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新しい神

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無事に詞の神も領地を認められたため山神と他の神々へ挨拶を行う。
「詞の神です」
新しい神だから色々聞いてくるが答えにくいことや、まだよくわかっていないこともあるため戸惑う。

その度に山神がフォローしてくる。
「ありがとうございます」
「今後はお前が一人でやることだからな。今のうちに覚えておけ」
「はい」
笑顔で頷く。

「そういえば山の神殿」
粘っこい神に当たったと山神は顔に出している。
そこは見習わないでおこうと思う。
「何か御用か?糸の」
「なぁに。きたない山の神殿が育てた子がどれほどきたなくなっているのか気になってなぁ」
「残念ながらそこんじょそこらのひよっこ神よりはまともな神になったようだぞ」
肩を叩かれ、褒められたと心の中で舞い上がる。
「大神の保証付きだ」
「はっ。媚を売るだけのくせに。貴殿の嫁も哀れなものよ。我が下に来れば指物とて好きなだけ作らせてやるし、好きなだけ着飾ってやるのに。全く哀れな」
「己が嫁は」
山神は怒りを耐えているのに気づき、慌てて前に出る。
「山の神のお嫁さんはとてもとても幸せです!指物だって体調に気を使いながら作れますし、どんなものを作ったって山のは大喜びで鑑賞会を開きます。出掛けるときは必ずお見送りをしていましたし、縁側でひたすら待っていたり、満面の笑みで迎えていました。むしろ山のが、いないほうが不幸せです」
ひたすら幸せそうなこらえ・・・を思い出して言葉を紡ぐ。
「嫉妬の言葉であのお方を縛り付けないでください」
「嫉妬だと!この生意気な新入りのくせに」
「ほぉ?目上の新入りじゃなきゃあ生意気言ってもいいんだな?」
どこからともなく、気配もなく現れた風神が肩を組みながらやってくる。
「あ、山の。他のが弟子たち連れて待ってるから先行ってて。こいつとはちょーーーーーーーーとだけお話してから行くから」
「そうか。では甘えよう」
山神に手を掴まれて連れて行かれる。
「ちょ、ま、おい。かぜ、の」
「大丈夫さ。すぐ終わるから」
後ろから悲鳴混じりの叫びが聞こえるが気にしないでおく。

「己の友神の弟子たちを紹介しておく。歳も場所も近いだろうからな」
うんと微笑む。


家へと帰れば縁側で眠っているこらえ・・・
木霊が毛布を持ってきているのに気づいて山神は呆れながらも抱き上げている。
「相変わらずですね」
「あぁ。もう行くのだろう?」
「行かないとずるずると先延ばしにしちゃいそうですから」
苦笑しながら告げれば乱暴に頭を撫でられる。
こらえ・・・がお弁当を作っているそうだ。持っていきなさい。付いた当初は何も食べたくなくなろうだろうが」
「わかった!」
お世話になりましたと改めて頭を下げる。


山神の家に似せた家を見つめてから一息。
家から持ってきた布団を見てから適当に広げる。
「疲れたぁ」
ポチは心配そうに覗き込んで来るので頭を撫でる。
「今日はもう」
寝ようかと思ったがポチがお弁当を向けてくるのに気づいて、食べなきゃと身体を起こす。
開けたお弁当は至って変わりのない中身。
何時ものお弁当を口に運ぶ。

「うん。おいしい」

ポチにもと一口向ければ嬉しそうに口にする。
「これからよろしくな」
改めて頭を撫でる。
もし、詞を紡ぎ、人に示す事ができるならば、まずは山神とその嫁を伝えれるような物語が伝わっていけばいいのにと夢現に考える。

庭先に顔を出す新しい眷属候補には今はまだ気づかないまま夜が更けて行く。

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