12 / 20
12
しおりを挟む
勇者が和平に来て数年。
アレクサンドラは市場のお店に立ち、店主の奥さんと果物を売る。
そして時間が来るとお駄賃をもらって退散。
「なぁ、アレク」
お迎えに来た成長期に入ったルークスと串焼きを食べながら聞かれる。
「お小遣い貰ってるんだろ?おばさんの手伝いをする理由ないだろ」
今回お店を手伝っているのには理由がある。
一つは店主がぎっくり腰に合うのを目の前で見てしまったことで治るまで手伝いたいと申し出た。
力仕事では全く役に立たなかったけれど、計算はなんとかできた。
もう一つは欲しいものがあり、その足しにしようと決めたため。
店主も明日には戻ってこれるとのことなので明日で終わり。
欲しいものは今日家に届く。
その説明をする。
「ほしいもの?」
聞かれるが内緒と笑って誤魔化す。
市場を通り過ぎている間に、すれ違う人族を、見る。
「人、多い」
「あぁ。ここ最近、友好的になってきたからだろ?」
そういえば最近、勇者が魔族たる異種族への見方を変えたという噂をサンムーンの兄、魔道士である義兄様が言っていたのを思い出す。
あの再教育と言っていた勇者はどうなったのかと考えて、恐怖に陥りそうになり頭を振るう。
きっと、故郷に戻って人のために働いているのだろうと考える。
その噂の勇者はきっと産みの父母と同じような考えの持ち主なのだろう。
「観光地になってるらしいぜ」
皆仲良しなんだ。と頷いていれば、目の前に冒険者風の青年がいる。
「なぁ。君人族だろ?可愛いよね。俺と付き合わない?」
アレクサンドラは左右に首を振る。
「こいつは結婚してるぞ」
庇うようにルークスが告げれば青年が見てくる。
「竜人族とか?寿命も価値観も違うのにか?」
「それでも、たくさん、思い出残すって決めた」
青年は不満そうに見つめてくる。
何かを告げようとするがアレクサンドラはたった一言で切り捨てる。
「それに、どんな存在よりかっこいい」
曇りなき純粋無垢な瞳に、青年がたじろぐ。
「アレク」
駆け寄ってくるサンムーン。
アレクサンドラは手を振る。
「お仕事?」
「あぁ。見回りだ。今日は約束通り早く帰るからな」
「待ってる」
「明日は王と王妃の下に顔を出すようにな。二人ともアレクに会いたいと言っていたぞ」
「仕事終わったらそうする」
ちらりと青年を見るサンムーン。
「ルークス。彼らは」
「アレクに告白した奴ら」
「ほう。俺のアレクに告白とはいい度胸」
剣を抜きながら青年を見るが、青年は走って逃げている。
冒険者を続けているだけあって危機だと感じたらしい。
アレクサンドラはしばらく青年の後ろ姿とサンムーンを交互に眺めてから微笑む。
「サンムーン、やっぱりかっこいい」
「そうか」
嬉しそうに笑うサンムーン。
先に家に帰ることにして使用人達とパーティの用意をする。
今日は結婚記念日。
アレクサンドラはお祝いに用意していた逆鱗に加工した石のペンダントを贈る。
石は精霊に頼み、アレキサンドライトのクズ石があるところを探してもらい、買い取った物。
その石を職人に頼んで加工してもらった。
そしてその職人はサンムーンが武人と聞いてペンダントを勧めてくれた。
サンムーンの逆鱗とお揃いだと喜んでいる。
そして最後に今一度、精霊に頼み、加護を詰めた。
「無事、に、帰ってきてほしい」
「アレクと同じ瞳の石だな。きれいな石だと思ったよ」
微笑むサンムーンに、アレクサンドラは嬉しいと微笑み返す。
その後、竜人族と異種族が結婚する時、異種族から石の鱗を贈る風習が出来たという。
精霊の愛し子は今日も竜人国で、優しさと愛情に包まれて過ごしている。
アレクサンドラは市場のお店に立ち、店主の奥さんと果物を売る。
そして時間が来るとお駄賃をもらって退散。
「なぁ、アレク」
お迎えに来た成長期に入ったルークスと串焼きを食べながら聞かれる。
「お小遣い貰ってるんだろ?おばさんの手伝いをする理由ないだろ」
今回お店を手伝っているのには理由がある。
一つは店主がぎっくり腰に合うのを目の前で見てしまったことで治るまで手伝いたいと申し出た。
力仕事では全く役に立たなかったけれど、計算はなんとかできた。
もう一つは欲しいものがあり、その足しにしようと決めたため。
店主も明日には戻ってこれるとのことなので明日で終わり。
欲しいものは今日家に届く。
その説明をする。
「ほしいもの?」
聞かれるが内緒と笑って誤魔化す。
市場を通り過ぎている間に、すれ違う人族を、見る。
「人、多い」
「あぁ。ここ最近、友好的になってきたからだろ?」
そういえば最近、勇者が魔族たる異種族への見方を変えたという噂をサンムーンの兄、魔道士である義兄様が言っていたのを思い出す。
あの再教育と言っていた勇者はどうなったのかと考えて、恐怖に陥りそうになり頭を振るう。
きっと、故郷に戻って人のために働いているのだろうと考える。
その噂の勇者はきっと産みの父母と同じような考えの持ち主なのだろう。
「観光地になってるらしいぜ」
皆仲良しなんだ。と頷いていれば、目の前に冒険者風の青年がいる。
「なぁ。君人族だろ?可愛いよね。俺と付き合わない?」
アレクサンドラは左右に首を振る。
「こいつは結婚してるぞ」
庇うようにルークスが告げれば青年が見てくる。
「竜人族とか?寿命も価値観も違うのにか?」
「それでも、たくさん、思い出残すって決めた」
青年は不満そうに見つめてくる。
何かを告げようとするがアレクサンドラはたった一言で切り捨てる。
「それに、どんな存在よりかっこいい」
曇りなき純粋無垢な瞳に、青年がたじろぐ。
「アレク」
駆け寄ってくるサンムーン。
アレクサンドラは手を振る。
「お仕事?」
「あぁ。見回りだ。今日は約束通り早く帰るからな」
「待ってる」
「明日は王と王妃の下に顔を出すようにな。二人ともアレクに会いたいと言っていたぞ」
「仕事終わったらそうする」
ちらりと青年を見るサンムーン。
「ルークス。彼らは」
「アレクに告白した奴ら」
「ほう。俺のアレクに告白とはいい度胸」
剣を抜きながら青年を見るが、青年は走って逃げている。
冒険者を続けているだけあって危機だと感じたらしい。
アレクサンドラはしばらく青年の後ろ姿とサンムーンを交互に眺めてから微笑む。
「サンムーン、やっぱりかっこいい」
「そうか」
嬉しそうに笑うサンムーン。
先に家に帰ることにして使用人達とパーティの用意をする。
今日は結婚記念日。
アレクサンドラはお祝いに用意していた逆鱗に加工した石のペンダントを贈る。
石は精霊に頼み、アレキサンドライトのクズ石があるところを探してもらい、買い取った物。
その石を職人に頼んで加工してもらった。
そしてその職人はサンムーンが武人と聞いてペンダントを勧めてくれた。
サンムーンの逆鱗とお揃いだと喜んでいる。
そして最後に今一度、精霊に頼み、加護を詰めた。
「無事、に、帰ってきてほしい」
「アレクと同じ瞳の石だな。きれいな石だと思ったよ」
微笑むサンムーンに、アレクサンドラは嬉しいと微笑み返す。
その後、竜人族と異種族が結婚する時、異種族から石の鱗を贈る風習が出来たという。
精霊の愛し子は今日も竜人国で、優しさと愛情に包まれて過ごしている。
108
お気に入りに追加
446
あなたにおすすめの小説
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ
鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。
「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」
ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。
「では、私がいただいても?」
僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!
役立たずの僕がとても可愛がられています!
BLですが、R指定がありません!
色々緩いです。
1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。
本編は完結済みです。
小話も完結致しました。
土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)
小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました!
アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。
お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354
好きな人の婚約者を探しています
迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼
*全12話+後日談1話
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
兄たちが弟を可愛がりすぎです~番外編春人が夢で見た二十年後の王子と護衛騎士~
クロユキ
BL
ベルスタ王国第五王子ウィル・テラ・セルディ・ベルスタ二十年前に亡くなるが、異世界から坂田春人高校二年がウィル王子の身体の中に入りそのままベルスタ王国の王子として生活をする事になる。城内では兄王子に護衛騎士など毎日春人に付きまとう日々…そして今のベルスタ王国の王が代わり、春人ことウィル王子が王様になったお話。
春人の夢の中での話で、ウィル王が兄王子達に護衛騎士に相変わらず振り回されます。
現在更新中の兄弟とはまた別の話になりますが、番外編だけでも読めるお話しになると思います
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、
ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。
そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。
元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。
兄からの卒業。
レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、
全4話で1日1話更新します。
R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる