愛鳩屋烏

林 業

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中学

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タナカは校舎裏でカラスと話をする。
普段は給食だが時々お弁当の日というのがあり、手作りというお弁当を分けてもらいつつ、自分も母親の作ったお弁当の具材をわける。
ちょっと前までは母親の弁当など恥ずかしいことこの上なかったがカラスは興味を示すので持ってくるようになった。
「卵焼きは砂糖のほうが好きなんだね」
「だし醤油も好きだけどな」
カラスの言葉に頷きながらも答える。
「君のお母さんは砂糖少なめで料理作ってる方だけど。ってことはお父さんが砂糖のが好きなんだね」
「そうそう。よくわかるな」
「俺は五感がちょっとだけ鋭いからね」
「へぇ。それはそれで大変そうだな」
「そう?」
「だって飯がまずいとしんどいだろ」
「んー。そういう個性だと思ってるからね。特に姉さんなんてチャレンジャーだから唐突にお肉に特に何もしていないチョコレートかけたり、完成間近のボルシチにカレールー入れようとしたり。まぁ。慣れだよねー」
「うん。なんか大変だな」
「オオカミさんはご飯作んないの?」
「お米炊くぐらいなら」
カラスは無言で見つめると告げる。
「そっか。すごいね」
「いいんだ。素直に言ってくれて!」
「お米を炊けるだけでも十分だって。それすらできないやつ知ってるからね」
「誰?」
「俺のお父さん。あの人カップラーメンも作れないからねぇ。まぁ。俺は小学生ぐらいの話だから今は知らないけどね」
「一緒に住んでないのか?」
「色々と折り合い悪くてね。まぁ。悪い人じゃないよ。ただ話し合ってもお互いの理解と納得具合が違うっていうか。あぁ。あれあれ。正義のヒーローと悪役って感じ。お互いの意見を持ってるから対立しちゃうみたいな。あくまで例えで、俺と両親にそんな言うほどの思想があるわけじゃないけど、俺の話は理解できないらしんだ」
「俺は好きだけどなぁ」
見つめてくる黒い瞳に、どきりと胸が高鳴る。
ふと顔が近づき、しかしその目から目が離せない。
「ところで、前々から気になってたんだけど」
「う、うん。何?」
「オオカミさんって同性愛者だよね」
「い、や。あの。えっと。あの。なんで」
確定したように言われ、焦ってしどろもどろになりながらも聞く。
普通ではないことはわかっている。
認められることでもないも。
「なんでって、俺のこと好きって言ったけど女と間違えた様子はなかったしね。今だって顔真っ赤だし」
「そりゃあイケメンに攻められたら」
「ま、隠してるならそれでもいいけどね。ポチも純情だから気づかないだろうけどね」
「気持ち悪いとかって言わないのか?」
「人の性癖に関して物申したって変えれないもののほうが多いと思うけどね」
「そっか」
「後、その性癖だって社会現象の一つだと思う。無理を言ったってそうなるようできてるんだと思うよ。オオカミさんじゃなくても」
タナカが戸惑うように視線を落としながら呟く。
「俺だって女の子とか好きになれたらって思うけどさ」
「オオカミさんにとって女性より同性のほうが魅力的ってだけなんじゃないの。ちなみに誰彼構わず襲うわけ?」
「そんなわけ無いだろ」
「誰彼構わず襲うなら問題だけど他人に迷惑かけてないし、好みじゃないからって振るのだって異性同士じゃあよくあることだろう?まぁ、世間的視線があるから、今は隠すのが最適解かもね」
なんでだろうと悩みながら彼を盗み見れば指を折りながら告げる。
「一、出る杭は打たれる。ま、そういうのはいじめや揶揄されやすい。ニ、性を暴露するには思春期では相手の反応で次第でトラウマになりかねない。三、未成年は適切な対処を講じるのが難しい。ネットで頼るのもいいけど、犯罪に巻き込まれることになりそうだよねぇ。最近は名無しの権兵衛だからっていろいろと横行してるわけで」
「名無しのごんべいって何?」
「え、知らない?」
カルチャーショックと驚いて見つめてくる。
その姿に笑みを浮かべる。
「とはいえ、理解者を得にくい性癖だけど、それを言うなら、同性だろうと異性だろうと、特殊性癖で理解を得にくいものだってあるから結局大人になるまでは同族以外には隠すってのは自己防衛だと思うね」
「そっか」
「まぁ、俺はオオカミさんのこと嫌いじゃないけどねぇ」
「そ、それって」
「見てるだけで面白いもん。恋愛とかはよくわかんないけどね」
一々どきりとさせてくると睨むがにっこり微笑まれる。
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