上 下
23 / 48
鎮る人

8

しおりを挟む
詞の神は目の前の、祓の神おとうとの手を握っている線の細い子供を見る。
しばらく眺めてから、ポチがしょうがないなぁと子供に近づく。
わふぅと愛想よく鳴きながら近づけば、びくりと手を離す。

ポチはポチで愛らしい姿なのにと驚いて固まる。
自分で愛らしいって思ってんのかと心で突っ込む。
「おい。ハライの。起きてんだろ」
声をかけて体を起こさせる。
「山の神とお嫁さん呼んできてくれ」
「えー。僕は」
「飴やるから行ってこい」
飴を渡せばやりぃと喜んで走っていく。
相変わらず食べ物に
多分あの二人のことだから気づいてて、あえて出てこないのだろう。
二人で食後のお茶飲みを優先させているだけだが。

「始めまして。詞の神です」
びくりと反応しながら、それでもこちらを見てくる。
「かみ様、ふえた」
その瞳を何処かで見たことがある気がして見つめる。

「かみ様」
「こっちはポチです。俺の眷属であり友達です」
「けんぞく」
しばし眺めて恐る恐る手を出して撫でている。
どこで見たのだろうと悩んでいれば山神とこらえ・・・がやってくる。
「よく来たな」
「お帰りなさい」
「子供を預かっていると聞いたので顔を出しに来ました」
「ハライが、連れてきた候補ですね。元気になるまでは家にいることになりました」
「あぁ」
ポチはここ撫でるのが好きだと祓の神が教えている。


仲良さそうだと祓の神の頭を撫でてから二人を見る。
「山の神。彼の目って普通じゃないですよね」
「え?」
驚く山の神にこらえ・・・は彼を呼ぶ。
「えって」
「怖がるから近づかないようにしていたのだが」
相変わらずだと苦笑して彼の目を見る。
「特別って何が」
詞の神が不思議そうに見てくるので見つめ返す。
「どこかで聞いたような気もするんですか」
こらえ・・・は心配そうに彼を覗き込む。
「彼らはどう見えるのか伺っていいですか?」
「かみ様?きらきら。やまかみ様は黒ときらきら半分。でも今はみんな人、です」
首を捻るため、こらえ・・・は頭を撫でている。
「変?」
「貴方の才能です」
優しい笑顔にそっかと頷く。
「もしキラキラ光るのを見かけたらこっそりでいいので教えてくれますか?」
「どうして?」
「あなたの見る世界を知りたいですから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!

彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど… …平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!! 登場人物×恋には無自覚な主人公 ※溺愛 ❀気ままに投稿 ❀ゆるゆる更新 ❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

風邪ひいた社会人がおねしょする話

こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。 一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

家の中で空気扱いされて、メンタルボロボロな男の子

こじらせた処女
BL
学歴主義の家庭で育った周音(あまね)は、両親の期待に応えられず、受験に失敗してしまう。試験そのものがトラウマになってしまった周音の成績は右肩下がりに落ちていき、いつしか両親は彼を居ないものとして扱う様になる。  そんな彼とは裏腹に、弟の亜季は優秀で、両親はますます周音への態度が冷たくなっていき、彼は家に居るのが辛くなり、毎週末、いとこの慶の家にご飯を食べに行く様になる。  慶の家に行くことがストレスの捌け口になっていた周音であるが、どんどん精神的に参ってしまい、夜尿をしてしまうほどに追い詰められてしまう。ストレス発散のために慶の財布からお金を盗むようになるが、それもバレてしまい…?

嫌われ悪役令息に転生したけど手遅れでした。

ゆゆり
BL
俺、成海 流唯 (なるみ るい)は今流行りの異世界転生をするも転生先の悪役令息はもう断罪された後。せめて断罪中とかじゃない⁉︎  騎士団長×悪役令息 処女作で作者が学生なこともあり、投稿頻度が乏しいです。誤字脱字など等がたくさんあると思いますが、あたたかいめで見てくださればなと思います!物語はそんなに長くする予定ではないです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...