上 下
26 / 102
交流会

しおりを挟む
山神は食器の片付けを眷属に任せて食糧庫に向かう。
風神は渡した籠にいくつか入れていくが、途中で悩み止まる。
「あ、あれは!」
目ざとく見つけられた編み籠を示す。
舌打ちしながら籠を下ろす。
試作品で、無くなっても問題ない食料。
だがこらえ・・・が作ってくれた一品。
「嫁と木霊が作った干し芋だ。酒のつまみに合う」
「分けてくれ」
酒と言われて嬉しそうにする。
神の大半が酒好きだ。
風神も節制はしているがそれでも飲む方だ。
「少し残しておけよ。一応分けてはいるが。後、味についても聞きたいから、教えてくれ」
嬉しそうに籠へと入れていく。
こらえ・・・はいろんな人に話を聞きたいと言っていた。
海神にでも送ろうかと思っていたが、折角なので分けることにする。
「こんなもんかなぁ」
少ない量。
山神の視線に気づいてか笑う。
「まぁ、今度送ってもらうからこんなもんかなぁ。って」
「そうか」
外に出て、明るい日差しの中でじっと顔を見つめてくる風神。
「やっぱ薄くなってるな」
「己にはわからんな」
思わず頬に触れる。
ふと、触ったマフラーにこらえ・・・を思い出して笑みを零す。
「今度森の、連れてくるよ。あいつ詳しいだろう」
「そんな理由で連れて来ずとも、会合で見てるだろ」
「一応な。なんだかんだであいつが一番気にしているからな薄くなったのなら肩の荷降りるだろう」
それもそうか。
あれが気にする必要もないのにと苦笑する。
「あれも、あれの弟分ぐらいの胆力があれば良いと思うがなぁ」
「弟分はないからな!あんなん八つ当たりだからな」
「そうなのか」
庭を通ってこらえ・・・を探す。
時間もそろそろ経つので焼き芋ができていても良いだろう。
ついでに干物のことも伝えておくことにする。
「それに嫁同士でも会話させたいんだよ。ほら。結局此処って引きこもるしかないだろ?つまんねぇじゃん。お前以外は会わせたこともあるけど、他の紹介させたらきっと喜ぶと思うんだよ」
「ほう」
確かにこらえ・・・に木霊以外の友人を増やすのもいいかもしれない。
もっとたくさんの感情を見せてくれるかもしれない。
「後山のと浮気しているんじゃないかと疑われているので誤解をときたいです!」
本音が漏れていると突っ込む。
「お前に触るのできねぇのによ。何よりお前と恋仲とかぜってぇ、無理」
「同じく」
即答してから思わず想像して、お互いげんなりしてしまう。
「お前にも嫁ができたと伝えてもあまり信用してくれないからな」
「会わせろとは言われないのか?」
「あわせれないから疑い深くなってんの!」
納得したと頷く。
見た目のせいだとは問題点が現状自分なので口にはしないでおく。
神の加護があっても発狂しやすい者はいるのだ。
流石に友神の嫁まで発狂させるなど恐怖でしかない。
だから彼らの嫁には一度も会ったことはないし会うことはない。

「しかしお前の嫁ってすげぇな」
「何がだ」

むすりと風神を睨む。
「お前見て発狂しない」
「あぁ」
確かにと納得する。
「何者なんだろうな」
「こらえは、こらえ、だ」
「そうか」
「はい。呼びましたか?」
背後から声をかけられた二人は飛び退く。
驚いたのだろうこらえ・・・は手を伸ばしたまま固まっている。
「あ、すまぬ」
少し寂しげな表情に変わったことに山神は一目散に近づく。
「驚いてしまったのだ。反射的に、な」
「いえ。こちらこそ背後から声をかけてしまって申し訳ありません」
こらえ・・・の手を掴みながら告げれば、優しく微笑んでくる。
「それよりどうした?」
「お芋が焼けましたのでお声をかけに。家の中を通っていましたらお声がしたので」
「それで背後から現れたのか」
風神は久しぶりに驚いたと苦笑する。
「それで、僕を呼びましたか?」
案内しながら聞かれる。
どう説明しようか悩む。
「お前さ、山の見て、平気な理由ってわかるか?」
「えっと、山神様のは、お顔のお怪我が原因なんですよね」
「まぁな」
「ですと、怪我で発狂する理由は流石にわかりませんね」
申し訳ないと頭を下げる。
ただの怪我に発狂しないのは何故か、と問われてもこらえ・・・が答えを知るわけはない。
「そうか」
風神は、だよなと笑う。
些細な会話行いながら木霊と合流し、焼き芋をいくつか回収するとまたなと消えていく。
「山神様」
「賑やかすぎたか?」
「良いお友達で羨ましいです」
返答する前に木霊が自分がいると割り込んで来る。
あれをいい友と称するこらえ・・・こそいい子だと思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

弟枠でも一番近くにいられるならまあいいか……なんて思っていた時期もありました

大森deばふ
BL
ユランは、幼馴染みのエイダールが小さい頃から大好き。 保護者気分のエイダール(六歳年上)に彼の恋心は届くのか。 基本は思い込み空回り系コメディ。 他の男にかっ攫われそうになったり、事件に巻き込まれたりしつつ、のろのろと愛を育んで……濃密なあれやこれやは、行間を読むしか。← 魔法ありのゆるゆる異世界、設定も勿論ゆるゆる。 長くなったので短編から長編に表示変更、R18は行方をくらましたのでR15に。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

親友に流されて電マ責めされることになってしまった

冷凍湖
BL
あらすじ ノリに流されて親友に電マ責めされちゃうちょろい大学生の話。無理矢理っぽい感じからのハピエン 注意事項 電マ責め/♡喘ぎ/濁点汚喘ぎ/んほぉ系/潮ふき/本番なし/とにかく好きに書きました!地雷ある方ご自衛ください!

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた。

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエルがなんだかんだあって、兄達や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑でハチャメチャな毎日に奮闘するノエル・クーレルの物語です。 若干のR表現の際には※をつけさせて頂きます。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、改稿が終わり次第、完結までの展開を書き始める可能性があります。長い目で見ていただけると幸いです。 2024/11/12 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)

処理中です...