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アクアは五年前の記憶がない。
アクアという名前もメロパールとその家族が付けてくれた物だ。
傷だらけで海辺倒れていたらしく、そこを当時漁師見習いをしていたメロパールが拾ってくれた。
メロパールの家族は身元不明の、それも人間なのに、世話を焼いてくれた。
何故か記憶よりも心に刻まれた何かが魔族とは相容れないと告げていた。
なのに怪我が治るまで、此方で生活ができるように色々と整えてくれた。
理由を聞けば、血の繋がりはないが、人間が親戚にいるらしい。
その人間のお陰で魔族、いや、彼ら家族には忌避感があまりないらしい。
その人物と会わせたいらしいのだが、命に別状はないが体調がよろしくないらしく、その願いは未だかなっていない。
そんな家族の中でも一番世話を焼いてくれたのがメロパール。
何かと理由をつけては顔を見せに来てくれた。
そんな優しいメロパールのことを好きになるのは当然と言えば当然だった。
拾われた当初は、料理どころか、服の着替えすらままならなかった。
それは記憶を失っているとかではなく、誰かが世話を焼いていたのが当たり前と言わんばかりのポンコツ具合だった。
その割にはたくさんの知識はあったのだからちぐはぐと言えばその通りだとも思う。
知らなかったとはいえ、恥ずかしい限りである。
メロパールの家族はそんな自分に対して、諦めて放り出すことなく、根気よく教えてくれた。
メロパールの姉には戻ってくるたびに似合うからと女装させられたが自分よりはメロパールが似合う。
あの珊瑚に似た耳が、飾りのように見えて華やかに見える。
お陰で日常生活を送れるだけの能力は身に着けられた。
なので同棲を始めても家事は困らなかった。
食材を切り終えて一息。
「メロパール」
魚を調理中のメロパールに声をかける。
「もうちょっと」
満面の笑顔に愛らしいと見つめる。
それに合わせてスープやサラダを作る。
スープには、雑魚の出汁を使った魚のアラ汁。
ぶつ切りにした魚を入れてある。
今日のメインディッシュの魚はメロパールが美味しく調理してくれる。
バターで焼いた脂の乗った鮭のムニエル。
同じように調理しても全く味が違うのだから不思議である。
少し悔しいのだが、本人はそれを聞いて満足そうだった。
「出来た!」
満面に笑顔でお皿に盛り付けてる。
それに合わせてスープを用意してサラダと共に机に並べる。
すでに用意してあったパンを取りつつ食事を始めるメロパール。
その横で簡単に祈りを済ませてから、食事する。
度々メロパールの家族に突っ込まれる。
人族の祈り方か?とか、そこまで丁寧でなくともいいよ。とか色々と。
記憶がなくとも体が覚えていることで、やらないとどうも居心地が悪い気がする。
メロパールを見れば魚を口に運んでいる。
もうちょっとこうすれば。などと呟くのを見て、だから美味しくできるのかと納得せざる終えない。
その姿に、たまに調理した物を食べていたり同族食いかとか、違和感を覚える。
その疑問は多分だが失った記憶が関係しているのだろう。
聞けば十数年前までは調理はしていなかったらしい。
生魚などを好んでいたそうだ。
だがたった一人の人間がそれを変えたらしい。
そこから、調理方法が増えたそうだ。
その時代でなくてよかったと心から思う。
「生魚とかは無理ですね」
「美味しいのに」
ただの呟きに、不思議そうに返される。
生魚については個人で楽しんでもらい、その他は、植物油などであえたカルパッチョなどを特別に用意している。
匂いなどは新鮮なら臭わないのでいけるかと思ったが、何故か口に含もうとすると汗が出て、傍から見ていると青ざめてしまうそうだ。
何かあったのかなぁとメロパールたちは疑問に思っていた。
無理強いはされないので、今の所は克服の目処は立っていない。
精霊が目の前を通り過ぎていく。
比較的、海や水関係の精霊が多いなぁと見つめる。
「アクア。どうした?」
「あ、いえ。何でもありません」
なぜか精霊が見えることだけは口にはしてはいけないと黙っている。
その点だけは途轍もない罪悪感がある。
アクアという名前もメロパールとその家族が付けてくれた物だ。
傷だらけで海辺倒れていたらしく、そこを当時漁師見習いをしていたメロパールが拾ってくれた。
メロパールの家族は身元不明の、それも人間なのに、世話を焼いてくれた。
何故か記憶よりも心に刻まれた何かが魔族とは相容れないと告げていた。
なのに怪我が治るまで、此方で生活ができるように色々と整えてくれた。
理由を聞けば、血の繋がりはないが、人間が親戚にいるらしい。
その人間のお陰で魔族、いや、彼ら家族には忌避感があまりないらしい。
その人物と会わせたいらしいのだが、命に別状はないが体調がよろしくないらしく、その願いは未だかなっていない。
そんな家族の中でも一番世話を焼いてくれたのがメロパール。
何かと理由をつけては顔を見せに来てくれた。
そんな優しいメロパールのことを好きになるのは当然と言えば当然だった。
拾われた当初は、料理どころか、服の着替えすらままならなかった。
それは記憶を失っているとかではなく、誰かが世話を焼いていたのが当たり前と言わんばかりのポンコツ具合だった。
その割にはたくさんの知識はあったのだからちぐはぐと言えばその通りだとも思う。
知らなかったとはいえ、恥ずかしい限りである。
メロパールの家族はそんな自分に対して、諦めて放り出すことなく、根気よく教えてくれた。
メロパールの姉には戻ってくるたびに似合うからと女装させられたが自分よりはメロパールが似合う。
あの珊瑚に似た耳が、飾りのように見えて華やかに見える。
お陰で日常生活を送れるだけの能力は身に着けられた。
なので同棲を始めても家事は困らなかった。
食材を切り終えて一息。
「メロパール」
魚を調理中のメロパールに声をかける。
「もうちょっと」
満面の笑顔に愛らしいと見つめる。
それに合わせてスープやサラダを作る。
スープには、雑魚の出汁を使った魚のアラ汁。
ぶつ切りにした魚を入れてある。
今日のメインディッシュの魚はメロパールが美味しく調理してくれる。
バターで焼いた脂の乗った鮭のムニエル。
同じように調理しても全く味が違うのだから不思議である。
少し悔しいのだが、本人はそれを聞いて満足そうだった。
「出来た!」
満面に笑顔でお皿に盛り付けてる。
それに合わせてスープを用意してサラダと共に机に並べる。
すでに用意してあったパンを取りつつ食事を始めるメロパール。
その横で簡単に祈りを済ませてから、食事する。
度々メロパールの家族に突っ込まれる。
人族の祈り方か?とか、そこまで丁寧でなくともいいよ。とか色々と。
記憶がなくとも体が覚えていることで、やらないとどうも居心地が悪い気がする。
メロパールを見れば魚を口に運んでいる。
もうちょっとこうすれば。などと呟くのを見て、だから美味しくできるのかと納得せざる終えない。
その姿に、たまに調理した物を食べていたり同族食いかとか、違和感を覚える。
その疑問は多分だが失った記憶が関係しているのだろう。
聞けば十数年前までは調理はしていなかったらしい。
生魚などを好んでいたそうだ。
だがたった一人の人間がそれを変えたらしい。
そこから、調理方法が増えたそうだ。
その時代でなくてよかったと心から思う。
「生魚とかは無理ですね」
「美味しいのに」
ただの呟きに、不思議そうに返される。
生魚については個人で楽しんでもらい、その他は、植物油などであえたカルパッチョなどを特別に用意している。
匂いなどは新鮮なら臭わないのでいけるかと思ったが、何故か口に含もうとすると汗が出て、傍から見ていると青ざめてしまうそうだ。
何かあったのかなぁとメロパールたちは疑問に思っていた。
無理強いはされないので、今の所は克服の目処は立っていない。
精霊が目の前を通り過ぎていく。
比較的、海や水関係の精霊が多いなぁと見つめる。
「アクア。どうした?」
「あ、いえ。何でもありません」
なぜか精霊が見えることだけは口にはしてはいけないと黙っている。
その点だけは途轍もない罪悪感がある。
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