92 / 102
新しい神
7
しおりを挟む
無事に詞の神も領地を認められたため山神と他の神々へ挨拶を行う。
「詞の神です」
新しい神だから色々聞いてくるが答えにくいことや、まだよくわかっていないこともあるため戸惑う。
その度に山神がフォローしてくる。
「ありがとうございます」
「今後はお前が一人でやることだからな。今のうちに覚えておけ」
「はい」
笑顔で頷く。
「そういえば山の神殿」
粘っこい神に当たったと山神は顔に出している。
そこは見習わないでおこうと思う。
「何か御用か?糸の」
「なぁに。穢ない山の神殿が育てた子がどれほど穢なくなっているのか気になってなぁ」
「残念ながらそこんじょそこらのひよっこ神よりはまともな神になったようだぞ」
肩を叩かれ、褒められたと心の中で舞い上がる。
「大神の保証付きだ」
「はっ。媚を売るだけのくせに。貴殿の嫁も哀れなものよ。我が下に来れば指物とて好きなだけ作らせてやるし、好きなだけ着飾ってやるのに。全く哀れな」
「己が嫁は」
山神は怒りを耐えているのに気づき、慌てて前に出る。
「山の神のお嫁さんはとてもとても幸せです!指物だって体調に気を使いながら作れますし、どんなものを作ったって山のは大喜びで鑑賞会を開きます。出掛けるときは必ずお見送りをしていましたし、縁側でひたすら待っていたり、満面の笑みで迎えていました。むしろ山のが、いないほうが不幸せです」
ひたすら幸せそうなこらえを思い出して言葉を紡ぐ。
「嫉妬の言葉であのお方を縛り付けないでください」
「嫉妬だと!この生意気な新入りのくせに」
「ほぉ?目上の新入りじゃなきゃあ生意気言ってもいいんだな?」
どこからともなく、気配もなく現れた風神が肩を組みながらやってくる。
「あ、山の。他のが弟子たち連れて待ってるから先行ってて。こいつとはちょーーーーーーーーとだけお話してから行くから」
「そうか。では甘えよう」
山神に手を掴まれて連れて行かれる。
「ちょ、ま、おい。かぜ、の」
「大丈夫さ。すぐ終わるから」
後ろから悲鳴混じりの叫びが聞こえるが気にしないでおく。
「己の友神の弟子たちを紹介しておく。歳も場所も近いだろうからな」
うんと微笑む。
家へと帰れば縁側で眠っているこらえ。
木霊が毛布を持ってきているのに気づいて山神は呆れながらも抱き上げている。
「相変わらずですね」
「あぁ。もう行くのだろう?」
「行かないとずるずると先延ばしにしちゃいそうですから」
苦笑しながら告げれば乱暴に頭を撫でられる。
「こらえがお弁当を作っているそうだ。持っていきなさい。付いた当初は何も食べたくなくなろうだろうが」
「わかった!」
お世話になりましたと改めて頭を下げる。
山神の家に似せた家を見つめてから一息。
家から持ってきた布団を見てから適当に広げる。
「疲れたぁ」
ポチは心配そうに覗き込んで来るので頭を撫でる。
「今日はもう」
寝ようかと思ったがポチがお弁当を向けてくるのに気づいて、食べなきゃと身体を起こす。
開けたお弁当は至って変わりのない中身。
何時ものお弁当を口に運ぶ。
「うん。おいしい」
ポチにもと一口向ければ嬉しそうに口にする。
「これからよろしくな」
改めて頭を撫でる。
もし、詞を紡ぎ、人に示す事ができるならば、まずは山神とその嫁を伝えれるような物語が伝わっていけばいいのにと夢現に考える。
庭先に顔を出す新しい眷属候補には今はまだ気づかないまま夜が更けて行く。
「詞の神です」
新しい神だから色々聞いてくるが答えにくいことや、まだよくわかっていないこともあるため戸惑う。
その度に山神がフォローしてくる。
「ありがとうございます」
「今後はお前が一人でやることだからな。今のうちに覚えておけ」
「はい」
笑顔で頷く。
「そういえば山の神殿」
粘っこい神に当たったと山神は顔に出している。
そこは見習わないでおこうと思う。
「何か御用か?糸の」
「なぁに。穢ない山の神殿が育てた子がどれほど穢なくなっているのか気になってなぁ」
「残念ながらそこんじょそこらのひよっこ神よりはまともな神になったようだぞ」
肩を叩かれ、褒められたと心の中で舞い上がる。
「大神の保証付きだ」
「はっ。媚を売るだけのくせに。貴殿の嫁も哀れなものよ。我が下に来れば指物とて好きなだけ作らせてやるし、好きなだけ着飾ってやるのに。全く哀れな」
「己が嫁は」
山神は怒りを耐えているのに気づき、慌てて前に出る。
「山の神のお嫁さんはとてもとても幸せです!指物だって体調に気を使いながら作れますし、どんなものを作ったって山のは大喜びで鑑賞会を開きます。出掛けるときは必ずお見送りをしていましたし、縁側でひたすら待っていたり、満面の笑みで迎えていました。むしろ山のが、いないほうが不幸せです」
ひたすら幸せそうなこらえを思い出して言葉を紡ぐ。
「嫉妬の言葉であのお方を縛り付けないでください」
「嫉妬だと!この生意気な新入りのくせに」
「ほぉ?目上の新入りじゃなきゃあ生意気言ってもいいんだな?」
どこからともなく、気配もなく現れた風神が肩を組みながらやってくる。
「あ、山の。他のが弟子たち連れて待ってるから先行ってて。こいつとはちょーーーーーーーーとだけお話してから行くから」
「そうか。では甘えよう」
山神に手を掴まれて連れて行かれる。
「ちょ、ま、おい。かぜ、の」
「大丈夫さ。すぐ終わるから」
後ろから悲鳴混じりの叫びが聞こえるが気にしないでおく。
「己の友神の弟子たちを紹介しておく。歳も場所も近いだろうからな」
うんと微笑む。
家へと帰れば縁側で眠っているこらえ。
木霊が毛布を持ってきているのに気づいて山神は呆れながらも抱き上げている。
「相変わらずですね」
「あぁ。もう行くのだろう?」
「行かないとずるずると先延ばしにしちゃいそうですから」
苦笑しながら告げれば乱暴に頭を撫でられる。
「こらえがお弁当を作っているそうだ。持っていきなさい。付いた当初は何も食べたくなくなろうだろうが」
「わかった!」
お世話になりましたと改めて頭を下げる。
山神の家に似せた家を見つめてから一息。
家から持ってきた布団を見てから適当に広げる。
「疲れたぁ」
ポチは心配そうに覗き込んで来るので頭を撫でる。
「今日はもう」
寝ようかと思ったがポチがお弁当を向けてくるのに気づいて、食べなきゃと身体を起こす。
開けたお弁当は至って変わりのない中身。
何時ものお弁当を口に運ぶ。
「うん。おいしい」
ポチにもと一口向ければ嬉しそうに口にする。
「これからよろしくな」
改めて頭を撫でる。
もし、詞を紡ぎ、人に示す事ができるならば、まずは山神とその嫁を伝えれるような物語が伝わっていけばいいのにと夢現に考える。
庭先に顔を出す新しい眷属候補には今はまだ気づかないまま夜が更けて行く。
10
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
からっぽを満たせ
ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。
そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。
しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。
そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
【完結】私立秀麗学園高校ホスト科⭐︎
亜沙美多郎
BL
本編完結!番外編も無事完結しました♡
「私立秀麗学園高校ホスト科」とは、通常の必須科目に加え、顔面偏差値やスタイルまでもが受験合格の要因となる。芸能界を目指す(もしくは既に芸能活動をしている)人が多く在籍している男子校。
そんな煌びやかな高校に、中学生まで虐められっ子だった僕が何故か合格!
更にいきなり生徒会に入るわ、両思いになるわ……一体何が起こってるんでしょう……。
これまでとは真逆の生活を送る事に戸惑いながらも、好きな人の為、自分の為に強くなろうと奮闘する毎日。
友達や恋人に守られながらも、無自覚に周りをキュンキュンさせる二階堂椿に周りもどんどん魅力されていき……
椿の恋と友情の1年間を追ったストーリーです。
.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇
※R-18バージョンはムーンライトノベルズさんに投稿しています。アルファポリスは全年齢対象となっております。
※お気に入り登録、しおり、ありがとうございます!投稿の励みになります。
楽しんで頂けると幸いです(^^)
今後ともどうぞ宜しくお願いします♪
※誤字脱字、見つけ次第コッソリ直しております。すみません(T ^ T)
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる