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白蛇
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大神の元へ祓の神と向う。
到着早々、神域内を歩いているこらえに気付く。
「あ。こらえ!」
山神が飛び出し抱きしめる。
「よかった。ここに居たのか」
「山神様。すいません。いまちょっと頼まれごとをしておりまして」
微笑み、安心するようにと山神の瞳を覗き込む。
「事情等はもう少々あとでお話してもよろしいでしょうか」
「わかった」
渋々離れる山神はこらえを目で追う。
「ハライ様。覚えておいてください。今から行うことは貴方にもできることです」
「え?あ。うん」
こらえはふっくりと神域内を歩き出す。
ゆっくりと、まるでそのことに意味があるように。
神域は会合などで訪れる場所ではあるが、それ以外で訪れても何も存在していない。
大神の家もこの場にないのか見えないのかも判断つかないほど強い力で守られている場所。
その場をこらえが歩くたびに空気が変わっていく。
一体何が起こっているのかと山神疑問に思う。
だが祓の神は驚いたようにその姿を見つめている。
神域の空気が清らかになっていくと言うのだけは理解できるのだが、我が子の目には何が写っているのかと不思議に思う。
こらえが立ち止まり、清らかな空気が一瞬で淀み、重くなる。
やばいと脳内で警告が鳴り響き、穢れ、もしくは祟り神だろう。
ならばとこらえを見る。
目の前に現れる人形に祟り神だとこらえを守ろうと身を乗り出し、祓の神に止められる。
「祓。何を」
微笑むこらえが口を開く。
「山神の嫁さん!」
「およめ、さん」
声にそちらを見れば友人である予言と、雨神。
「逃げろ」
雨神が叫び、雨が祟り神に降り注ぎ、その場にぬかるみを作る。
足が取られたのか動きが弱まる。
「予言。逃げ道を。祓の!お前も」
「あれ?」
予言の神が首を捻る。
「かしこみ、かしこみ、物申します」
響くこらえの声が祟り神の動きを留める。
「八百万の神々の名ある一柱とお見受けいたします」
静かに響く声は祟り神と神域の空気へと溶け込んでいく。
祓の神は響く言葉に、何故親が世話した幼子が詞を司る神になったのか、少しだけ理解する。
それだけ今発する詞に重みを感じる。
「恨み辛みあるかと存じております」
しばらくすると祟り神は空気に溶けるように消えていく。
しばらく頭を下げていたこらえは歩き出す。
重くなっていた空気が再び清らかなものへと変化する。
「お前の嫁。あの祟り神を言葉だけで鎮めやがったぞ」
何時からいたのか風神が驚いたように叫ぶ。
「いつ来た」
「お前の嫁さん探してたに決まってるだろう?後でまた仕事とめぶに怒られるけどな」
しばらく歩いていたこらえは一息吐くと山神たちを見てから一言。
「皆様。いらっしゃったんですね」
預言の神はこの場面を知っていたのか頷く。
「私、は、大神に、これの説教終了報告」
「これ言うなよ!師匠にバラしやがって。おかげであいつに告白しなきゃいけなくなったじゃないか」
雨神は理不尽だと半泣き。
風神は手を振りながら告げる。
「俺は嫁さんの気配辿って」
「怒りそうですね」
「一筆書いてくんない?めぶに」
「そうしますね」
こらえは苦笑していれば、眷属に身をやどした大神が出てくる。
到着早々、神域内を歩いているこらえに気付く。
「あ。こらえ!」
山神が飛び出し抱きしめる。
「よかった。ここに居たのか」
「山神様。すいません。いまちょっと頼まれごとをしておりまして」
微笑み、安心するようにと山神の瞳を覗き込む。
「事情等はもう少々あとでお話してもよろしいでしょうか」
「わかった」
渋々離れる山神はこらえを目で追う。
「ハライ様。覚えておいてください。今から行うことは貴方にもできることです」
「え?あ。うん」
こらえはふっくりと神域内を歩き出す。
ゆっくりと、まるでそのことに意味があるように。
神域は会合などで訪れる場所ではあるが、それ以外で訪れても何も存在していない。
大神の家もこの場にないのか見えないのかも判断つかないほど強い力で守られている場所。
その場をこらえが歩くたびに空気が変わっていく。
一体何が起こっているのかと山神疑問に思う。
だが祓の神は驚いたようにその姿を見つめている。
神域の空気が清らかになっていくと言うのだけは理解できるのだが、我が子の目には何が写っているのかと不思議に思う。
こらえが立ち止まり、清らかな空気が一瞬で淀み、重くなる。
やばいと脳内で警告が鳴り響き、穢れ、もしくは祟り神だろう。
ならばとこらえを見る。
目の前に現れる人形に祟り神だとこらえを守ろうと身を乗り出し、祓の神に止められる。
「祓。何を」
微笑むこらえが口を開く。
「山神の嫁さん!」
「およめ、さん」
声にそちらを見れば友人である予言と、雨神。
「逃げろ」
雨神が叫び、雨が祟り神に降り注ぎ、その場にぬかるみを作る。
足が取られたのか動きが弱まる。
「予言。逃げ道を。祓の!お前も」
「あれ?」
予言の神が首を捻る。
「かしこみ、かしこみ、物申します」
響くこらえの声が祟り神の動きを留める。
「八百万の神々の名ある一柱とお見受けいたします」
静かに響く声は祟り神と神域の空気へと溶け込んでいく。
祓の神は響く言葉に、何故親が世話した幼子が詞を司る神になったのか、少しだけ理解する。
それだけ今発する詞に重みを感じる。
「恨み辛みあるかと存じております」
しばらくすると祟り神は空気に溶けるように消えていく。
しばらく頭を下げていたこらえは歩き出す。
重くなっていた空気が再び清らかなものへと変化する。
「お前の嫁。あの祟り神を言葉だけで鎮めやがったぞ」
何時からいたのか風神が驚いたように叫ぶ。
「いつ来た」
「お前の嫁さん探してたに決まってるだろう?後でまた仕事とめぶに怒られるけどな」
しばらく歩いていたこらえは一息吐くと山神たちを見てから一言。
「皆様。いらっしゃったんですね」
預言の神はこの場面を知っていたのか頷く。
「私、は、大神に、これの説教終了報告」
「これ言うなよ!師匠にバラしやがって。おかげであいつに告白しなきゃいけなくなったじゃないか」
雨神は理不尽だと半泣き。
風神は手を振りながら告げる。
「俺は嫁さんの気配辿って」
「怒りそうですね」
「一筆書いてくんない?めぶに」
「そうしますね」
こらえは苦笑していれば、眷属に身をやどした大神が出てくる。
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