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新しい神

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初めての会合。
大神と久しぶりの再開。
隣にはもちろん、山神がいる。

次に来るときにはいないのだろうけれど、心強いと思う。

「お久しぶりでございます」
「息災だな。幼子が此処まで立派に育つとは。しかも新しい神と来たか」
「山の神そのお嫁さんに会わせていただいたからと感謝申し上げます」
できる限りこらえ・・・から教わった所作を真似る。
「良い、師匠となったか?」
「はい。よき師であり親でありました」
心から笑顔を向ける。
むしろこれ以上ないくらい優しい人たちだ。
親のいない自分を親の代わり以上に守ってくれた。
拗ねていた自分を見捨てなかった。
「名はもらったか?」
「はい。山の神からは真名を、そのお嫁さんからは「コトノハ」という名をいただきました」
「コトノハか」
響きが気に入ったのか嬉しそうに身を乗り出す。
「言葉を大切に、心からの言葉を言霊として、己の神力コトバが身を削らぬようにこれから先、良き言葉を紡いで生きていけるように」
「良き名だな。さて、山の神よ。貴様への褒美には子を授けようと思う」
山神が驚いたように大神を見る。
詞の神のまた山神を見てしまう。
「穢れも薄まっている今ならば問題ないだろう」
「それは、嫁にも聞かなければ」
「あぁ。お前さえ良ければとのことだ。まぁ、元より子をなせぬことを気にしておったからな」
「左様ですか」
「なぁに。今すぐにとはいかぬさ。良き魂を見つけたらまた声をかけよう。その頃から準備を始めれば良い。その間に子ではないものを授けるかもしれぬがそれはそれで一興だろう」
「承知しました」
山神は更に深く頭を下げる。



待っていた友神たちに一回目は終わったことを告げる。
「己と嫁の間に子をくれると言うのだ」
「あぁ。男同士でも大神がうまいこと調整して血の繋がりのある子供してくれるらしいな」
風神がさらりと告げる。
「己に、育てられるだろうか」
「なんかあったら僕らが助けてあげるよ」
海神の言葉に少しだけ嬉しくなる。
何時も彼らに救われてきたが今日ほど感謝した日はないだろう。
「山の。もちろん私達は協力します。ただそれを私達にではなくまずは嫁に伝えるべきでは?」
「あ、いや。とりあえず伝えるのが早いお前たちに伝えておこうと思ってな。帰ってからじっくり相談はするさ」
「ならいいのです」
「川のが珍しく調子がいいよ」
海神が驚いたと告げる。
「私のところでは今は幼子を預かれませんからね。せめてアカシの精神が成長するならば期待をしたでしょうが。今の所アカシにその兆しはありません」
「そうか」
「だからこそ、もし大神より相談されたらアカシとはじっくり話そうと思っています」
「そうだな」
山神は笑みを零す。
「けどよ。お前は子供を授かれて嬉しいのか?」
風神に問われて考える。
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