた。
バカンっ……!!
扉の前には傷ついたフレイヤとミアが立っていた。すぐにミアが話しかける。
「フィオナ様……! アレン様とアリシア様がどこにもいません!! どこに行かれたか知りませんか?」
ミアが心配そうに尋ねる。
少しして、フィオナが下を向いたまま口を開いた。
「……王の剣とアリシアも亡くなりました……」
「!!!!?」
アンナとフレイヤ、ミアは驚愕の表情に変わり、フレイヤが口を開いた。
「なんて事だ……! エリーナ、アリシア様、アレン様、そして……ユウキ。世界を救う事が出来る可能性を秘めた4人を失ってしまった……!
エリーナ様、アレン様、ユウキの圧倒的な戦闘能力。アリシア様の求心力と世界の民を動かす力。
この4人に変わり得る者など存在しない……。
…………はっきり言おう……、世界は終わりだ…………」
アンナは目の前に眠ったように横たわるユウキを見つめる。すでに身体は冷たくなっていた。
アンナは目の前の視界が歪む感覚を覚え、その場に倒れた。
◇ ◇ ◇
時は、片翼の女神達との死闘から2日後のルイン世紀1997年5月15日まで遡る。
「お兄ちゃん……? ユウキお兄ちゃん……?
………………良し! 起きてない……」
ユウキは誰かの小声で目を覚ます。
ユウキが目を開けて初めに視界に飛び込んできたのは、唇が触れるかというほどの距離まで顔を近づけているフィオナの顔だった。
「うわぁああ! フィオナ……! 顔が近いよ!」
ベッドで横になっていたユウキは、驚きながら上半身を起きしてフィオナを引き離す。
「……ちぇっ……、あとちょっとでキス出来ると思ったのに……」
フィオナは顔を少し赤くしながら少しふて腐れたような表情で呟いた。
「ここは……!?」
ユウキが周りを見渡して尋ねた。
「フィオナ城の特別客室みたいだね……。さっき、私も目覚めたんだけど、その事をメイドの娘が慌てて知らせに出て行ったわ」
「っていうか、なんでいきなりキスしようとすんだよ!?」
ユウキが顔を赤くして少し怒るように話した。
「だって、ユウキお兄ちゃんとルナマリアは私に見せつけるようにキスしたじゃない!!」
フィオナが更に頬っぺたを膨らませて話した。
それを聞いたユウキは頭を抱えるようにして話した。
「あれはルナじゃなくて、ナスターシャだろ? それに見せつけるようにしてないだろが!」
「見せつけるようにしてたもん!! 私にもしてくれなきゃ許さないから!」
フィオナが顔をずいっと近づけて怒ったように話した。そして、唇をキスをねだるように突き出した。
「……はぁ、わかった……。とりあえず頬っぺたにチューでいいか?」
ユウキは自身に顔を近づける美女にドキドキしながら尋ねた。
「唇じゃなきゃ、やだ!!」
ユウキの鼓膜が破れるかと思うほどの大きさでフィオナが叫ぶ。
ユウキは両耳を両手で押さえた後、そっとフィオナを見つめ返すと、フィオナが絶対に譲らないという表情で睨んだ。
ユウキは唾をゴクリと飲み込む。
「わっ……わかったよ……。一回だけだぞ……」
フィオナが耳まで真っ赤にしたままコクリと頷き、目を瞑った。
ユウキもドキドキしながろ顔を近づける。
2人の唇が触れようとした瞬間、部屋に何者かが入って来た。
バタン……!
「フィオナ様、目覚められたと使いの者から連絡が……!!?」
ディアナがキス寸前の2人を見つけ、その場で固まる。
「ユウキお兄ちゃんのエッチーーーー!!」
フィオナがユウキの頬を打って吹き飛ばした。
暫くして、部屋の中央のテーブルに気まずそうに座っていた3人だったが、ディアナが口を開いた。
「申し訳ありません……。タイミングが悪い時に部屋に入ってしまったようで……」
ユウキが打たれた頬をスリスリ手で押さえながら話した。
「お前、メイドの報告を受けてからすんなりこの部屋まで辿り着いたみたいだな? なんでいつもは道に迷うのに、こんな時だけすんなり部屋に辿り着くんだ?
あー、あれか? 普段はワザと可愛いこぶってるんだな? それで俺に胸揉まれたり、尻尾や尻にイタズラされたからそれを根に持って、ワザと邪魔したんだろ?」
椅子から立ち上がってディアナが叫ぶ。
「そんな訳あるか! 私だって空気ぐらい読めるわ!!」
「はっ! お前が空気を読んだところなんて一度も見たことねぇけどな!」
ユウキがフィオナからの被害の当て付けにディアナを弄る。
「もう許さん、貴様!」
ディアナが立ち上がって横に置いてあった槍を握った瞬間、フィオナがテーブルをバンっ! と叩く。
ディアナとユウキがビクっとなって固まってフィオナを見た。
「ユウキお兄ちゃん……。ディアナさんの胸やお尻にイタズラをしたって何……!?」
フィオナが怒りのこもった声で尋ねた。
「あっ! いや……、ほら、ふざけてちょっと触っただけだよ……。仲良い者同士の軽いスキンシップ的な……」
ユウキがしどろもどろになりながら応えた。
「ユウキお兄ちゃんの馬鹿ーーーー!!」
フィオナが下級炎属性魔法を放ってユウキを吹き飛ばした。黒焦げのユウキが倒れたまま呟いた。
「……なんで、あんな事言っちゃったかな、俺……」
少しして部屋の扉からもう1人女性が入ってきて話しかけた。
「……全く、貴方達はこの緊迫した状況でよくふざけてられますね……」
頭を抱えて部屋に入って来たのは、ユウキ達が戦った黒髪、黒い瞳の美女だった。
「!!!? メーデイア!!?」
ユウキが慌てたように近くにあった剣を取る。
それを見たディアナが慌てたようにユウキを止めるように叫んだ。
「待て、ユウキ! この方はアンジェラ様! 覚えているだろ? この方がメーデイアを自身の身体に封印しておられたお陰で世界は今もこうして存在しているのだ。私達が戦った姿はこの方のものだが、あの時、この方の身体を操っていたのがメーデイアで、メーデイアの姿はアンジェラ様のように内巻きの髪型ではなく、アンジェラ様の身体から出てきた外巻きの髪型をしたあの女の方だ!!」
ユウキとフィオナは忘れていた戦いの記憶を思い出し、構えを解いた。
ユウキが下を向いて話す。
「そうか……。……やっぱりエリーナが死んだのも……、アンナが1人あの場に残ったのも……全部夢じゃなかったんだな……」
顔を下に向けて悲しむユウキとフィオナを見て、ディアナが口を開いた。
「……ああ、エリーナ姉様が亡くなられたのは非常に残念だが、ユウキ、お前は分かる筈だ……。
今もエリーナ姉様は私達の中で支えてくれている。そして、エリーナ姉様がこの場にいたら必ずこう言った筈だ。
"顔を上げて前を向け!"と」
暫く黙っていたユウキとフィオナだったが、フィオナが顔を上げて応えた。
「……そうですね……。このまま落ち込んでいたらエリーナさんに怒られてしまいそうですね……。
今はこれからについて早急に話し合いましょう!」
しかし、ユウキはそれでも下を向いたままだった。
それを見たフィオナがユウキに声をかける。
「ユウキお兄ちゃん……。今は前を向こう……」
「……エリーナは俺を庇って死んでしまったんだ。少し割り切るのが難しい……」
ユウキが握り拳を作って顔を伏せたまま応えた。
ディアナがいつもの様にユウキの身体を槍の柄で軽く叩いて話した。
「ユウキ……! それはエリーナ姉様が、お前なら世界を救えると思ったからだ。
お前になら、私やルナ様、そして世界を託せると思ったからなんだぞ!」
「ディアナにはわかんねぇだろ! 俺の気持ちも……。エリーナの気持ちも……」
ユウキが叫んで顔を逸らした。
「わかるさ……! 最後のエリーナ姉様が放った光を浴びた際にエリーナ姉様の意思や記憶が頭の中に流れ込んできた。お前もその意思を受け取ったからわかる筈だ!
エリーナ姉様は私達に全てを託してくださったのだ! これからの世界を……! そして、お前にならルナ様を愛する者として任せる事が出来ると確信したから笑ってこの世を去った!!
……エリーナ姉様の……、その気持ちに応えたいと思わないのか、お前は?」
ディアナが少し涙を溜めて応えた。
ユウキがハッとした様に顔を上げてディアナを見つめて話した。
「……ディアナ……お前強くなったな」」
「……エリーナ姉様は私にも最後の意思を残してくれた……。"自分亡き後、自分の代わりにルナとユウキを頼む"と……。
エリーナ姉様の様に強くなる為にも、私まで落ち込んでいられない……」
ディアナもユウキ達が目覚めるまで沢山の涙を流したのだろう……。ディアナの目は薄らと腫れていた。
少ししてアンジェラが口を開く。
「みなさん、少しは落ち着きましたか?
それじゃあ、席について下さい……。現在の世界の情勢とこれからについて説明します」
皆が席に着き、ユウキがアンジェラを見つめて尋ねる。
「それより、まず、あんたは何者なんだ……? 味方……って事でいいんだよな?」
「……そうですね。まず、それから説明しましょうか。ディアナにはもう説明しましたが、2人にはまだでしたね。
自己紹介が送れました。私の名前はアンジェラ。極光の巫女です」
「!!!? きょっ……! 極光の巫女!!?」
フィオナが驚いたように叫んだ。
ユウキがフィオナの驚いた様子を見て尋ねた。
「極光の巫女ってなんだよ、フィオナ?」
「異世界には、異世界創世前の文献が数多く残ってるの。それはつまり、異世界創世前に別の世界がある事の証明。禁呪魔法なども異世界創世前の幻の魔法と呼ばれている。今、私達が使っている力より更に強力な力を使う神々の世界、名を神聖世界と呼ぶのだけど、極光の巫女はその世界の頂点に立つ最高神、光の神レナから特別に力を与えられた最古の巫女のこと……!」
「最古の巫女……! 一番最初の巫女って事か!」
「ええ、しかし極光の力はメーデイアの封印が解けた際に殆ど奪われてしまいました。今は普通の力が弱い女神と変わりません。
ほら、光輝いていた右翼が消えているでしょう? これが極光の力が失われた証拠です」
アンジェラが2人に分かるように応えた。
「……アンジェラ様、教えて下さい。メーデイアとは何者なのですか? アンジェラ様の身体から出てきた本物のメーデイアにも左側に翼がありました。メーデイアも極光の巫女なのでしょうか?」
フィオナが真剣な表情で尋ねる。
「……それを伝えるにはかなり昔の話をしなければなりません。……少し長くなりますが、この機会に話しておきましょう」
アンジェラはそう言うと目を瞑って遠い昔の記憶を思い出しながら、ユウキ達に話し始めた。
「話は神聖世界創世前まで遡ります。
無の世界から新しい世界を作り出す為、光の神レナと暗黒神エレイオスが長きに渡って激しい戦いを繰り広げました。なんとか暗黒神エレイオスを倒した光の神レナは、その後、自身の子供達の住う場所として、神聖世界を創造します。
先程、フィオナちゃんは神々の世界と言っていたけど、今の異世界の人々と比べて少し強力な力が使えたところ以外は殆ど普通の人間と変わらない民が暮らしていました。
光の神レナは自分の代弁者として、神聖世界の女性の中から特に不思議な力に優れ、心の清い者を選定し、極光の力を与え、極光の巫女として世界の統治を任せてきました。
それから数千年の間、神聖世界は平和な時代が続きましたが、私が極光の巫女を務める時代にある問題が起きたのです」
「ある問題……?」
フィオナがアンジェラに尋ねる。
「極光の巫女として力を受け取るに相応しい程の強大な力を秘めた巫女が2人同時に現れたのです」
「!!? メーデイア!!」
「ええ、メーデイアは私とほぼ同等の力を秘めていた巫女でした。なぜなら、メーデイアは私の双子の妹。同じ日に生まれた姉妹だからです」
「「!!!?」」
ユウキとフィオナが驚いた表情に変わり、ユウキが口を開いた。
「双子の姉妹!? だから2人は顔が殆ど同じなのか……」
アンジェラは少し考えたような素振りをした後、顔を上げて再び話し始めた。
「光の神レナは歴史上で初めて、極光の力を私とメーデイアの2人に二等分して与えたのです。それで、右翼の力は私が、左翼の力はメーデイアが管理する事となったのです。
私とメーデイアは仲の良い姉妹でした。それは互いが極光の巫女となってからも変わりませんでした。
最初は極光の力を二等分した事は、多くの者から反対されましたが、私とメーデイアは手を取り合い、歴代の極光の巫女の時代よりも更に神聖世界を発展させた事で、徐々に人々から認められるようになっていきました。
平和な時代は続き、私はその間に運命の人に巡り合い、10年近くが経った頃、2人の間には黒髪の男の子を儲ける事が出来ました。
……しかし、神聖歴5745年7月7日、暗黒神エレイオスに心を支配されたメーデイアは、神聖世界を滅ぼす為に、神聖世界の首都アークティカに部下を従えて攻め込んで来たのです。
光の神レナによって倒された暗黒神エレイオスはいつの間にか復活し、メーデイアに接触を図って闇の巫女へと堕としていたのです!
首都アークティカはメーデイアの襲撃で陥落寸前でした。私は息子を産んだばかりで極光の巫女としての力が弱まっている所を狙われました。
そして……、私と私の夫ヒューゴは最後の辛い決断をしました」
「辛い決断……?」
ユウキがアンジェラに尋ねる。
フィオナの方を向いていたアンジェラは少しの沈黙の後、ゆっくりユウキの方を向いて応えた。
「……息子だけでも生き延びて貰う為に、元の世界に異世界転送させる事を決断したのです。
私は産まれたばかりの息子が出来るだけ優しい心を持った方に拾われるように祈りを込めて異世界時空転送魔法を唱えました。
息子は七色の光の球体に包まれて天高く舞い上がった後、天井にぶつかる前に消失し、その後の事はわかりません」
「……なんて悲しい話なの……」
フィオナが胸を押さえるように呟いた。
ユウキは自分を見つめるアンジェラの瞳から目を逸らす事が出来なかった。
アンジェラは視線を戻し、話を再開する。
「息子を異世界時空転送魔法で元の世界に送った後、すぐにメーデイアが私とヒューゴが待ち構える玉座まで辿り着きました。
メーデイアとの死闘は長い間続き、戦いの中、私を庇ったヒューゴは還らぬ人となりました。私は世界の為に、妹メーデイアを自分の身体に封印する事にしたのです。
封印は……なんとか成功しましたが、その時の磁場の影響が世界中に広がり、神聖世界の人々のそれまでの記憶が全て消え去りました。私は人々を導く者として、片翼の女神を名乗り、世界の新しい始まりの日として、それからの世界を異世界と名付けたのです。
これが……、異世界創世の日となりました」
「それでは、今、この世界に住む人々は神聖世界に住んでいた人々の子孫にあたるということですか!?」
フィオナが驚いた表情で尋ねた。
「その通りです」
ユウキが少しして口を開いた。
「でもおかしいだろ? あんたが封印を成功させて、世界の人々に悪さをしないように統治していたのなら、なぜ世界はこんなにも争いの絶えない世界になっているんだ? それに、メーデイアはあんたの身体を操ってルーメリアを襲撃出来たんだよ?」
「メーデイアの封印には成功しましたが、メーデイアの中に潜んでいた暗黒神エレイオスまでは上手く封印出来なかったのです。
直接、光の神レナの子供達に手を下せない暗黒神エレイオスは不治の呪いや疫病、大旱魃等の世界に大きな影響を与える災厄をばら撒きました。
そうする事で異世界内で小競り合いが起き、やがてそれは大きな戦争まで発展していったのです」
「不治の呪い……! まさか…………!!」
フィオナが何かに気付いて叫んだ。
アンジェラが頷いて応える。
「そう……、ウェルシュの呪いも暗黒神エレイオスがばら撒いた災厄の1つです。暗黒神エレイオスは人の負の感情により力を高める事が出来る邪神。人々に災厄をばら撒く事で自身の力を長きに渡って少しずつ高めていたのです!
そして、ルイン世紀1000年、力をある程度高めた暗黒神エレイオスはまず、1つの大陸を3つに分けた。これは、思想や文化の違いによって大きく3つに分類し、それまで以上に人々を争わせる狙いがありました。更に、暗黒神エレイオスは、私のメーデイアの封印の一部を解き放ちました。短い時間ながらも100年に一度、私の人格とメーデイアの人格が入れ替わり、世界を更に混沌に陥れ始めました。
メーデイアは人格の入れ替わるその日を啓示の日と名付け、世界の情勢を各国の都合の悪いように伝え、より人々が争うように仕向けていたのです。
そのメーデイアと暗黒神エレイオスの狙いに気づいた私は、光の神レナに相談し、ある対策を立てました」
「終焉の巫女と、番いの命……!!」
フィオナが真剣な表情で呟く。
「ええ……! 終焉の巫女は、私が選んだ清い心の少女に極光の力を分け与えて生み出し、光の番いの命は、光の神レナが創造されました。……しかし、私と光の神レナの対策に誤算が生まれました。私が3つの国の争いを治めさせようとして終焉の巫女を生み出す際に、暗黒神エレイオスは呪いをかけていたのです」
アンジェラが下を向いて話した。
「それが、30年の寿命か……!」
ユウキが呟くと、アンジェラは静かに頷いた。
「そうです……。私は終焉の巫女が世界の民の先頭に立ち、それを番いの命が影でサポートする事で世界を平和に導こうと考えていましたが、暗黒神エレイオスの呪いのせいで、終焉の巫女を巡った新たな争いの火種が出来てしまったのです……。
そして、ルイン世紀1500年、メーデイアの人格に入れ替わる時間が伸びている事に気付いた私は、暗黒神エレイオスの力が最大まで高まりつつある事と、メーデイアの封印が解けかかっている事を確信します。そして、先読みの力を使い、世界の終わりの日を確認し、それを世界の人々に伝えた」
アンジェラが顔を上げて話した。
「それが……、約束の日……!!」
フィオナが冷や汗を流しながら話した。
アンジェラは続ける。
「暗黒神エレイオスとメーデイアの狙いは、世界に災厄をばら撒き、世界を混沌に陥れ、負の感情が最大まで高まった時に世界の人々を消すこと。なぜなら、死に対する恐怖の感情こそ、最大の負の感情だからです。
そして、エレイオスは新たな争いの絶えない世界を生み出し、それを繰り返す。もし、約束の日にメーデイアを倒せなければ、世界の破滅という最大の負の感情を取り込んだ暗黒神エレイオスが誕生し、もう光の神レナですら止める事が出来ない……!
世界の人々は暗黒神エレイオスとメーデイアから家畜のように飼われ続け、消耗されるだけの未来が待っているのです!!
だから、皆様、お願いです! どうか、愚かな我が妹を倒し、暗黒神エレイオスと共に神器に封印して下さい!! それしか世界を救う手段はありません!!」
アンジェラが悲痛な表情で頭を下げた。
ユウキがすぐに口を開いて応えた。
「アンジェラさん、顔を上げて下さい……!
俺たちは元々そのつもりです。それに貴方は世界の為に出来るだけの事をしてくれた。今、異世界が存在しているのは貴方のお陰です。ルナやフィオナに逢えたのも、他の仲間に逢えたのも貴方のお陰なんです。
だから……そんなに辛そうな顔で下を向かないで下さい……」
長年、苦しんできたアンジェラは顔を上げて一筋の涙を零して応えた。
「ありがとう……、成瀬ユウキ」
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