5 / 116
第1章
片翼の女神〜かたよくのめがみ〜
しおりを挟む
周りの騒音で成瀬ユウキは目覚めた。
「なぜ牢屋に入れた!? 丁重に扱えと伝えただろ!!」
「すみません! 他の者から魔王様が血相を変えて連れてくるように言っていたと聞いていたので、とんでもない大悪党だと思い牢屋に入れておきました……」
「この馬鹿者!! 傷一つ負わすなとのご命令だ!! 命に逆らえば死罪だと申したのだぞ!」
「エリーナ様、すみません!
本当にすみません、どうか魔王様には報告しないでください……」
「この場で貴様を切り刻んでも良いのだぞ!!」
「ヒィィィ!! どうかご勘弁を!!」
「その辺にしてやれよ、俺は無傷だ。美人の姉ちゃん」
ベットから半身を起こしたユウキが、先程、眠らされた魔族の女性とガーゴイルとのやり取りを止めに入った。
「貴様……! なぜ、もう目が覚めている……!
私の睡眠魔法を受けたら常人は3日は起きないのに、たった数時間で……」
魔族の女性が驚いた表情でユウキに話しかける。
ガーゴイルも驚いたように話す。
「え、エリーナ様。こいつ、やっぱり片翼の女神の使者じゃないでしょうか? 普通じゃない。髪も眼も黒いし」
エリーナと呼ばれた魔族の女性が応える。
「…………何者かは魔王様が知っておられるようだ」
2人のやり取りに我慢出来なくなったユウキが口を開く。
「あんたらさっきから俺が黒髪、黒い瞳だってことで驚いてるみたいだけど、俺の国じゃほとんどの人が黒髪、黒い瞳だよ!
あと片翼の女神ってなんだよ?」
ユウキの言葉を聞き終えた後、2人は更に驚いたようだった。
「貴様、冗談だろ?
この世界の創造主を忘れた訳ではあるまい。
世界に終焉の巫女を使わし、約束の日を設けた片翼の女神を」
ユウキは頭が痛いと言いたげな表情で応えた。
「片翼の女神とやらがこの世界の創造主って奴なのは分かったが……、
終焉の巫女?
約束の日?
また分からん単語が出てきたな……」
先程まで驚いていた2人は今度は呆れたような表情に変わる。
「エリーナ様、こいつ、きっと倒れた時に頭を強く打ったんですよ。俺たちは運ぶ時、危害は本当に加えてないからそのハズです。それで記憶喪失なんですよ」
「……とりあえず魔王様の命令だ。出ろ」
そう言うと、エリーナは牢屋の鍵を外し扉を開けた。
「えっ! 解放してくれんの?」
「そうだ、私についてこい」
エリーナが応える。
ユウキはエリーナに後ろにつき、しばらくの間、廊下を歩いた。突き当たりを右に曲がると上に繋がる階段が見え、そこを登りきった。階段の上に上がるとそこには西洋風の大きな広間に出た。
「うっわぁ……! 立派な城だなぁ。大広間ってやつか?」
ユウキは初めて自分の目で見る異世界の城にワクワクした顔で尋ねた。
「ここは衛兵控え室へと続くただの廊下だ。大広間はここの10倍はある」
淡々とエリーナが説明を行う。
「マジか……! ここでもすでに俺の家の3倍くらいの広さがあるぞ……」
少し考えてユウキは続けた。
「なあ、エリーナさん、
俺がここに連れてこられるちょっと前に、俺と同じくらいの人間の女の子をここに連れてこなかったか? 頼むからその子も解放してほしいんだ。さっきのガーゴイルとの会話からして、あんたはある程度上の立場みたいだし、話をちゃんと聞いてくれそうだ」
「人間の女の子? 人間の女の子なんて、ここ一月見ていないぞ。それにお前は牢から出しただけで外に解放するわけではない。これから謁見の間で魔王様に会ってもらう為に連れてきているだけだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……。人間の女の子を見てないだって? そんなことないはずだ! 確かに光に包まれた後、飛ばされてこっちについて意識を失う前まではあいつの手を掴んでたんだ!」
慌てるユウキ。
「なにを言っている?
部下には虚偽の報告がないかも調べさせた。間違いない」
ムッとした顔で振り返るエリーナ。
「それに魔王に会いに行くって? どうしてだたの人間なんかと……」
戸惑うユウキ。
暫くしてエリーナが応えた。
「私にも分からん。魔王様は2日前に王座に就いたばかりでな。初めての命令が黒髪で黒い瞳の青年を無傷で保護せよとのことだったのだ。そして先程、捕らえたお前を目が覚めた際に謁見の間に通せとのことだった。その命を直々に私が承ったからこうして貴様を連行しているのだ。
まあ、思ったよりも大分早く目覚めてくれたから助かったがな」
「ど、どういことなんだよ……」
「だから分からんと言っている。謁見の間につけば自ずと答えが出るだろう」
ユウキは息を呑む。
(魔王か、いったいどんな怪物だよ……)
謁見の間につき、玉座にはまだ誰もいなかった。エリーナの話だとすぐに付き人とお見えになるということだ。
「間も無くお着きになられる。
腰を下ろした体制で顔を伏せて待機しろ。私は玉座の横で魔王ルナマリア様の到着を待つ。ルナマリア様がお声をかけて許可が出た時に顔を上げるように」
エリーナが丁寧に説明してくれる。
「ルナマリア!? 魔王って女か!?」
ユウキが驚いてエリーナに尋ねた。
「静かに! お見えになられた!」
エリーナが制止したのと同時に奥の扉が開く音が聞こえた。
奥からユウキ側に歩いてくる2つの足音、1人が玉座に座り、1人がエリーナとは反対側の玉座の横で立ち止まった。
少しの空白の時間が流れた後、魔王が声をかける。
「面をあげよ!」
ユウキはゆっくり顔を上げ魔王の姿をみた。ユウキはこの時、異世界にきて一番驚くことになった。
「アッ……!!!! アンナ!!」
玉座には、ユウキの幼馴染の神代アンナが黒いドレスを着て座っていた。
「なぜ牢屋に入れた!? 丁重に扱えと伝えただろ!!」
「すみません! 他の者から魔王様が血相を変えて連れてくるように言っていたと聞いていたので、とんでもない大悪党だと思い牢屋に入れておきました……」
「この馬鹿者!! 傷一つ負わすなとのご命令だ!! 命に逆らえば死罪だと申したのだぞ!」
「エリーナ様、すみません!
本当にすみません、どうか魔王様には報告しないでください……」
「この場で貴様を切り刻んでも良いのだぞ!!」
「ヒィィィ!! どうかご勘弁を!!」
「その辺にしてやれよ、俺は無傷だ。美人の姉ちゃん」
ベットから半身を起こしたユウキが、先程、眠らされた魔族の女性とガーゴイルとのやり取りを止めに入った。
「貴様……! なぜ、もう目が覚めている……!
私の睡眠魔法を受けたら常人は3日は起きないのに、たった数時間で……」
魔族の女性が驚いた表情でユウキに話しかける。
ガーゴイルも驚いたように話す。
「え、エリーナ様。こいつ、やっぱり片翼の女神の使者じゃないでしょうか? 普通じゃない。髪も眼も黒いし」
エリーナと呼ばれた魔族の女性が応える。
「…………何者かは魔王様が知っておられるようだ」
2人のやり取りに我慢出来なくなったユウキが口を開く。
「あんたらさっきから俺が黒髪、黒い瞳だってことで驚いてるみたいだけど、俺の国じゃほとんどの人が黒髪、黒い瞳だよ!
あと片翼の女神ってなんだよ?」
ユウキの言葉を聞き終えた後、2人は更に驚いたようだった。
「貴様、冗談だろ?
この世界の創造主を忘れた訳ではあるまい。
世界に終焉の巫女を使わし、約束の日を設けた片翼の女神を」
ユウキは頭が痛いと言いたげな表情で応えた。
「片翼の女神とやらがこの世界の創造主って奴なのは分かったが……、
終焉の巫女?
約束の日?
また分からん単語が出てきたな……」
先程まで驚いていた2人は今度は呆れたような表情に変わる。
「エリーナ様、こいつ、きっと倒れた時に頭を強く打ったんですよ。俺たちは運ぶ時、危害は本当に加えてないからそのハズです。それで記憶喪失なんですよ」
「……とりあえず魔王様の命令だ。出ろ」
そう言うと、エリーナは牢屋の鍵を外し扉を開けた。
「えっ! 解放してくれんの?」
「そうだ、私についてこい」
エリーナが応える。
ユウキはエリーナに後ろにつき、しばらくの間、廊下を歩いた。突き当たりを右に曲がると上に繋がる階段が見え、そこを登りきった。階段の上に上がるとそこには西洋風の大きな広間に出た。
「うっわぁ……! 立派な城だなぁ。大広間ってやつか?」
ユウキは初めて自分の目で見る異世界の城にワクワクした顔で尋ねた。
「ここは衛兵控え室へと続くただの廊下だ。大広間はここの10倍はある」
淡々とエリーナが説明を行う。
「マジか……! ここでもすでに俺の家の3倍くらいの広さがあるぞ……」
少し考えてユウキは続けた。
「なあ、エリーナさん、
俺がここに連れてこられるちょっと前に、俺と同じくらいの人間の女の子をここに連れてこなかったか? 頼むからその子も解放してほしいんだ。さっきのガーゴイルとの会話からして、あんたはある程度上の立場みたいだし、話をちゃんと聞いてくれそうだ」
「人間の女の子? 人間の女の子なんて、ここ一月見ていないぞ。それにお前は牢から出しただけで外に解放するわけではない。これから謁見の間で魔王様に会ってもらう為に連れてきているだけだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……。人間の女の子を見てないだって? そんなことないはずだ! 確かに光に包まれた後、飛ばされてこっちについて意識を失う前まではあいつの手を掴んでたんだ!」
慌てるユウキ。
「なにを言っている?
部下には虚偽の報告がないかも調べさせた。間違いない」
ムッとした顔で振り返るエリーナ。
「それに魔王に会いに行くって? どうしてだたの人間なんかと……」
戸惑うユウキ。
暫くしてエリーナが応えた。
「私にも分からん。魔王様は2日前に王座に就いたばかりでな。初めての命令が黒髪で黒い瞳の青年を無傷で保護せよとのことだったのだ。そして先程、捕らえたお前を目が覚めた際に謁見の間に通せとのことだった。その命を直々に私が承ったからこうして貴様を連行しているのだ。
まあ、思ったよりも大分早く目覚めてくれたから助かったがな」
「ど、どういことなんだよ……」
「だから分からんと言っている。謁見の間につけば自ずと答えが出るだろう」
ユウキは息を呑む。
(魔王か、いったいどんな怪物だよ……)
謁見の間につき、玉座にはまだ誰もいなかった。エリーナの話だとすぐに付き人とお見えになるということだ。
「間も無くお着きになられる。
腰を下ろした体制で顔を伏せて待機しろ。私は玉座の横で魔王ルナマリア様の到着を待つ。ルナマリア様がお声をかけて許可が出た時に顔を上げるように」
エリーナが丁寧に説明してくれる。
「ルナマリア!? 魔王って女か!?」
ユウキが驚いてエリーナに尋ねた。
「静かに! お見えになられた!」
エリーナが制止したのと同時に奥の扉が開く音が聞こえた。
奥からユウキ側に歩いてくる2つの足音、1人が玉座に座り、1人がエリーナとは反対側の玉座の横で立ち止まった。
少しの空白の時間が流れた後、魔王が声をかける。
「面をあげよ!」
ユウキはゆっくり顔を上げ魔王の姿をみた。ユウキはこの時、異世界にきて一番驚くことになった。
「アッ……!!!! アンナ!!」
玉座には、ユウキの幼馴染の神代アンナが黒いドレスを着て座っていた。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる