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第6章

絶技〜ぜつぎ〜

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 時はルイン世紀1997年2月15日、アナスタス領土の首都ルーメリアとルナマリア城が火の海に包まれる約3ヶ月前。カレント領土の王都サンペクルトで黒髪を腰近くまで伸ばした男が修行に励んでいた。
 黒髪の男に数え切れない程の水色の小さな球体が飛び回るように襲いかかる。
「凄い! ユウキ!! 1000にも及ぶ私の弾丸をよく、ここまで躱したね!! でもクリアタイム2時間まで、残り3分間! この3分間はもう、私も容赦はしない! 本気で行くよ!!」
 身体の殆どを弾丸に変え、弾丸と殆ど同じ大きさまで小さくなり、宙を浮きながらミアが黒髪の男、ユウキに話しかけた。
 ミアは宙に浮いたまま、両の手を広げて、全ての弾丸の速度を今まで以上にあげ、本気でユウキを襲った。
 ユウキも真剣な表情に変わり、恐るべき反応速度で全てを躱していく。1分、2分経ってもユウキは躱し続ける。時には木剣で弾丸を弾き、時には身を捻って躱していく。残り10秒になった時、ミアは弾丸をユウキを覆うように操り襲った。ユウキが全てを躱しきろうとした瞬間、更にミアは地表に潜ませていた数発の弾丸を放ち、決着をつけようとした。しかし、ユウキは全ての弾丸を叩き落として見事に2時間の間、ミアの猛攻を全て躱し切ったのである。

 弾丸を全て自身に戻して驚くように見つめるミアに向かってユウキが話した。
「どう、ミア? 少しはアレンに近づけたかな?」

 その立ち姿が一瞬アレンにダブって見えて目を見開いたミアは更にユウキの状態を見て驚いた。
(汗を流さないどころか、こ……呼吸を殆ど乱していない。それに、最後の地表に潜ませていた仕掛けはアレン様でも初見は躱せなかったのに……!! ユウキ、本当に凄くなった!!)
「驚いたよ……! 合格だユウキ!! もう私が教える事はないよ」

 それを聞いて木剣を掲げて飛び跳ねるようにユウキは喜んだ。
「よっしゃぁ!!」



 夕食を終え、アレンと共に加護のコントロールの修行を行うユウキは、遂に、友愛の加護ゆうあいのかごの力の先にある寵愛の加護ちょうあいのかごの力をも、自分のものにしようとしていた。
 暗闇のイメージの中、直径30cm程度の光の玉があり、それに触れると、無数の光の粒に砕け、ユウキの周りをぐるぐる周り、友愛の加護ゆうあいのかごの力が漲る事を感じる。
 暗闇の中のイメージのユウキは、さらに奥に進む。
 しばらく歩くと直径が自身の背丈と変わらない程のオレンジ色の光の玉が目の前に現れ、それに触れると光の玉がユウキを飲み込み、ユウキの周りは光で溢れた。
 ユウキはその光の想いを全て受け止め、自身の体型に沿うように光を収束させた。
 ユウキはオレンジ色の光の玉の先にほぼ同じ大きさの赤い光の玉を見つける事が出来た。
 ユウキはそれに触れようとするも赤い光の玉はそこに実態がないかのように透けて触れることが出来ない。
 ユウキはこの赤い光に触れる条件を満たしていない事を悟り、現実世界に自ら引き返した。

 精神世界から現実世界に戻ったユウキが口を開く。
「フィオナの寵愛の加護ちょうあいのかごは、もう多分完全に扱える! ……あとは、ルナの言っていた、俺とルナに関わる過去を思い出すだけだ」

 それを見守っていたアレンが話した。
「よく、彼女達の想いに気づけた! そして、自身の気持ちをコントロールしたな。
あとは今、ユウキが言ったように最後の鍵を開けるだけだ。
リグルさんとの最後の修行を終えた後なら、間違いなく君はルナマリア様とフィオナ様の加護の力を使う資格がある。誇るといいよ、ユウキ!」

 それを聞いてユウキは更にルナとフィオナを想った。
(以前より光の玉が大きくなっていた……。
2人は離れていても常に俺を想ってくれていたんだ! 2人に再開して、ゆっくり話しが出来る時に必ず答えを返したい!!)

 ユウキ、アンナ、フィオナはそれぞれの国で、それぞれを同じタイミングで想い合うように窓に映る月を眺めた。



 次の日、ユウキは早朝から剣術の型の練習を終えた後、木剣を使った試合をアレンと行っていた。
 互いに数撃、打ち込んだ後、距離を取り、先にユウキが上からの振り下ろしでアレンを襲う。
 アレンは軽く横に躱しながら、回転切りでユウキ襲う。
 ユウキはそれを屈んで躱し、今度は木剣を振り上げた。
 アレンは後方にバク宙で躱し、着地と同時にユウキに突きを繰り出す。
 ユウキは、その突きに合わせるように前方に移動しながら、アレンの突きを木剣の腹で滑らせるように攻撃のポイントをズラして、そのままカウンターの振り下ろしを行おうとした。
 予想以上の対応に目を見開いたアレンは瞬時に腰に差していた2本目の木剣を抜いてユウキのカウンターを寸前で止めた。

 ガンっ!!

 互いに木剣を押し合った後、後方に距離を置いた。
 少ししてアレンが口を開いた。
「驚いたな……! まさか攻撃を躱した後の私の瞬時の突きに対して、更に前方に出てカウンターを合わせるなんて。……しかも剣の腹を利用して攻撃のポイントを少しだけズラしながら攻撃する事で、躱す際に発生する動作を完全にキャンセルするなんてね……」

 それを聞いて少し悔しそうな顔をしてユウキが応えた。
「ちぇっ! 初めてお前に対して攻撃を当てられたと思ったのにな……。まあ、初めて2本目の木剣を抜かせただけでも良しとするか……」

「私でなければ間違いなくヒットしていた。あの技はかなり前から練習してたのか?」
 アレンが木剣を下ろして尋ねた。

 それを見たユウキも木剣を下ろして応えた。
「まあね。基本的にお前の動きで凄いと思うのは攻防の動作がほぼ一体な事だ。お前から剣術を習って気づいたよ。攻撃の型も、防御の型もそれぞれ意味があり、繋がりがある……。
お前は相手から攻撃を受けた時、その時の状況に応じた最も適切な防御の型から、その防御の型に合った攻撃の型へ流れるように移行している。それも……、一瞬のうちに考える事なく身体が自然に動いている感じだ。
俺はそれに気づいて今は考えながら攻防の型を繋げてる感じだけど、やっぱり自然体のお前みたいにはまだまだ出来ない。だから、お前の得意な突きの攻撃に対してだけは防御の型から攻撃の型に瞬間的に移れるようにミアと特訓してたってわけさ。勿論、お前が国政の事で忙しくて訓練所に来れない日は、訓練所の見習生達相手に試してたしな」

「なるほど……」
 アレンはユウキの台詞を聞いて驚いていた。
(私との修行を始めて2年近く……。この短期間で攻防一体の極意が近接戦闘における最大の奥義である事に自然と気づき、その7割近くを習得しつつある。
リグルさんを生身で倒すというのは少々意地悪な目標を我ながら設定したと思っていたが、もしかしたら本当に達成してしまうかもしれない。
それに、攻防一体の極意の重要性に気づけたとしても、それを実戦の中で真似したり試す事が出来るなんて、世界でも本当に一握りの才能しか無理な話だ。その中でもさっきの一撃は攻防一体の極意の中でも最も難しい部類に入る。
躱すのではなく、剣でいなしながら、そのいなす動作をカウンター攻撃の延長として利用する! 私でも狙って10回に1回成功すれば良い程の超高等テクニック!!
…………全く、この男には度々驚かされるな)
「……本当は1998年1月1日の三ヶ国会議の後からゆっくりユウキには教えるつもりだったが……、どうやらユウキはどんどん無理な難題を押し付けた方が成長が早そうだ」
 アレンがユウキを見つめて呟いた。

「難題……!? な、なんだよ、怖いな」
「必殺技の事さ」
「必殺技!? 凄い技を伝授してくれるのか!?」
「伝授というより、人にはそれぞれ元々眠ってある固有のスキルが備わっている。私はそのユウキの中に眠る固有スキルの扱い方を教えるだけだ。
その才能に応じて固有スキルの数と質が変わってくるのだが……、そうだな、一般的には固有スキル数が3つあれば才能がある方だな」
「ちなみに……アレンはいくつ持ってんだよ?」
「私? 私は21だな」
「………………お前、自慢してる?」
「はは……、とんでもない。固有スキルに関しては上には上がいるよ」
「だ、誰だよ……」
「まず、三大魔王のアリシア、ルナマリア様、フィオナ様に関しては25~30の固有スキルを保有しておられる。
私達に与えてくださっている加護の力もその力の中の一つだ。加護の力はリミットオーバースキルと言って、固有スキルの中でも最上位の力なのだぞ。だから日頃から感謝しないとな」
「わかってるよ」
「本当にわかっているか? ユウキは加護の力が一時的に戦闘力を大幅に上げるだけの力と勘違いしてないかい?」
「ほ、他に効力があるのか?」
「ほらね……。全く、ルナマリア様とフィオナ様が可哀想だな。
加護の力は戦闘力向上のみだけでなく、その力を使用していない時もオートで働く効力が存在する……。それは戦闘や知識に関する経験値が加護の力を受けてないものに比べて大幅にアップする事だよ」
「!!? じゃあ、友愛の加護ゆうあいのかごを持つものは、加護の力を持たないものに比べてどのくらい差があるんだよ?」
「ん~、大体3倍くらいかな」
「なに!!? さ、3倍!!!!」
「凄いだろ? 感謝の必要性がわかった筈だ」
「……ああ、本当に助けられてばかりだ」
「ちなみに、ユウキと私が持つ寵愛の加護ちょうあいのかごならば、5倍だ」
「5倍!!? それじゃあ、友愛の加護ゆうあいのかごの効力も合わせれば8倍の差が生まれるのか?」
「違う、違う! 寵愛の加護ちょうあいのかごが巫女最大の加護だと言われる理由を知らないのか? 寵愛の加護ちょうあいのかごなんだよ。
つまり身体能力も、知識レベルも、固有スキルでさえ5倍だ」
「つ、つまり…………」
 ユウキがゴクリと唾を飲む。

「ああ、つまりリミットオーバースキルである友愛の加護ゆうあいのかごの効力、能力3倍アップにすら、寵愛の加護ちょうあいのかごの力がそのまま付与される」
「嘘だろ……!?」
「理解出来ないかい? 簡単な話だ。
3×5=15!! それが友愛の加護ゆうあいのかご寵愛の加護ちょうあいのかごを持つ者が手にする効力の答えだ」
「全ての能力と経験値を15倍アップさせる力……!!? ……ははは、固有スキルの質といい、数といい、どれだけ凄いんだよ巫女様の力は」
「それが片翼の女神かたよくのめがみから選ばれた者の力さ」
「つまり……、片翼の女神かたよくのめがみはもっとやべぇって事だろ?」
「ああ、まず間違いなくね」
「てか、やっぱり片翼の女神かたよくのめがみ以外なら巫女の3人が世界で一番、凄いんだな……。固有スキル25~30って反則だろ!」
「確か……、アリシアが27で、
ルナマリア様が25、
フィオナ様が30だったな……」
「フィオナ凄いじゃん!!」
「その代わり、魔力と知力はアリシアが、
身体能力と適応能力はルナマリア様が圧倒的に上だな。全体的な戦闘能力ではアリシアとルナマリア様がフィオナ様より現時点で上だよ。
その代わり、固有スキル数の多いフィオナ様が上手くスキルを扱えるようになれば、あの2人を追い抜く可能性は十分にある」
「とりあえず、現時点で世界で一番固有スキル数が多いのはフィオナなんだろ?」
「いやいや、その上にあと一人いるだろ?」
「は? だ、誰だよ」
「ユウキは私達、アリシア勢力がルーク様の死後、ルナマリア勢力をすぐに攻めなかった事を不思議に思わなかったのかい?」
「エリーナとディアナを中心に軍事力をお前達の国に負けないように保ってきたからだろ?」
「少し違うな。この国で王国騎士団で現在、研鑽しているユウキならわかるだろうけど、兵の数も質もアリシア勢力の方が上なんだよ。それなのに私達はアナスタス領土に攻め入る事が出来なかった」
「な、なんでだよ……?」
「エリーナ様がいたからだ」
「エリーナ!? あいつそんなに凄いのか? でもやり直した世界では寵愛の加護ちょうあいのかごを発動させたお前に負けたんだぞ」
「それは、エリーナ様が愛していたルーク様の仇を私と勘違いしていて、逆上していたからだろう?
恐らく、力押しの戦いをして、固有スキルは殆ど使われていない筈だ。
冷静に固有スキルを駆使して全力で戦ったエリーナ様は全盛期のルーク様と大差ないはず。
だから、私が全力を出しても勝てるかどうかわからない程の強さなんだ」
「あ、あいつどんだけ固有スキル持ってんだよ?」
70だよ」
「なっ!!!!? ななじゅうーーー!!!!
なんだそのふざけた数字は!!」
「信じられないだろう? エリーナ様が他国の牽制の為に公表した力の一部だけど、私も半信半疑だったんだ。でも三ヶ国会談の際に調べた際に事実だと分かり、驚愕したものさ」
「……何気に個人の能力でなら、ルナの勢力って結構凄くないか?」
「今頃気づいたのかい? 私は君達に出逢った日から君達の事を高く評価していたよ。勿論、ユウキも含めてね」
「……お前が言うと嫌味に聞こえるけどな」
「ははは、そんなつもりは少しもないんだけどな……。
まあ、とりあえず話を本題に戻すと、先程、説明した固有スキルの中でも、必ず個人が保有している必殺技が存在するんだけど、それを上手く発現させれるように、これからユウキに教えようってわけさ」
「なんだ、必殺技って?」
「人が必ず内部に保有している力、魔力か[闘気]を利用して発動させる技……名をという」
「絶技………!!」
「固有スキルは大まかに分けて力の大きな順に、

・リミットオーバースキル
・絶技
・奥義
・術技

このようになる。

術技はそれぞれが生まれ持った属性や才能に応じて、低級の近接技や、遠距離からの魔法が該当する。
術は魔力を、技は闘気を消費する。
術技の強さは魔力や闘気の使用量で火力が変わるから魔力や闘気の絶対量が多い者ほど優位に立てるという訳だ。

奥義は術技を極める事でその上位クラスのスキルを発動出来るようになる。
単純に極めた術技の進化版である場合もあるし、2つ以上の術技を組み合わせたスキルへと昇華するとこを指すんだ。
勿論、魔力や闘気の使用量は格段に上がる。連発は控えるべきだね。

リミットオーバースキルはさっきの説明の通り、寵愛の加護ちょうあいのかごや、友愛の加護ゆうあいのかご、ビーストモードが該当する。
リミットオーバースキルは特別でビーストモードなんかは自身の生命力を削って自身の戦闘力を大幅にあげるスキルだ。修行によってその負荷を減らす事も出来るらしいが、発動させるだけでもかなりの才能と修行が必要みたいだよ。
加護の力は本当に特別で身体への負荷やリスクがゼロだ。その代わり、巫女との信頼関係が低かったり、扱う者が未熟な場合、秘められた力の殆どを使用出来ない可能性もある。だから、加護の力の意味を知る事は本当に大切なんだ。

そして……絶技。これは奥義を更に極めた者だけが発動させられる奥義を遥かに超えた個人特有のスキルを発動する事を指す。
絶技以外の固有スキルは他の人も持っているスキルも多くあるが、絶技に関しては完全に個人特有のスキルとなるんだ。
絶技もその人に応じて魔法系か、技系へと別れる。奥義との違いは身体への負担が大きいのと、大きな制限がある事だな」
「大きな制限?」
「半日に一回しか使えないと言う制限さ」
「一回以上使うとどうなるんだ?」
「上手く発動しないか、最悪、身体への負担が多過ぎて死に至る」
「……そんなにヤバい技なのか」
「ああ。自身の身体に影響を及ぼす程の強大な火力を一回だけだが出せる技、それが絶技だ」
「……ちょっと待て! でも今のお前の説明だと絶技習得には術技を極めて、奥義も極めないと駄目なんだろ? 俺は身体能力向上の為の修行と剣術の型しか習ってないぞ。絶技なんて大それたもの、短期間で習得出来るのか?」
「普通の人間ならまず無理だ。だがユウキ、君にはもう一つ修行をさせてきただろ?」
「もう一つの修行?」
「加護の力をコントロールする修行さ」
「えっ!? あれと絶技の修行と何が関係あるんだ?」
「実は加護の力のコントロールと魔力や闘気のコントロールは殆ど同じなんだよ。だから今のユウキなら魔力や闘気のコントロールはそう難しくない筈だ。それに加えて私が君に教えていた剣術の型は私が戦闘において特に使えると感じた技の型の練習にもなっている。だから私がこれから見せる闘気を操る技なら、何度か見ただけで習得可能な筈だ! なんせ君には友愛の加護ゆうあいのかご寵愛の加護ちょうあいのかごの力が付与されているんだからね」
「本当かよ……? 全く自信ないわ」
「まあ、説明するよりも実際に見せた方が早いだろう。今から一番簡単な技をあそこの木に向かって放つから見ててくれ」
 アレンがそう言うとユウキは頷いて応えた。

 アレンが木剣を構え、木剣に闘気をこめる。そして木剣を20m程度離れた木に向かって振り下ろした。
 すると、木剣から白い闘気の塊が飛ばされ、木の幹に当たると同時にバシッ! という衝撃音が発生し、斜めに切り込みが入った。
「おおー!! 本当に技っぽいな!」
「どうだい? 今のが闘気を飛ばす技、[闘飛剣とうひけん]だよ」
「カッコいいな!! 早くやってみたいぜ。どうやるんだ?」
「まず、上段で構え、加護の力をコントロールする時みたいに自身の全身の闘気を木剣に集めるんだ。自分が限界だと思うところまで溜めたら、振り下ろしと同時に闘気コントロールを瞬時にやめる感じだよ。そうすると、闘気は勝手に自身の身体から切り離されて振り下ろした方向に飛んでいく。難しいのは、闘気を的に当てる事だが、それは繰り返し練習する事ですぐに慣れる筈だ。
今のユウキなら、加護の力と闘気の違いを間違えずに認識出来る筈だ」
「わかった。やってみる!」
 そう応えたユウキは上段の構えをとり、内部闘気を探った。
「これか!」
 そう叫ぶと感じ取った内部闘気を木剣に集めた。それと同時に違和感に気づく。
「あれ? なんかアレンの周りにも闘気が見えるぞ」
「それは、そうさ。人間は誰しも内部闘気を秘めている。ユウキは今、初めて闘気を探って認識した。そうする事で他人の闘気も見えるようになっただけだ。この内部闘気を探る力が向上すれば、他人の瞬間的な闘気量だけでなく、内部に秘められた闘気総量、スキル数、あと秘められた力なんかも見れるようになるよ」
「あー、それで、エリーナとかのスキル数や、俺の加護の力も見抜いた訳か!」
「ああ、流石にスキル効果や、総合戦闘力数まではわからないけどね。そこまで、見えれば戦闘においてかなり優位に立てるんだが、そこまでは無理だ」
「なるほど、闘気についても奥が深そうだな」
「その闘気に関しては、ユウキ本来の力な訳だから、加護の力と違ってルナマリア様やフィオナ様の力を使った事にならない。だから、安心してリグルさんとの試合で使えるという訳だ。
さあ、闘飛剣とうひけんを試してみるんだ」
「ああ、わかった」
 ユウキはそう応えると、木剣に闘気を溜めた状態で木剣を振り下ろし、同時に闘気コントロールを瞬時にやめて、闘気の塊を前方の木に向かって飛ばした。
 しかし、闘気は木の幹の2m程、右横に外れてしまった。
「あっ! くそ、当てるの確かに難しいな」
「いや、高さは合っていた。初めてにしては上手い方だよ。本来なら初めての場合、闘気を溜める事も、飛ばす事も難しい事なんだけど、ユウキは見込み通り、もう闘気コントロールはある程度上手くなってるね。これなら私の計算通り、奥義の習得もそう長くかからない筈だ。
更にその先、絶技の習得はかなり難しい。常人なら何十年も修行して習得出来るかどうかの超高難易度の習得スキルだけど、ユウキには次の三ヶ国会議、つまり1998年1月1日までに習得してもらう」
「リグルさんとの1回目の試合が約3ヶ月後、それまでには間に合わないか……」
「それは、流石にユウキでも無理だろうね。
私やユウキ程の才能、そして加護の力があっても最速でも1年近くかけて習得しないと出来ないと思うよ」
「早く、最上位スキルを習得したいぜ」

 その時、アレンの家の方からアリスの声が響いてきた。
「お兄ちゃ~ん、ユウキさ~ん、朝ごはん出来たよー!!」

 それを聞いて目を輝かせるユウキ。
「おお! 今日の朝ごはん担当はアリスちゃんか! 一番、料理が上手いから楽しみだ!!」
「はは、約2年前は私の考案した修行のキツさにご飯が喉を通らなかったのが懐かしいな」
 アレンが意地悪な顔をして話した。
 それを見たユウキは頭をポリポリかいて少し恥ずかしそうに応えた。
「それは、もういいだろう? やめてくれ。
それより、早く飯に行こうぜ」
 そう言って、走り出したユウキをアレンが止める。
「そうだ、ユウキ。さっき君は早く最上位スキルを習得したいと言っていたけど、君はそれをも凌ぐ力を既に身につけているんだよ」

 足を止め、振り返ってユウキが尋ねる。
「……どういう事だ?」

「リミットオーバースキルや絶技を超える、人知を超えたスキル。
人はそれをと呼ぶんだ」
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