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交流会

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作業用の羽織を着て、木霊と焼き芋を焼く。
出来上がったいくつかを抱えて、まずは神々へと持っていく。
それからトウジと、芽吹に渡す。
「あ、これこれ!この味!家でやってもこの味にはどうしてもならないんだよね」
芽吹が美味しいとはしゃぐ。
「木霊君の火加減等がタイミングよく出していただけるからでしょうか」
木霊が追加分を持ってくる。
だがこらえ・・・の褒め言葉を聞き取り、嬉しそうに新たな芋を取りに向かう。
「木霊貸して」
「本人が望まぬなら断る」
風神が最後まで言う前に山神が切る。

こらえ・・・は安堵する。
「あれは己の嫁に大層なついている。譲る気はない」
「風神!」
「俺の眷属に木霊はいません」
しょんぼりと肩を落とす芽吹。
「えっとお土産に包ませてもらいますね」
こらえ・・・が告げればやったと大喜び。
「こらえ君、いい子!」
「こらえ様です」
トウジの睨みに一瞬で大人しくなる。
「いえ。僕は、むしろこらえ・・・と気軽に呼んでいただければ嬉しいです。大切な名前なので」
「じゃあ、こらえ君と呼んでも」
「大歓迎です」
トウジは小さくガッツポーズする。
僕もと叫ぶ芽吹に歓迎するこらえ・・・

芋を焼け終えた後はそれぞれに配って持って帰る。
「そうだ。山の。川の嫁におもちゃ持っていってもいいか?積み木とかならできると思うんだが」
風神が思い出したように告げる。
こらえ・・・は山神に問われる前に積み木を持ってくる。
「どうぞ。お譲りするつもりでしたから。角を削ってあります。幼い子でも楽しめるかと」
「いや。川の嫁は幼くない。ただ目が見えないだけだ。だから積み木とか触ってわかるのがいいんだよ」
「なるほど」
こらえ・・・は考え込む。
「川神には何度か良さげなおもちゃを見つけたらと言われていたからな。助かるよ」
「いえ。今日は僕も楽しかったです」
トウジが目ざとく見てしまい、抱きつく。
「また、また遊びに来ます。いえ。遊びに来てください。そのときは同じ職人としてかたりましょぉう」
森神に引きずられて連れて行かれる。

「あ、あの、山神様、こらえ君」
おずおずと芽吹が来ると頭を下げる。
「ごめんなさい。疑ってしまって、失礼なことして」
「いや。疑われるような言動をする風のが悪い」
「ハイハイ。俺が悪いんですよ。メブ。帰るぞ。明日は一日一緒に居られるからな」
嬉しそうに頷いて手を振って消える。
「山神様」
「なんだ?」
「お友達ができました。またお招きしたいです」
「そうだな。今度は川神や海神も一緒かもしれんぞ」
優しく頭を撫でる山神に、それは楽しみだと喜ぶ。
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