精霊の神子は海人族を愛でる

林 業

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今日も平穏な一日だった。
メロパールは今日もそんなことに感謝しつつ漁師の仕事を終えて、寄り道をする。
道中にある海人族が崇める海の精霊を祀る教会を覗けば子供たちが元気に挨拶をしながら走って行く。

子どもたちを見送っていたアクアがこちらに気づいて微笑んでくる。
細目でそれでも笑顔が似合う自分の恋人。
その表情に照れてしまい、草のようであり、その奇抜なヒレのような耳に思わず触れて掻く。

「お帰りなさい。今日は早かったですね」
「ただいま。今日は波が高くなりそうだったから早々に見切り付けてきた」
「そうですか。後片付けに少し時間がかかるので」
「手伝うよ」

同棲相手のアクアの言葉を遮って告げる。
一瞬、驚いたように目を開き、美しい海色の碧眼の瞳を見せる。
しかしすぐに微笑んでお礼をくれる。

彼は優秀で、過去の記憶がない代わりに知識だけは残っていた。
そのため近所の学校に通えない子供たちを定期的に集めてば教師の真似事をしている。

自分とは違う耳や肌質に、オレンジの鱗混じりの肌に触れて、彼は種族が違う。と振り払い、手伝う。
学ぶことが好きじゃない自分にとっては出来た恋人だ。

海人族にはあまり結婚という概念はないため、同棲という形が多く存在している。

中にはメロパールの親のように海人族の祀る海の精霊である教会に頼み、手続きに乗ったものもいる。
メロパールの親は異種族婚らしく、そうしないと周囲からの反発を食らいやすいからだそうだ。

国の友好のために結婚したのだと聞いている

兄と姉、そして妹の四人兄妹。
姉はその異種族婚の子供にしては珍しく両方の良さを受け継いだ海のドラゴンと呼ばれる混血であった。

そのため、家を継ぐのは兄ということで姉は早々に冒険者となって今尚世界を旅している。
時々帰ってきてはアクアの勉強会に割り込み、冒険の話を子供たちに聞かせる。
そのたびに勉強が遅れたり、冒険者について聞かれて困っている。
なら姉を止めればいいのにと思わずにはいられないが、子どもたちが喜ぶので、と、頑なな反対はしていないらしい。
せめて、時間を教えてくれたらと提言するのだが自由奔放に慣れた姉は窮屈らしい。
自分からも何度も注意したが直らないようだ。


自分は漁師として、食うに困らない程度に働いている。
彼はほぼ、ボランティアで子どもたちへの教育を施す。
多少なりともお金は出ているが子供のお小遣いにも満たない。
本人も多くは取らず、代わりに子どもたちの親が育てた農作物などの収穫物を分けてもらっていることが多い。



片付けをして、そして箱に詰まった作物を持とうとするので代わりに持つ。
人族は他種族に比べてひ弱な部分がある。
このぐらいは自分には軽いのだが、彼はよろける。
そんな危ないことさせれない。

それを持って家へと帰る。
今日あったこと一方的に話をし、アクアは優しい笑顔で聞いてくれる。
こちらから聞けば、子供たちに何を教えたのか。
子どもたちがどれほど可愛かったかを教えてくれる。

借りている家へとのんびり話をしながら向かう。
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