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父の日(おまけ)
しおりを挟む母親の墓に赤い花を置く。
そこに母はいない。
だけど、皆が作ってくれた、母のお墓以外の何物でもない。
アレクサンドラは墓参りを終え、兄弟に呼ばれているため王城に来る。
「養母様」
「あら。来てたの?お茶の用意しましょうか」
「今日、義弟と義妹、会いに、来ました。お話したい」
「何かしら」
首を捻る養母様にさぁと首を捻る。
「アレク兄上!こっちです」
義弟がルークスを引き連れて来る。
いつの間にか背丈を抜かされてしまった二人は男前に成長して逞しい。
「あ、ルークス。今日、一緒訓練?おつかれ様です」
「おうよ。なんで俺が王子の訓練の手伝いしてんだろうとは思うけど」
「いいなぁ」
自分に剣を握るだけの力があれば、母のために何かできたのかと何度も思ったこともある。
復讐を囁く精霊に、力のない自分は結局誰かに頼るしかなくなる。
それでは彼らが傷つく。
それだけは嫌だ。
母のように大切な人たちは死んでほしくない。
これだけは周りが勧めたとしても譲れない。
「兄上も一緒にどうですか」
「頑張った。生温かい目、皆、励ます。精霊、どんまいって」
ルークスは見ていたため、あー、と声をこぼす。
養母様と別れ、義弟の部屋へと向かう。
既にお茶を飲んで待っている義妹。
日に日に美しさや礼儀に磨きがかかっている。
養母様を目標にしているがそれを超えるのも近そうだと思う。
「お兄様!アレクお兄様。おかえりなさい」
前言撤回。まだまだ子供だと飛びつくように近づいてくる義妹の頭を撫でる。
「父上の誕生日プレゼントをどうしようかと思って」
ようやく義弟から今回の議題を言われる。
「あ、そっか。もうそろそろ」
「お父様のをうっかり忘れると拗ねるんですもの。お母様ばっかりあげるって。一応父親に感謝を伝える日でもあるのでメッセージカードは当然つけるとして」
養母様にも、養父様にも、毎年豪華な誕生日プレゼントを貰ったのでお礼をしたいから同じようなのを返したいのだが、同じような高価なものを返せず、サンムーンのご両親の分も用意したい。
なので兄妹で折半することにしている。
ただ国王の誕生日ということでパーティ準備で忙しいことも多い。
終わってから致し方がなく渡すのだがそれで拗ねるというのだろう。
「去年は万年筆。一昨年は、袖カフス。で、結局わかんねぇからルークスを連れてきた」
「うちは父親へ感謝する日は花一輪だけだよ。一々面倒だし。妹はありがとの似顔絵つけたりするけど」
「お花。お花だけじゃあ寂しいわね」
「世話するの使用人だしな」
兄妹が唸る。
必死に考えて飲んだことのないお酒を提案してみる。
「じゃあ、お酒、は?」
「父上は質より量」
「控えて貰いたいのよ。万が一があったら私達がお仕事をしなきゃいけないけど今はもっと色んなことしたいもの」
兄妹は溜め息をこぼす。
三人で首を捻り、必死に考える。
王は夕食を愛しい妻、息子と娘、そして義息とその夫と食べる。
誕生日のパーティがあり、忙しくしていたため子供たちと時間が保てなかった。
そのためか子供たちが素っ気なく悲しかった。
義息も珍しく避けていたので悲しかった。
ちなみに義息の夫は警護の為近くで見ているだけ。
彼に相談しても気のせいじゃないかと素っ気ない。
多分マナーとか面倒だったので警護をしているのだろう。
少し寂しそうにしながらも、義息はその姿を時々目で追い、目が合うと自分たちに向ける物とは違う愛しそうな笑みを向ける。
相変わらず幸せそうで良かったと安堵。
デザートも出て、義息が息子に目で指示を受けて思い出したように立ち上がる。
「あ、養父様」
慌てて使用人から受け取った包みを向けてくる。
「お父様にはお世話になっているので子どもたちから感謝の意を示して」
ワイングラスのペアとワイン。
そして一輪の黄色い花。
「あ、ありがとう」
「父上が母上と晩酌を楽しんでいただきたく用意いたしました。ただお酒は程々に」
「そうだな。そうするとしよう」
苦笑しながらも三人からのプレゼントを喜ぶ。
後日、誕生日を迎えたアレクサンドラの下に高価なお酒が届く。
果実酒であったものの口にした。
一杯分でサンムーンや使用人、家族に大好き攻撃をして、サンムーンに抱きついて眠ってしまった。
翌朝、忘れるという酔っぱらい具合。
なのでサンムーンに厳命されて、サンムーンが晩酌するとき一緒に飲んで少しずつ消費することにした。
今日も変わらず平和である。
そこに母はいない。
だけど、皆が作ってくれた、母のお墓以外の何物でもない。
アレクサンドラは墓参りを終え、兄弟に呼ばれているため王城に来る。
「養母様」
「あら。来てたの?お茶の用意しましょうか」
「今日、義弟と義妹、会いに、来ました。お話したい」
「何かしら」
首を捻る養母様にさぁと首を捻る。
「アレク兄上!こっちです」
義弟がルークスを引き連れて来る。
いつの間にか背丈を抜かされてしまった二人は男前に成長して逞しい。
「あ、ルークス。今日、一緒訓練?おつかれ様です」
「おうよ。なんで俺が王子の訓練の手伝いしてんだろうとは思うけど」
「いいなぁ」
自分に剣を握るだけの力があれば、母のために何かできたのかと何度も思ったこともある。
復讐を囁く精霊に、力のない自分は結局誰かに頼るしかなくなる。
それでは彼らが傷つく。
それだけは嫌だ。
母のように大切な人たちは死んでほしくない。
これだけは周りが勧めたとしても譲れない。
「兄上も一緒にどうですか」
「頑張った。生温かい目、皆、励ます。精霊、どんまいって」
ルークスは見ていたため、あー、と声をこぼす。
養母様と別れ、義弟の部屋へと向かう。
既にお茶を飲んで待っている義妹。
日に日に美しさや礼儀に磨きがかかっている。
養母様を目標にしているがそれを超えるのも近そうだと思う。
「お兄様!アレクお兄様。おかえりなさい」
前言撤回。まだまだ子供だと飛びつくように近づいてくる義妹の頭を撫でる。
「父上の誕生日プレゼントをどうしようかと思って」
ようやく義弟から今回の議題を言われる。
「あ、そっか。もうそろそろ」
「お父様のをうっかり忘れると拗ねるんですもの。お母様ばっかりあげるって。一応父親に感謝を伝える日でもあるのでメッセージカードは当然つけるとして」
養母様にも、養父様にも、毎年豪華な誕生日プレゼントを貰ったのでお礼をしたいから同じようなのを返したいのだが、同じような高価なものを返せず、サンムーンのご両親の分も用意したい。
なので兄妹で折半することにしている。
ただ国王の誕生日ということでパーティ準備で忙しいことも多い。
終わってから致し方がなく渡すのだがそれで拗ねるというのだろう。
「去年は万年筆。一昨年は、袖カフス。で、結局わかんねぇからルークスを連れてきた」
「うちは父親へ感謝する日は花一輪だけだよ。一々面倒だし。妹はありがとの似顔絵つけたりするけど」
「お花。お花だけじゃあ寂しいわね」
「世話するの使用人だしな」
兄妹が唸る。
必死に考えて飲んだことのないお酒を提案してみる。
「じゃあ、お酒、は?」
「父上は質より量」
「控えて貰いたいのよ。万が一があったら私達がお仕事をしなきゃいけないけど今はもっと色んなことしたいもの」
兄妹は溜め息をこぼす。
三人で首を捻り、必死に考える。
王は夕食を愛しい妻、息子と娘、そして義息とその夫と食べる。
誕生日のパーティがあり、忙しくしていたため子供たちと時間が保てなかった。
そのためか子供たちが素っ気なく悲しかった。
義息も珍しく避けていたので悲しかった。
ちなみに義息の夫は警護の為近くで見ているだけ。
彼に相談しても気のせいじゃないかと素っ気ない。
多分マナーとか面倒だったので警護をしているのだろう。
少し寂しそうにしながらも、義息はその姿を時々目で追い、目が合うと自分たちに向ける物とは違う愛しそうな笑みを向ける。
相変わらず幸せそうで良かったと安堵。
デザートも出て、義息が息子に目で指示を受けて思い出したように立ち上がる。
「あ、養父様」
慌てて使用人から受け取った包みを向けてくる。
「お父様にはお世話になっているので子どもたちから感謝の意を示して」
ワイングラスのペアとワイン。
そして一輪の黄色い花。
「あ、ありがとう」
「父上が母上と晩酌を楽しんでいただきたく用意いたしました。ただお酒は程々に」
「そうだな。そうするとしよう」
苦笑しながらも三人からのプレゼントを喜ぶ。
後日、誕生日を迎えたアレクサンドラの下に高価なお酒が届く。
果実酒であったものの口にした。
一杯分でサンムーンや使用人、家族に大好き攻撃をして、サンムーンに抱きついて眠ってしまった。
翌朝、忘れるという酔っぱらい具合。
なのでサンムーンに厳命されて、サンムーンが晩酌するとき一緒に飲んで少しずつ消費することにした。
今日も変わらず平和である。
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