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中学
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姉が入ってくる。
「いらっしゃい」
「ただいま。あんた。好きな子できたって?」
「好きな子っていうか。興味を持った子っていうか」
まだあの子のように胸が高鳴ったり、締め付けられたりなどしていない。
だけど、興味は尽きない。
「どんな子?」
「ふつーの男の子だよ」
「男。まぁ、他人に興味持つなら何でもいいわ。あんたが幸せなら今まで以上に私も、母さんも、もちろん。父さんも幸せになれるもの」
「父さんねぇ」
「あんたも父さんも、お互いを理解しようとして理解できないんだけ。幸せになってほしいから父さんは口に出すのよ。けど、あんたは、父さんの一を十に捉えちゃうからお互いに通じないだけなんだけどねぇ。で、お父さんはあんたの十を一に捉えちゃう。壊滅的よね」
楽しそうな姉に、溜息を溢す。
「わかってんだったら間に入ってよ」
「入った結果。あんたは独り暮らしがいい。って勧めたんじゃない」
「そうでした」
土下座する勢いで答える。
「それに、私だってあんたの話はよくわかんないことのほうが多いの。ポチ君だってそうじゃない。それでも付き合ってくれてる私と、犬飼家の人たちには感謝しなさいよ」
「ほんと。それな。姉さん。ありがとう」
そう告げれば、姉は額を抑える。
「こう、素直なのはいいんだけど、なーんか、こう、ずれてんのよね」
「これ以上どうしろと?」
「あ、今度父さんの誕生日なんだから帰ってきなさいよ。お互い会話なくていいっていう条件、二人に出しておいたわよ。元気かどうか心配してたんだから」
「それはそれで居心地悪そうだけど、わかったよ。何時?」
日時を確認して、告げる。
「えー。ポチとおおかみさんと遊ぼうと思ってた日じゃん」
「まだ約束してないんでしょ?」
「残念だなぁ」
姉は引き下がるつもりはないらしい。
親に会うよりは彼に会いたいと思うが、姉の視線に観念する。
「入るぞ。カラス」
犬飼が返事を待たず入ってくる。
「辞書貸してくれ。あ、ツバメさん。どうも」
「はぁい。お邪魔してるわよ」
「そういや。さっきおふくろが、ツバメさんの前行ってた彼氏どうなったかって言ってましたよ」
「別れたわよ。一ヶ月でね!何よ。美人なのはいいけど、想像と違った。よ。うっさいわね。だったらわかってから告白しなさいよ」
「半年続いたら紹介してね」
嘆く姉に追い打ちをかけるカラス。
「お前なぁ」
「何?ポチ。うちの姉貰ってくれるの?」
ちらりとツバメを見る。
弟と同様、無体な扱いを受けていたためか犬飼は微笑むツバメに一歩下がる。
「いや。ツバメさんにはもっと素敵な人が現れると思います。うん。それより辞書は」
「本棚」
「どうも」
「これだから男は!」
叫ぶ姉に、カラスは宥める。
「犬飼のおじさまみたいなダンディな人、現れないかしら」
ぽつりと呟いたツバメに、あえて返答はしない二人。
「いらっしゃい」
「ただいま。あんた。好きな子できたって?」
「好きな子っていうか。興味を持った子っていうか」
まだあの子のように胸が高鳴ったり、締め付けられたりなどしていない。
だけど、興味は尽きない。
「どんな子?」
「ふつーの男の子だよ」
「男。まぁ、他人に興味持つなら何でもいいわ。あんたが幸せなら今まで以上に私も、母さんも、もちろん。父さんも幸せになれるもの」
「父さんねぇ」
「あんたも父さんも、お互いを理解しようとして理解できないんだけ。幸せになってほしいから父さんは口に出すのよ。けど、あんたは、父さんの一を十に捉えちゃうからお互いに通じないだけなんだけどねぇ。で、お父さんはあんたの十を一に捉えちゃう。壊滅的よね」
楽しそうな姉に、溜息を溢す。
「わかってんだったら間に入ってよ」
「入った結果。あんたは独り暮らしがいい。って勧めたんじゃない」
「そうでした」
土下座する勢いで答える。
「それに、私だってあんたの話はよくわかんないことのほうが多いの。ポチ君だってそうじゃない。それでも付き合ってくれてる私と、犬飼家の人たちには感謝しなさいよ」
「ほんと。それな。姉さん。ありがとう」
そう告げれば、姉は額を抑える。
「こう、素直なのはいいんだけど、なーんか、こう、ずれてんのよね」
「これ以上どうしろと?」
「あ、今度父さんの誕生日なんだから帰ってきなさいよ。お互い会話なくていいっていう条件、二人に出しておいたわよ。元気かどうか心配してたんだから」
「それはそれで居心地悪そうだけど、わかったよ。何時?」
日時を確認して、告げる。
「えー。ポチとおおかみさんと遊ぼうと思ってた日じゃん」
「まだ約束してないんでしょ?」
「残念だなぁ」
姉は引き下がるつもりはないらしい。
親に会うよりは彼に会いたいと思うが、姉の視線に観念する。
「入るぞ。カラス」
犬飼が返事を待たず入ってくる。
「辞書貸してくれ。あ、ツバメさん。どうも」
「はぁい。お邪魔してるわよ」
「そういや。さっきおふくろが、ツバメさんの前行ってた彼氏どうなったかって言ってましたよ」
「別れたわよ。一ヶ月でね!何よ。美人なのはいいけど、想像と違った。よ。うっさいわね。だったらわかってから告白しなさいよ」
「半年続いたら紹介してね」
嘆く姉に追い打ちをかけるカラス。
「お前なぁ」
「何?ポチ。うちの姉貰ってくれるの?」
ちらりとツバメを見る。
弟と同様、無体な扱いを受けていたためか犬飼は微笑むツバメに一歩下がる。
「いや。ツバメさんにはもっと素敵な人が現れると思います。うん。それより辞書は」
「本棚」
「どうも」
「これだから男は!」
叫ぶ姉に、カラスは宥める。
「犬飼のおじさまみたいなダンディな人、現れないかしら」
ぽつりと呟いたツバメに、あえて返答はしない二人。
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