愛鳩屋烏

林 業

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そして成人

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カラスとタナカはベリーのケーキを口に運ぶ。
昨日買っていたのだが、カラスの姉の一件で職場の冷蔵庫に置きっぱなしにしていた。
慌てて今日の夜持って帰ってきた。

生クリームでなくて良かったと思う。
「オオカミさん」
「んー?」
カラスがこちらを見てから、顔を近づけて頬を舐めとる。
「ソースがついてたよ」
「な、だったら口で言えよ。口で」
慌てて口周拭きつつも顔が赤くなるのがわかりつつもケーキを口に運ぶ。
「タナカ君がケーキ買ってきてくれるって聞いてからとりあえず顔につけたら舐めようと思ってました。オオカミさん。きれいに食べるのに何故かお弁当つけてるからね」
タナカは気をつけようと口に運ぶ。
「あのな」
「オオカミさん」
「何?」
「俺は興味はそこまでないのですが生クリームプレイというのに興味は?」
「いや。食材もったいないじゃん。え?やりたいの?っていうかなんで敬語?」
「昨日頭からなかなか離れなかっただけ。もう大丈夫」
「何で?」
「だって離れなかった!」
ドヤ顔を決めるカラスに牽制する。
「カラスの母親が昨日検診で来て、子供写真どうぞって置いていったんだけど」
「あんの母親がぁ」
「小一時間ほど検診の合間に小さい頃はね。って話をして帰っていったんだけど、聞く?」
「勘弁してください。そして迷惑かけてすいません。っていうか、母さんってオオカミさんのところの病院に通ってたの?」
「うちはご実家周辺も含めて大きいところだから。検診とかは結構いろんなところから来てるからじゃない?元々一ヶ月前から予約してたみたいだ」
「へー」
「内容とか聞かないのか?」
「必要なら姉経由で来るでしょ。オオカミさんから聞くわけないよ」
「聞かれても言わないけどな」
個人情報だからとぼそりと告げて、思い出したように話す。
「後、お父さんがヒサシで、お母さんがヨシコで、だからヒサヨシにしたって。女の子は燕。燕のように、いい家庭になってほしい。って。双子とは思わなかったとも。いい名付けだな」
「ありがとう。でも後で母さんにクレーム入れてやる。なんで俺が言う前に全部言ってるんだよ」
「休憩中でご飯種ながらだったけど、楽しかった」
「もうしわけない。そして俺がその楽しみを費やしたかった」
「はいはい。ところで」
「何?」
「流石に一気に五号サイズホールは流石に無理」
「俺も限界」
お互い二ピース食べたが限界とお互いまだ半分ほど残っているケーキを見る。
「おすそ分けか。冷蔵か」
「隣の人は?」
「確か男だった気がする。男は特に甘みの好みあるからな。かと言って、姉家族に持っていくには、ちょっと甘みが足りない」
「あぁ。甘党なんだっけ」
「大人だけで食べれなくない。で、終わると思う。子どもたちにはちょっと早い味。冷蔵して食べよう」
「ご両親とか」
「絶対いや。オオカミさんのとこは?」
「うちは、父親がこういうケーキはケーキじゃないって思ってる人で、かわりに母親が太る」
「へえ。ご挨拶のときは何がいいかな」
「高級そうなのは勘弁してくれ」
先手を打てばわかってるわかってると満面の笑顔。
顔はいいんだよなぁと眺める。
「見惚れてる?照れくさいなぁ」
「ほんと、顔だけはいいよな。発想が色々とアウトだけど」
「酷い!」
「作家ってそういうものか?」
「色々じゃない?十人十色ってやつ」
「そっか」
呑気に話をしてからケーキを冷蔵庫へ収めて、片付けを始める。
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