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アクアはメロパールとデートを楽しむ。
久々に同じ日に休みになったので気分転換にとメロパールが誘ってくれた。
市場はあいかわらず賑やかで特に何か買うわけでもないが、見ているだけでも楽しい。
海人族に伝わる物語が綴られた本。
海人族の伝統的な細工物。
その家に伝わる模様で作ったタペストリー。
中には精霊が気に入っているのか寛いでいるのもいる。
メロパールは気づいていないらしく示す。
「メロパール。あれ見てください。精霊が寛いでいますよ」
タペストリー上で眠っている精霊を示す。
「いないけど?」
不思議そうに聞かれているのにと見つめる。
精霊はこちらの視線に気づいたのか見つめ返してくると嬉しそうに笑う。
「でも、確かに精霊が気に入りそうな見事なタペストリーだよな」
意味を教えてくれる。
店主に断ってから嬉そうにタペストリーに触れれば精霊はじっとメロパールを見てそっぽを向く。
どうやら気に入られなかったらしい。
買うつもりはないのかメロパールは手を離している。
「それより飯だな」
嬉しそうにメロパールが手を握りあっちと示しながら向かう。
二人で些細な会話をして、時々買い食いをしながら歩く。
お腹も膨れて海へと来る。
楽しいと笑うメロパール。
その笑顔に抱き寄せる。
「もし、私に恋人や連れ合いが居たらメロパールはどうします?」
「アクアが望むところに行けばいい」
もし、どっちもを選んだら?
そう聞こうとすれば目が合う。
「相手が俺みたいな異種族を家族として受け入れてくれるなら一緒にいたいよ」
「そっか」
海人族は比較的、多夫、多妻も多いと聞く。
そういう話を聞くたびに自由だなぁと感じてしまう。
メロパールにだけ愛を注ぎたいのだが記憶を失っているので恋人がいない可能性も否めない。
最近は異種族に対する偏見も変わってきていると聞く。
だがそれも一部にすぎないともわかっている。
勇者が言えば受け入れられるが、長年染み付いた確執や、習慣は簡単には消えないだろう。
だが、勇者だけ言ってももしかしたら消されるかもしれない。
数十年前の赤目の勇者のように暗殺されるかもしれない。
ぞくりと背筋が凍る、記憶に残る知識が怖くも、悲しくも感じる。
何せ彼の妻となった聖女も、その子供も当時の勇者、つまり赤目の勇者の弟子が殺したのだと聞いている。
その孫弟子は後期から考えを変えて、今は引退させられたという噂は聞いたことある。
なんでこんな知識があるのかと悩む。
メロパールは近くにあった貝殻を拾っている。
「そうだ。明日、竜のおじさんと嫁さんが実家に来るんだって。会いたいから家に来てって言ってた」
「明日。授業があるので終わったら、行きます」
「だな」
メロパールは立ち上がり、どうする?と聞かれる。
何時もなら迷いなく一緒に帰ると言いたいところだが迷うこともあり、海を示す。
メロパールも明日の漁があるので早めに寝る必要がある。
今日はもう寝るだけだし、日が沈むのを見てからでもいいだろう。
「もうちょっと、海を見てから戻ります」
「わかった。気をつけて帰ってこいよ」
はいと笑顔を返して消えていく愛しい彼に手を振る。
それから海を見てから、振り返る。
夕日を見るとメロパールのオレンジ色の耳の愛らしさが浮かんでくる。
「この風景を綺麗だと思うので汚さないで欲しいんですよ」
メロパールは気づいていなかったらしい人の気配。
ぞろぞろと出てくる彼らによくもまぁ、海人族に気づかれなかったなぁと眺める。
久々に同じ日に休みになったので気分転換にとメロパールが誘ってくれた。
市場はあいかわらず賑やかで特に何か買うわけでもないが、見ているだけでも楽しい。
海人族に伝わる物語が綴られた本。
海人族の伝統的な細工物。
その家に伝わる模様で作ったタペストリー。
中には精霊が気に入っているのか寛いでいるのもいる。
メロパールは気づいていないらしく示す。
「メロパール。あれ見てください。精霊が寛いでいますよ」
タペストリー上で眠っている精霊を示す。
「いないけど?」
不思議そうに聞かれているのにと見つめる。
精霊はこちらの視線に気づいたのか見つめ返してくると嬉しそうに笑う。
「でも、確かに精霊が気に入りそうな見事なタペストリーだよな」
意味を教えてくれる。
店主に断ってから嬉そうにタペストリーに触れれば精霊はじっとメロパールを見てそっぽを向く。
どうやら気に入られなかったらしい。
買うつもりはないのかメロパールは手を離している。
「それより飯だな」
嬉しそうにメロパールが手を握りあっちと示しながら向かう。
二人で些細な会話をして、時々買い食いをしながら歩く。
お腹も膨れて海へと来る。
楽しいと笑うメロパール。
その笑顔に抱き寄せる。
「もし、私に恋人や連れ合いが居たらメロパールはどうします?」
「アクアが望むところに行けばいい」
もし、どっちもを選んだら?
そう聞こうとすれば目が合う。
「相手が俺みたいな異種族を家族として受け入れてくれるなら一緒にいたいよ」
「そっか」
海人族は比較的、多夫、多妻も多いと聞く。
そういう話を聞くたびに自由だなぁと感じてしまう。
メロパールにだけ愛を注ぎたいのだが記憶を失っているので恋人がいない可能性も否めない。
最近は異種族に対する偏見も変わってきていると聞く。
だがそれも一部にすぎないともわかっている。
勇者が言えば受け入れられるが、長年染み付いた確執や、習慣は簡単には消えないだろう。
だが、勇者だけ言ってももしかしたら消されるかもしれない。
数十年前の赤目の勇者のように暗殺されるかもしれない。
ぞくりと背筋が凍る、記憶に残る知識が怖くも、悲しくも感じる。
何せ彼の妻となった聖女も、その子供も当時の勇者、つまり赤目の勇者の弟子が殺したのだと聞いている。
その孫弟子は後期から考えを変えて、今は引退させられたという噂は聞いたことある。
なんでこんな知識があるのかと悩む。
メロパールは近くにあった貝殻を拾っている。
「そうだ。明日、竜のおじさんと嫁さんが実家に来るんだって。会いたいから家に来てって言ってた」
「明日。授業があるので終わったら、行きます」
「だな」
メロパールは立ち上がり、どうする?と聞かれる。
何時もなら迷いなく一緒に帰ると言いたいところだが迷うこともあり、海を示す。
メロパールも明日の漁があるので早めに寝る必要がある。
今日はもう寝るだけだし、日が沈むのを見てからでもいいだろう。
「もうちょっと、海を見てから戻ります」
「わかった。気をつけて帰ってこいよ」
はいと笑顔を返して消えていく愛しい彼に手を振る。
それから海を見てから、振り返る。
夕日を見るとメロパールのオレンジ色の耳の愛らしさが浮かんでくる。
「この風景を綺麗だと思うので汚さないで欲しいんですよ」
メロパールは気づいていなかったらしい人の気配。
ぞろぞろと出てくる彼らによくもまぁ、海人族に気づかれなかったなぁと眺める。
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