愛鳩屋烏

林 業

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中学

8

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タナカがドキドキと鼓動が早くなるのを感じながらカラスを見る。
布団の上に押し倒されていて、カラスがじっと見つめてくる。


夏休みの現在。
犬飼家のカラスが使っている家に泊まりに来ている。
犬飼もいるのだが今は実家で父親に呼ばれて出かけている。
足が縺れて、倒れてしまい、そこにカラスも巻き込まれてしまった。
そのため押し倒された構図が出来ている。

(まじかまじかまじか)

「オオカミさん」
「な、何?」
中学生の乏しい性知識で浮かぶのはボーイズラブの漫画本たち。

体を撫で回されるのだろうか。
それともなめられるのだろうか。
いや。何も触らずさっさと押し込んでくるのもいいかもしれない。

それとも自分が咥えるというのも。

色々と考えて行くにつれて顔が熱くなってくる。
「流石に中学生でセックスをするのは成長的にも早いと思うな。大体前戯もなしに入れるのは体に悪いからやらないよ」
「あ、いや。あ。はい。っていうか心読むのやめてください」
「わかりやすいんだもん」
カラスにあっさり告げられ、一気に恥ずかしくなる。
「性病の問題とかもあるわけで」
「あの。この格好で言うこと?」
「あぁ。嫌い?」
「そういう。わけじゃないけど。先輩が戻ってくる可能性もあるし」
「それもそうだね」
意外にあっさりと離れる。
安堵と共に少し残念さを感じる。

「カラス。タナカ。トランプしようぜ」
犬飼はのんびりと切りそろえられたスイカとトランプを持ってやってくる。

「タナカ。顔赤いけど大丈夫か?」
「夏だから熱くて」
「ちゃんと水飲めよ」
「うっす」
タナカは誤魔化すように告げる。

水を飲んでからスイカを口に運ぶ。
まずは食べてからとスイカを口に運ぶ三人。

それからトランプで遊ぶ。
真剣衰弱中、トランプに集中しているタナカを横目に犬飼は睨む。
「それにしてもカラス」
「何?」
コソコソとタナカに聞こえないように話す。
「あんまりタナカを揶揄うんじゃねぇぞ」
「えー。いいじゃん。反応が初々しくて」
「お前なぁ。いくら同性が好きだからって、お前が揶揄ってトラウマになって変な方向に走り始めたらどうするんだよ。お前好かれてるんだぞ」
「オオカミさん。意外と根性凄いけど?」
「何が。とはあえて聞かないでおく」
「それにむしろその辺の、を捕まえるようにならないように気をつけるよう忠告してるんだよ」
「それをやりすぎるなって話だ」
タナカはペアを見つけたのかよしとガッツポーズ。
それから続けてトランプを捲るカラス。
「っていうか同性愛者って知ってたのか」
「俺のことは先輩って慕ってくれてるしな。特に言いふらすつもりもない」
「なんでわかったのさ」
「お前に告白するやつって大半がそういう思考持ってるからなんとなく。後は初日にお前を男って言ったとき、告白を否定しなかった」
「謝ってたろ?」
「異性愛者だろう思考の男に対していきなり告白して迷惑かけたことへのすいません。に聞こえた」
「納得」
「外れたぁあ」
その様子に次はポチだからと早くしろと急かす。

カラスも捲って再びタナカへと戻る。
「ちなみにお前タナカのことどう思ってるんだ?」
「ちょっと興味は持ってる」
「その興味は?」
「反応が面白いってことと、隣にいるのがオオカミさんだったら、幸せにしたいなぁって思った」
「従兄弟が大変だぞ」
「だぁねぇ」
笑いながら続ける。
「でも俺、諦め悪いからねぇ」
「程々にな」
犬飼は特に止めるわけでもなくトランプを捲る。
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