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海水浴と海の幸(おまけ)
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新婚旅行中、海人族嫁いだ義姉様からの提案で海水浴に来たアレクサンドラ。
始めてと言っても過言ではないアレクサンドラは広大な水を眺める。
ざわめく音立てながら迫ってきては去っていく水。
少しべたつく空気だが、精霊たちが楽しそうに歓迎してくれるのを見ると、嬉しく思う。
美しく光を受けて輝く青緑の海。
だが時としてよくわからない恐怖も感じる。
隣にいた、サンムーンに思わずしがみつく。
どうした?と心配そうな姿を見つめる。
「大丈夫だ、すぐ助けに行く。アレクのかわいい姿を見失ったりしない」
かわいいと言われ、義姉様の選んだ水着を一番褒めてくれたのを思い出して照れくさくなる。
近くには彼の姉義姉様とその子供たちがいる。
幼い、と言っても十代前半の子どもたちへ義姉様が言いつけている。
二人の女の子。
一人は青紫の美しい、人に似た姿。
彼女は義姉様に似たらしく、竜になれるそうだ。
そしてもう一人は、海人族の父親に似たらしく、耳の形が植物のように淡い赤で華やかな模様となっている。
もう一人の男の子は同じような耳の形にオレンジ色のキレイな模様。
綺麗。と、二人が隠そうとしていた耳を見ながら言えば照れ臭そうに母親の後ろに隠れていた姿は可愛かった。
そしてその三人は海へと飛び込んでいく。
義姉様も遊んできなさいと背中を押してくれる。
折角選んでもらえた水着なのだからとサンムーンから手を離す。
サンムーンは行ってらっしゃいと手を振ってくれるので振り返して、海を見る。
恐る恐る水が来る場所に足を付ける。
迫ってくる塩水に、足元の砂も一緒に持っていかれるような力強い引き。
元気いっぱいに泳ぐ三人を見て、さらに一歩と近づく。
ふと足の近くまで転がってきた貝殻に気づいて手に取る。
綺麗だと思わず空に翳せば、海の精霊たちが覗き込んでくる。
しかしそれを知ってか知らずか、義姉様の息子も来る。
貝殻の種類を告げて、これはねーと拾っては教えてくれる。
そんな姿に娘達も気づいたのか近づいてくる。
そして泳ぎ方教えてあげると足がつく場所で泳ぎ方を教えてくれる。
慣れたように指導してくれる姿。
流石、海の生物の血が混じった海と共に生きる種族だと納得する。
しばらく泳ぎを教わっていればいい匂いがして縁側を見ればバーベーキューの準備をしているサンムーン。
どうやら義姉様に言われたらしい。
よだれを垂らして我慢している子供たちも一緒に戻る。
用意してくれている間に子共たちの体を義姉様と手分けして拭く。
「アレク」
差し出された海の幸を一口、口にする。
塩味がよく聞いたお魚。
塩の塩辛さに、濃厚な脂が口いっぱいに広がり、美味しさの幸福に包まれる。
そして今度は焼けたソースの匂い。
この国独特の文化であるソースを塗りたくった軟体生物を細かく切って、渡される。
何度噛んでも跳ね返ってくると思えるような、歯ごたえ。
だがその噛むという作業も苦ではない。
溢れんばかりの濃厚なソースと出汁にも使えそうな汁が口の中に溢れだす。
ただ二切れ食べたら流石に顎が疲れる。
サンムーンを見て、差し出せばそれに食いつく。
美味しいと微笑み咀嚼する。
子供たちを見れば自分と違ってまるごと食いつき、引きちぎっては口に運んでいく。
義姉様もサンムーンも同様に丸のまま口に運んでいる。
種族差を感じながらも今度は貝を口に運ぶ。
つるんと口の中に流れ込み、そのまま胃まで滑り落ちて行きそうなほど食べやすい。
噛めば、お汁があふれ出し、火傷するかと思わずにはいられないほど熱い。
慣れてしまえばその味すらも虜になる。
貝の中に残った汁を名残惜しくも啜れば、海の味だと言いたくなるほど濃厚な汁。
僅かなのが辛い。
「美味しい」
漏れた声に、嬉しそうに笑うサンムーンと義姉様。
子供たちですら嬉しそうにしている。
帰り際、鼻歌交じりに歌を歌っていれば、子供たちはその歌と疲れがあったのか眠ってしまう。
翌日、アレクサンドラはじりじりと痛む日焼けに悩まされ、遊びに来た子供たちがオロオロと心配そうにしていた。
後に、義姉の娘の一人が日焼け止めを生み出すのだがそれはまた別のお話。
始めてと言っても過言ではないアレクサンドラは広大な水を眺める。
ざわめく音立てながら迫ってきては去っていく水。
少しべたつく空気だが、精霊たちが楽しそうに歓迎してくれるのを見ると、嬉しく思う。
美しく光を受けて輝く青緑の海。
だが時としてよくわからない恐怖も感じる。
隣にいた、サンムーンに思わずしがみつく。
どうした?と心配そうな姿を見つめる。
「大丈夫だ、すぐ助けに行く。アレクのかわいい姿を見失ったりしない」
かわいいと言われ、義姉様の選んだ水着を一番褒めてくれたのを思い出して照れくさくなる。
近くには彼の姉義姉様とその子供たちがいる。
幼い、と言っても十代前半の子どもたちへ義姉様が言いつけている。
二人の女の子。
一人は青紫の美しい、人に似た姿。
彼女は義姉様に似たらしく、竜になれるそうだ。
そしてもう一人は、海人族の父親に似たらしく、耳の形が植物のように淡い赤で華やかな模様となっている。
もう一人の男の子は同じような耳の形にオレンジ色のキレイな模様。
綺麗。と、二人が隠そうとしていた耳を見ながら言えば照れ臭そうに母親の後ろに隠れていた姿は可愛かった。
そしてその三人は海へと飛び込んでいく。
義姉様も遊んできなさいと背中を押してくれる。
折角選んでもらえた水着なのだからとサンムーンから手を離す。
サンムーンは行ってらっしゃいと手を振ってくれるので振り返して、海を見る。
恐る恐る水が来る場所に足を付ける。
迫ってくる塩水に、足元の砂も一緒に持っていかれるような力強い引き。
元気いっぱいに泳ぐ三人を見て、さらに一歩と近づく。
ふと足の近くまで転がってきた貝殻に気づいて手に取る。
綺麗だと思わず空に翳せば、海の精霊たちが覗き込んでくる。
しかしそれを知ってか知らずか、義姉様の息子も来る。
貝殻の種類を告げて、これはねーと拾っては教えてくれる。
そんな姿に娘達も気づいたのか近づいてくる。
そして泳ぎ方教えてあげると足がつく場所で泳ぎ方を教えてくれる。
慣れたように指導してくれる姿。
流石、海の生物の血が混じった海と共に生きる種族だと納得する。
しばらく泳ぎを教わっていればいい匂いがして縁側を見ればバーベーキューの準備をしているサンムーン。
どうやら義姉様に言われたらしい。
よだれを垂らして我慢している子供たちも一緒に戻る。
用意してくれている間に子共たちの体を義姉様と手分けして拭く。
「アレク」
差し出された海の幸を一口、口にする。
塩味がよく聞いたお魚。
塩の塩辛さに、濃厚な脂が口いっぱいに広がり、美味しさの幸福に包まれる。
そして今度は焼けたソースの匂い。
この国独特の文化であるソースを塗りたくった軟体生物を細かく切って、渡される。
何度噛んでも跳ね返ってくると思えるような、歯ごたえ。
だがその噛むという作業も苦ではない。
溢れんばかりの濃厚なソースと出汁にも使えそうな汁が口の中に溢れだす。
ただ二切れ食べたら流石に顎が疲れる。
サンムーンを見て、差し出せばそれに食いつく。
美味しいと微笑み咀嚼する。
子供たちを見れば自分と違ってまるごと食いつき、引きちぎっては口に運んでいく。
義姉様もサンムーンも同様に丸のまま口に運んでいる。
種族差を感じながらも今度は貝を口に運ぶ。
つるんと口の中に流れ込み、そのまま胃まで滑り落ちて行きそうなほど食べやすい。
噛めば、お汁があふれ出し、火傷するかと思わずにはいられないほど熱い。
慣れてしまえばその味すらも虜になる。
貝の中に残った汁を名残惜しくも啜れば、海の味だと言いたくなるほど濃厚な汁。
僅かなのが辛い。
「美味しい」
漏れた声に、嬉しそうに笑うサンムーンと義姉様。
子供たちですら嬉しそうにしている。
帰り際、鼻歌交じりに歌を歌っていれば、子供たちはその歌と疲れがあったのか眠ってしまう。
翌日、アレクサンドラはじりじりと痛む日焼けに悩まされ、遊びに来た子供たちがオロオロと心配そうにしていた。
後に、義姉の娘の一人が日焼け止めを生み出すのだがそれはまた別のお話。
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