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勇者が和平に来て数年。
アレクサンドラは市場のお店に立ち、店主の奥さんと果物を売る。
そして時間が来るとお駄賃をもらって退散。
「なぁ、アレク」
お迎えに来た成長期に入ったルークスと串焼きを食べながら聞かれる。
「お小遣い貰ってるんだろ?おばさんの手伝いをする理由ないだろ」
今回お店を手伝っているのには理由がある。
一つは店主がぎっくり腰に合うのを目の前で見てしまったことで治るまで手伝いたいと申し出た。
力仕事では全く役に立たなかったけれど、計算はなんとかできた。
もう一つは欲しいものがあり、その足しにしようと決めたため。
店主も明日には戻ってこれるとのことなので明日で終わり。
欲しいものは今日家に届く。
その説明をする。
「ほしいもの?」
聞かれるが内緒と笑って誤魔化す。
市場を通り過ぎている間に、すれ違う人族を、見る。
「人、多い」
「あぁ。ここ最近、友好的になってきたからだろ?」
そういえば最近、勇者が魔族たる異種族への見方を変えたという噂をサンムーンの兄、魔道士である義兄様が言っていたのを思い出す。
あの再教育と言っていた勇者はどうなったのかと考えて、恐怖に陥りそうになり頭を振るう。
きっと、故郷に戻って人のために働いているのだろうと考える。
その噂の勇者はきっと産みの父母と同じような考えの持ち主なのだろう。
「観光地になってるらしいぜ」
皆仲良しなんだ。と頷いていれば、目の前に冒険者風の青年がいる。
「なぁ。君人族だろ?可愛いよね。俺と付き合わない?」
アレクサンドラは左右に首を振る。
「こいつは結婚してるぞ」
庇うようにルークスが告げれば青年が見てくる。
「竜人族とか?寿命も価値観も違うのにか?」
「それでも、たくさん、思い出残すって決めた」
青年は不満そうに見つめてくる。
何かを告げようとするがアレクサンドラはたった一言で切り捨てる。
「それに、どんな存在よりかっこいい」
曇りなき純粋無垢な瞳に、青年がたじろぐ。
「アレク」
駆け寄ってくるサンムーン。
アレクサンドラは手を振る。
「お仕事?」
「あぁ。見回りだ。今日は約束通り早く帰るからな」
「待ってる」
「明日は王と王妃の下に顔を出すようにな。二人ともアレクに会いたいと言っていたぞ」
「仕事終わったらそうする」
ちらりと青年を見るサンムーン。
「ルークス。彼らは」
「アレクに告白した奴ら」
「ほう。俺のアレクに告白とはいい度胸」
剣を抜きながら青年を見るが、青年は走って逃げている。
冒険者を続けているだけあって危機だと感じたらしい。
アレクサンドラはしばらく青年の後ろ姿とサンムーンを交互に眺めてから微笑む。
「サンムーン、やっぱりかっこいい」
「そうか」
嬉しそうに笑うサンムーン。
先に家に帰ることにして使用人達とパーティの用意をする。
今日は結婚記念日。
アレクサンドラはお祝いに用意していた逆鱗に加工した石のペンダントを贈る。
石は精霊に頼み、アレキサンドライトのクズ石があるところを探してもらい、買い取った物。
その石を職人に頼んで加工してもらった。
そしてその職人はサンムーンが武人と聞いてペンダントを勧めてくれた。
サンムーンの逆鱗とお揃いだと喜んでいる。
そして最後に今一度、精霊に頼み、加護を詰めた。
「無事、に、帰ってきてほしい」
「アレクと同じ瞳の石だな。きれいな石だと思ったよ」
微笑むサンムーンに、アレクサンドラは嬉しいと微笑み返す。
その後、竜人族と異種族が結婚する時、異種族から石の鱗を贈る風習が出来たという。
精霊の愛し子は今日も竜人国で、優しさと愛情に包まれて過ごしている。
アレクサンドラは市場のお店に立ち、店主の奥さんと果物を売る。
そして時間が来るとお駄賃をもらって退散。
「なぁ、アレク」
お迎えに来た成長期に入ったルークスと串焼きを食べながら聞かれる。
「お小遣い貰ってるんだろ?おばさんの手伝いをする理由ないだろ」
今回お店を手伝っているのには理由がある。
一つは店主がぎっくり腰に合うのを目の前で見てしまったことで治るまで手伝いたいと申し出た。
力仕事では全く役に立たなかったけれど、計算はなんとかできた。
もう一つは欲しいものがあり、その足しにしようと決めたため。
店主も明日には戻ってこれるとのことなので明日で終わり。
欲しいものは今日家に届く。
その説明をする。
「ほしいもの?」
聞かれるが内緒と笑って誤魔化す。
市場を通り過ぎている間に、すれ違う人族を、見る。
「人、多い」
「あぁ。ここ最近、友好的になってきたからだろ?」
そういえば最近、勇者が魔族たる異種族への見方を変えたという噂をサンムーンの兄、魔道士である義兄様が言っていたのを思い出す。
あの再教育と言っていた勇者はどうなったのかと考えて、恐怖に陥りそうになり頭を振るう。
きっと、故郷に戻って人のために働いているのだろうと考える。
その噂の勇者はきっと産みの父母と同じような考えの持ち主なのだろう。
「観光地になってるらしいぜ」
皆仲良しなんだ。と頷いていれば、目の前に冒険者風の青年がいる。
「なぁ。君人族だろ?可愛いよね。俺と付き合わない?」
アレクサンドラは左右に首を振る。
「こいつは結婚してるぞ」
庇うようにルークスが告げれば青年が見てくる。
「竜人族とか?寿命も価値観も違うのにか?」
「それでも、たくさん、思い出残すって決めた」
青年は不満そうに見つめてくる。
何かを告げようとするがアレクサンドラはたった一言で切り捨てる。
「それに、どんな存在よりかっこいい」
曇りなき純粋無垢な瞳に、青年がたじろぐ。
「アレク」
駆け寄ってくるサンムーン。
アレクサンドラは手を振る。
「お仕事?」
「あぁ。見回りだ。今日は約束通り早く帰るからな」
「待ってる」
「明日は王と王妃の下に顔を出すようにな。二人ともアレクに会いたいと言っていたぞ」
「仕事終わったらそうする」
ちらりと青年を見るサンムーン。
「ルークス。彼らは」
「アレクに告白した奴ら」
「ほう。俺のアレクに告白とはいい度胸」
剣を抜きながら青年を見るが、青年は走って逃げている。
冒険者を続けているだけあって危機だと感じたらしい。
アレクサンドラはしばらく青年の後ろ姿とサンムーンを交互に眺めてから微笑む。
「サンムーン、やっぱりかっこいい」
「そうか」
嬉しそうに笑うサンムーン。
先に家に帰ることにして使用人達とパーティの用意をする。
今日は結婚記念日。
アレクサンドラはお祝いに用意していた逆鱗に加工した石のペンダントを贈る。
石は精霊に頼み、アレキサンドライトのクズ石があるところを探してもらい、買い取った物。
その石を職人に頼んで加工してもらった。
そしてその職人はサンムーンが武人と聞いてペンダントを勧めてくれた。
サンムーンの逆鱗とお揃いだと喜んでいる。
そして最後に今一度、精霊に頼み、加護を詰めた。
「無事、に、帰ってきてほしい」
「アレクと同じ瞳の石だな。きれいな石だと思ったよ」
微笑むサンムーンに、アレクサンドラは嬉しいと微笑み返す。
その後、竜人族と異種族が結婚する時、異種族から石の鱗を贈る風習が出来たという。
精霊の愛し子は今日も竜人国で、優しさと愛情に包まれて過ごしている。
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