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第2章

シュタット領土

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 ユウキ達はアナスタス領土から出て、4日目にシュタット領土に到着し、そこから3日かけてシュタット領土の中央部に移動した。
 そこには魔王フィオナが治める城がある首都ダンダレイトがあり、ユウキ達はそこで一泊して長旅の疲れを癒した。書簡の通りシュタット領土に入ってからはフィオナ側の兵300も加わり、首都までの護衛を務めてくれたのである。
 首都ダンダレイトはアナスタス領土の首都ルーメリアの約2倍もの広さがあり、[世界で一番栄えている街]の名に恥じない凄みを帯びていて、ユウキは首都ダンダレイトがユウキが元の世界セインツで知っている全ての首都の文明を超えていると感じた。
 宙を浮く車のような乗り物。
 テレポート用と思われる複数の移動場所が表示されているスポット。
 家の作り等は中世ヨーロッパに似た作りだが1つ1つが他国の侵略により耐えれるように魔法障壁により、堅固な作りとなっていた。
 とにかく機械仕掛けの建物が多くユウキは城までの道中、常に驚きを隠せなかった。

 フィオナの城ではユウキ達は丁重に扱われ、すぐに各々が大きく立派な客室に通された。そしてついに、先読みの力さきよみのちからを啓示する日の前日の夜となっていた。

 コンコン!

 ユウキの部屋のドアがノックされ、外から声が聞こえた。
「ユウキ、入っても大丈夫か?」

「ああ」

 返事のあと、ディアナが部屋に入ってきた。
「どうだ? やっぱり、ダメか?」

「こんな時間に、お忍びで俺の部屋に来るなんて、ディアナは俺とそういうことしたいの?」
 ユウキがニヤニヤしながら話す。

 顔をか~~と赤くしながら大声で叫びそうになったが、外のフィオナの兵の気配に気づき話を聞かれることを恐れたディアナは小声で怒りながら呟いた。
「おっ、お前が先読みの力さきよみのちからを未だに制御出来ていないから心配になって見に来たのだろうが!!
これがフィオナ側に知られたら大変なことになるのがわかっているのか!!」
「わかってるさ……、だからここにくる道中も今もこうして力の制御のコツを試してたんだ」
「力の制御のコツ?」
「ああ、ルナから教えてもらったんだ」
 ユウキはそう言うと、目を閉じて腕を下げたまま、手のひらだけ前方に見せるような構えをとった。
「このままゆっくり呼吸をして鼓動を早くし、胸の中心部分に力を溜めるようなイメージを行う……」
 少ししてユウキは時間が圧縮するような感覚を感じた。しかし感覚はそこですぐに終わり、失敗に終わった。
「あ~、くそ! 今のはいい感じだったけど、また失敗だ。あの後、耳鳴りさえなれば成功なのに……」

「もう一歩のところまではきているのだな?」
 ディアナが尋ねる。

「ああ、溜めた力を爆発させる時が一番難しくてそこだけが上手くいかない……。でも、本番までには成功させてみせる」
 ユウキはディアナを見つめ返して応えた。

「いざという時は私が囮になって……」
 ディアナが言いかけた台詞をユウキが手を伸ばして遮った。

「いや、港を出る時、警戒網を張っていた。それに城内の警備の数が多すぎるから、いくら俺とディアナが上手くやっても突破は無理だろう……。
もう覚悟を決めるしかない。
巻き込んでしまって申し訳ないが……」
 少し落ち込むようにユウキが話した。

 それを聞いたディアナは少し笑った。
「……ルナ様が言っていた通りだな。
ユウキは、基本的に困ってる人がいたら後先考えずに突っ走って、責任を自分一人で背負おうとする……」

「あいつにだけは言われたくないな。あいつも似たようなもんだ」
 ユウキが少し照れたように話す。

「ルナ様も言っていただろう。
少し前まで我が勢力は打開策を見出せないままだった。そこにお前の友愛の加護ゆうあいのかごの力の覚醒と、先読みの力さきよみのちからの発現で希望が見えたのだ。
確かにお前の意思で先読みの力さきよみのちからを使えなかったのは少々誤算だったが、ルナ様もエリーナ様も最終的にはユウキに頼ることを決めていたのだ。
あの2人に頼られることは滅多にないのだぞ! そこは誇っていい筈だ。
だから……、お前は明日、周りのことは気にせずに自分の出来る精一杯のことをすればいい」

 ディアナの台詞を聞いてユウキは小さく拳を握りしめた。
「……ありがとう、ディアナ。
必ず……、必ず同盟を成功させるよ」

「ああ、お前ならできる筈だ」
 ディアナが笑顔で応えた。





    次の日、フィオナ城内で大事件が起きる事となる。
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