愛鳩屋烏

林 業

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社会人

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ただいまーと中に入れば、マオとレオが来る。
「お帰り」
「お帰りなさい。おじさん」
「ただいま。後で家まで送っていくよ。姉さん、お母さんたちはもうちょっとお仕事だって」
「はーい」
こっちと二人に導かれるようにリビングに向かう。
「ただいまー」
リビングの机にハンバーグが並んでいる。
子供が作ったとも思える程度の歪な形をした料理。
台所に行けば、タナカが鼻歌交じりに洗い物中。
「オオカミさん。ただいま」
「うわっ」
驚いたのかビクついてから、振り返る。
「あ、お帰り。早かったな」
「うん。ちょっと早めに予定切り上げて。ハンバーグ作れたの?」
「マオちゃんとレオ君に教わって」
「じゃあ、とりあえず着替えてくるから一緒に皆で食べようね」
笑顔で告げて部屋へと向かう。

「今食べようよ」
「着替えさせてよ」
苦笑交じりに着替えに向かう。


つまんない。などと告げる横で部屋に入り着替える。

「おじさんはお腹出てないよね。なんでー?」
「お父さんお腹出てるのか」
「だねー」
「ねー」
頷きあう二人に、鍛えてるからとだけ答えておく。
というか叔父の着替えを覗かないで欲しい。

髪の毛も洗い流したいがそこまでは許してくれなさそうである。

リビングへと戻ればお茶の用意をしているタナカ。
「マオもレオもああやってお茶の用意してくれない?」
「なんで?」
「ハンバーグ、教えて一緒に作ったのに?」
双子は首を捻る。
姉の教育方針か何かだろう。
そのことに関してこれ以上言うのは諦める。

「あ。着替えたんだ。似合ってたのにな」
「おじさん似合ってたのにねー」

お互いに頷き合う双子。
「あれ、数十万するから帰ったら着替えろって言われてるんだよ。俺だっておお、タナカ君とのんびりしたかったさ」
「なんでそんな高価なもんを」
タナカの着るスーツは既製品であり数万円程度の安物。
それを思うと羨ましいし拝みたくなる。
「姉に買わされたんだよ。今後もあるからって。おかげで普段埃被ってるんだけどさ」
「おじさん。スーツ似合うからいつも着ればいいのに」
「そうだよ」
「洋服汚すマオとレオが汚さなくなったら考える」
ぷくっと頬を膨らませている二人を無視し、ご飯を口に運ぶ。

「窮屈だからなぁ」

告げてからタナカが、一瞬固まったのに気づいて見る。
「どうした?」
「あ、いや」
驚いたように見つめてくるタナカ。
「なんか思い出せそうだったんだけど」
カラスはタナカから目を離すと双子を見る。
「マオ、レオ。これ食べたら家まで送っていくからな」
「えー。タナカ君と遊びたい」
ぶーと頬をふくらませるマオに、カラスは駄目と一刀両断。
「ご両親迎えに来ないのか?」
「来るなって言ってあるからな。緊急で避難してきたなら姉さんの身も危ないしな」
「カラスさ、家族に優しいよな」
「姉さんには恩義あるしねぇ。それに二人が元気である色々と楽なんだよ」
「楽、とは?」
「この子のジジババ、つまり俺の両親が俺に子供を望まなくて済む」
「そういうもん?」
「さぁね。そもそも俺子供作る気無いもの」
「こういう可愛い子見ててほしいと思わないんだ」
「自分の遺伝子受け継いでいて、一から躾するのって面倒じゃない?」
「お前の考えは理解できないし、子供がいる前でする話じゃないってことだけは言えるからもう終わりな」
「だーねー」
「僕、おじさんとこの子供と遊びたいな」
「養子取るかなぁ」
レオの言葉に本当に招きそうなのでタナカは話題を逸らす。




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