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そして成人
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車に乗せた双子がシートベルトを鬱陶しそうにしながら聞いてくる。
「おじちゃん。ママ。大丈夫?」
「僕らも病院行きたい」
「行ってもいいけど多分、夜遅くになるんだよね。それでも起きて大人しくしてられるなら来てもいいけど」
「だってママ」
「心配なの」
「命に別状はないし、迎えに来てほしいって言うぐらいだよ。手続きに時間がかかるかもしれないし俺らも詳しいことはわかってないからもしかしたら夜明けまでかかるかも。ご飯もお預けになるかも」
「今日のご飯。食べに行く約束してたのに」
「カレー用意してきたから」
ぷうと頬をふくらませる二人は、唐突にカレーと瞳を輝かせる。
「そう。美味しいご飯食べておじいさんおばあさんと寝て待ってたら直ぐだよ。ね。義兄さん」
「そ、そうだよ。ママだってカレー楽しみにしてたからね」
顔色は大丈夫に見えない。
夜でよかったと安心して実家に来る。
義兄が二人を降ろして実家の両親に挨拶をして二人を預ける。
その間に鍋を台所に運ぶ。
玄関へと戻れば二人が玄関で靴を脱いでしっかりと祖父母に挨拶をする。
「じゃ、姉さん迎えに行ってくるから。カレーは温め直してね」
「じーちゃん、ばーちゃん。よろしくお願いします」
二人が頭を下げる。
無言で写真を撮る父を横目に、義兄と病院に急ぐ。
先程から携帯から通知音がするが父母の孫かわいい写真だろう。
「しかしカレーを作っていたんだ。助かったよ」
「カレーは二日目が美味しいんだけどなぁ」
「拘るね」
「ちなみに父さんは辛口派。あえて甘口だけ置いてきたんですけど。あれ?なんか忘れてるような」
「どうかした?」
「父さんになんかするって。んー。ま、姉さんの一件が終わったらでいいか」
カラスは面倒だしと呟く。
「しかしヒサヨシ君。ごめんな」
「まぁ、義兄さんには学生時代からお世話になってます。今回はタナカ君も関わってるみたいですね」
「そっか。ツバメさん。大丈夫かな」
「タナカ君が命に別状はないって言ってたから大丈夫ですよ」
気楽な会話をしながら病院に着く。
受付で話をしていれば燕が来る。
「つ、つばめさぁああん」
義兄が飛び出し、抱きしめる。
「何がどうなったんだ。あ、あぁああ。ツバメさんの手に包帯が」
「ちょっと」
「義兄さん。うるさい」
カラスが言えば抱きついたまま黙る。
タナカが医者と来る。
「タナカ君。えっと」
「あ。担当医の五十嵐さん」
「あ。始めまして」
タナカの様子から、流石に不審者扱いはされたくないと名刺を取り出して連絡先と名前を示す。
「烏丸といいます。弟に当たります。あっちで騒いでいるのが」
「妻がお世話になりました。ツバメの夫です」
「で、姉さん。何があったの?」
姉は気まずそうにしながら、タナカと医者が代わりに話してくれる。
姉が帰っていたら突然見知らぬ男性に腕を切りつけられたそうだ。
帰宅中に通りがかったタナカが発見し病院へと来たそうだ。
幸いなことに神経などは傷つけておらず、ただ傷跡が残るかもしれないと言うこと。
病院からではなくタナから直接連絡があったのは本人が嫌がったから。
だからといって不審者に襲われた人間を一人で帰せれるわけもなく。
「その犯人は何処行った?ちょっととっ捕まえてくる」
「だから呼んでほしくなかったのよ」
重い溜め息の燕に、どうせバレるんだからと義兄は慰めている。
「タナカ君。警察には?」
「一応ね。全部話し終わって帰ったところ」
「こんなことなら警察に送ってもらえばよかったわ」
「ツバメさん。何を言い出すんだよ」
「ちなみに子どもたちは?」
「両親にカレーと一緒に預けてきた」
「なんですって!カレー。明日じゃなかったの!」
胸倉を掴まれるのだが、笑顔を向ける。
「両親に預けるついでに置いてきた。つまり姉さんが俺に犯人についての情報を」
「こうしちゃあいられないわ。帰るわよ」
胸倉を外して帰るわよと義兄を引っ張っていく。
「タナカ君。治療費は?」
「その辺諸々済」
「じゃあ、帰るか。お医者さんは。あ。お仕事。お疲れ様です。タナカ君は」
「帰るよ」
「じゃ、一緒に、送って行くよ」
医者の視線を気にして、知られているかは判断つかないので言葉を選ぶ。
「ひさ。早くしなさい」
「はいはい」
「何?お姉さん。カレー好きなの?」
「姉家族、母は甘口派」
「あぁ。そう。じゃあ、五十嵐。お先」
医者が見送り、車に乗る。
実家へと移動しつつ向かう。
「っていうか、あんた。よく父さんたちに連絡したわね」
「そりゃあ俺だってするよ。オレオレ詐欺にされたけど。名前名乗ったのによぉ」
「おじさまに色々と教えこまれてるのよ」
「俺が言うのもなんだけどあいっ変わらず仲良しだな」
「そうねぇ。なんだかんだでつるんでるあんたに言われたくないでしょうけど、仲良しよね」
等と他愛ない会話を続ける。
「そういえばタナカ君。今度お礼をしなきゃね。何がいいかしら。ひさのよしの昔の話とか、写真とかどうかしら」
「お礼は。当然のことしたので。で、ひさ、なんだって?」
タナカはカラスを見ればカラスは前を見続けている。
「あら。言ってないの?烏丸久良。カラスって名乗ってるのはヒサヨシって漢字が久しぶりに良いって書いてクロウって読めるからでもあるのよ」
「へー」
説明を受けたタナカにカラスに対して目を細めて見る。
「へぇ。言うことは?」
「姉さんの馬鹿ぁ。せっかく誕生日に言おうと思ったのに!」
「相手の好みだからって謎めく人間になろうとしてアホじゃないの?」
「いいじゃん。タナカ君。楽しそうだったんだから」
それは否定できないとタナカは聞かなかったことにする。
「おじちゃん。ママ。大丈夫?」
「僕らも病院行きたい」
「行ってもいいけど多分、夜遅くになるんだよね。それでも起きて大人しくしてられるなら来てもいいけど」
「だってママ」
「心配なの」
「命に別状はないし、迎えに来てほしいって言うぐらいだよ。手続きに時間がかかるかもしれないし俺らも詳しいことはわかってないからもしかしたら夜明けまでかかるかも。ご飯もお預けになるかも」
「今日のご飯。食べに行く約束してたのに」
「カレー用意してきたから」
ぷうと頬をふくらませる二人は、唐突にカレーと瞳を輝かせる。
「そう。美味しいご飯食べておじいさんおばあさんと寝て待ってたら直ぐだよ。ね。義兄さん」
「そ、そうだよ。ママだってカレー楽しみにしてたからね」
顔色は大丈夫に見えない。
夜でよかったと安心して実家に来る。
義兄が二人を降ろして実家の両親に挨拶をして二人を預ける。
その間に鍋を台所に運ぶ。
玄関へと戻れば二人が玄関で靴を脱いでしっかりと祖父母に挨拶をする。
「じゃ、姉さん迎えに行ってくるから。カレーは温め直してね」
「じーちゃん、ばーちゃん。よろしくお願いします」
二人が頭を下げる。
無言で写真を撮る父を横目に、義兄と病院に急ぐ。
先程から携帯から通知音がするが父母の孫かわいい写真だろう。
「しかしカレーを作っていたんだ。助かったよ」
「カレーは二日目が美味しいんだけどなぁ」
「拘るね」
「ちなみに父さんは辛口派。あえて甘口だけ置いてきたんですけど。あれ?なんか忘れてるような」
「どうかした?」
「父さんになんかするって。んー。ま、姉さんの一件が終わったらでいいか」
カラスは面倒だしと呟く。
「しかしヒサヨシ君。ごめんな」
「まぁ、義兄さんには学生時代からお世話になってます。今回はタナカ君も関わってるみたいですね」
「そっか。ツバメさん。大丈夫かな」
「タナカ君が命に別状はないって言ってたから大丈夫ですよ」
気楽な会話をしながら病院に着く。
受付で話をしていれば燕が来る。
「つ、つばめさぁああん」
義兄が飛び出し、抱きしめる。
「何がどうなったんだ。あ、あぁああ。ツバメさんの手に包帯が」
「ちょっと」
「義兄さん。うるさい」
カラスが言えば抱きついたまま黙る。
タナカが医者と来る。
「タナカ君。えっと」
「あ。担当医の五十嵐さん」
「あ。始めまして」
タナカの様子から、流石に不審者扱いはされたくないと名刺を取り出して連絡先と名前を示す。
「烏丸といいます。弟に当たります。あっちで騒いでいるのが」
「妻がお世話になりました。ツバメの夫です」
「で、姉さん。何があったの?」
姉は気まずそうにしながら、タナカと医者が代わりに話してくれる。
姉が帰っていたら突然見知らぬ男性に腕を切りつけられたそうだ。
帰宅中に通りがかったタナカが発見し病院へと来たそうだ。
幸いなことに神経などは傷つけておらず、ただ傷跡が残るかもしれないと言うこと。
病院からではなくタナから直接連絡があったのは本人が嫌がったから。
だからといって不審者に襲われた人間を一人で帰せれるわけもなく。
「その犯人は何処行った?ちょっととっ捕まえてくる」
「だから呼んでほしくなかったのよ」
重い溜め息の燕に、どうせバレるんだからと義兄は慰めている。
「タナカ君。警察には?」
「一応ね。全部話し終わって帰ったところ」
「こんなことなら警察に送ってもらえばよかったわ」
「ツバメさん。何を言い出すんだよ」
「ちなみに子どもたちは?」
「両親にカレーと一緒に預けてきた」
「なんですって!カレー。明日じゃなかったの!」
胸倉を掴まれるのだが、笑顔を向ける。
「両親に預けるついでに置いてきた。つまり姉さんが俺に犯人についての情報を」
「こうしちゃあいられないわ。帰るわよ」
胸倉を外して帰るわよと義兄を引っ張っていく。
「タナカ君。治療費は?」
「その辺諸々済」
「じゃあ、帰るか。お医者さんは。あ。お仕事。お疲れ様です。タナカ君は」
「帰るよ」
「じゃ、一緒に、送って行くよ」
医者の視線を気にして、知られているかは判断つかないので言葉を選ぶ。
「ひさ。早くしなさい」
「はいはい」
「何?お姉さん。カレー好きなの?」
「姉家族、母は甘口派」
「あぁ。そう。じゃあ、五十嵐。お先」
医者が見送り、車に乗る。
実家へと移動しつつ向かう。
「っていうか、あんた。よく父さんたちに連絡したわね」
「そりゃあ俺だってするよ。オレオレ詐欺にされたけど。名前名乗ったのによぉ」
「おじさまに色々と教えこまれてるのよ」
「俺が言うのもなんだけどあいっ変わらず仲良しだな」
「そうねぇ。なんだかんだでつるんでるあんたに言われたくないでしょうけど、仲良しよね」
等と他愛ない会話を続ける。
「そういえばタナカ君。今度お礼をしなきゃね。何がいいかしら。ひさのよしの昔の話とか、写真とかどうかしら」
「お礼は。当然のことしたので。で、ひさ、なんだって?」
タナカはカラスを見ればカラスは前を見続けている。
「あら。言ってないの?烏丸久良。カラスって名乗ってるのはヒサヨシって漢字が久しぶりに良いって書いてクロウって読めるからでもあるのよ」
「へー」
説明を受けたタナカにカラスに対して目を細めて見る。
「へぇ。言うことは?」
「姉さんの馬鹿ぁ。せっかく誕生日に言おうと思ったのに!」
「相手の好みだからって謎めく人間になろうとしてアホじゃないの?」
「いいじゃん。タナカ君。楽しそうだったんだから」
それは否定できないとタナカは聞かなかったことにする。
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