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社会人
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カラス、もとい烏丸 久良。
あだ名のカラスと呼ばれることのほうが田中を除いても多い。
タナカには意図して呼ばせているが。
(カラスマ、くろう?カラス好きなのか?え、ヒサヨシ?)
思い出した記憶に笑みが溢れる。
「気持ち悪い」
声に振り返れば、姉、燕がいる。
「お帰り。相手まだ来ないの?」
「今用意しているわよ。っていうかちゃんとスーツ着てきたわね」
「最初に写真撮影できないようにボロ服着てきただけじゃん。なんで数年も引きずられなきゃなんないだよ」
タバコを手に取り、火を点ける。
「ヨシはやるでしょうが。大体新進気鋭の作家、クロイ クロウがボロ服纏って授賞式拒否とかアホなの?」
「代わりに著者近影でヌイグルミ用意したじゃん」
鞄からカラスのぬいぐるみを取り出す。
手元で投げて遊ぶ。
深い深い溜め息。
「神様はなんでこんなアホな弟に、作家の才能を与えたんでしょうね」
「天は二物を与えずって言うからじゃない」
軽く言えば燕が見つめてあぁと頷く。
納得されるのも微妙な心持ちである。
「それもそうね。そんな才能なけれ生活できてないわね。顔はいいんだけど、中身がねぇ」
「姉さん。相っ変わらず失礼だな」
携帯が鳴り、カラスは電話を取る。
「もしもし?オオカミさん?どうしたの?」
「カラスはハンバーグ好きか?」
「そりゃあ人並み程度には好きだけどさ」
「ならいい。仕事邪魔した。あ、甥っ子さんと姪っ子さんが来たこと伝えとくからな。じゃあな」
電話が一方的に切れて、姉を見る。
「今うちに来てるって」
「あら。メッセージ来てたわね。どれどれ」
姉が携帯を見て慌てて内容に目を通す。
「なんか嫌な予感したと思ったので避難ですって」
「まぁ、俺はいいけど。タナカ君、ハンバーグ作る技術あったっけ」
カラスが首を捻り、燕は嘘でしょと見てくる。
「子供でも作れるような料理じゃない」
「オオカミさん。チャーハン。冷凍の野菜を買ってきて冷えたご飯とケチャップで炒めるぐらいしかできないよ。後は下味もつけないままステーキにして焼くぐらい」
「美味しいの?」
「お世辞にも家庭料理。とは言えないけど、食べれる」
うんと頷け姉は不思議そうに見てくる。
「そう言えばあんたどんな料理でもほぼ食べてるわね」
「味の良し悪しはお金払わない場合は二の次だと思ってる。じゃないと姉さんの実験台に突き合わされたあの日々が無駄に」
はっと口を塞ぎ、しかし燕は微笑みを浮かべる。
「お陰で旦那と子供たちには美味しいご飯を作ってあげれるものねぇ」
言葉尻から滲み出る何かに恐怖する。
「ところであんた。タナカ君のことオオカミさんって呼んでるの?」
「うん。流石に外では呼ばないけどさ。学生時代じゃあるまいし」
「ならいいけどねぇ」
そう言いながら外を見て、来たみたいねと出ていく。
タバコを携帯灰皿へと放り込み消臭グッズをカバンから取り出す。
あだ名のカラスと呼ばれることのほうが田中を除いても多い。
タナカには意図して呼ばせているが。
(カラスマ、くろう?カラス好きなのか?え、ヒサヨシ?)
思い出した記憶に笑みが溢れる。
「気持ち悪い」
声に振り返れば、姉、燕がいる。
「お帰り。相手まだ来ないの?」
「今用意しているわよ。っていうかちゃんとスーツ着てきたわね」
「最初に写真撮影できないようにボロ服着てきただけじゃん。なんで数年も引きずられなきゃなんないだよ」
タバコを手に取り、火を点ける。
「ヨシはやるでしょうが。大体新進気鋭の作家、クロイ クロウがボロ服纏って授賞式拒否とかアホなの?」
「代わりに著者近影でヌイグルミ用意したじゃん」
鞄からカラスのぬいぐるみを取り出す。
手元で投げて遊ぶ。
深い深い溜め息。
「神様はなんでこんなアホな弟に、作家の才能を与えたんでしょうね」
「天は二物を与えずって言うからじゃない」
軽く言えば燕が見つめてあぁと頷く。
納得されるのも微妙な心持ちである。
「それもそうね。そんな才能なけれ生活できてないわね。顔はいいんだけど、中身がねぇ」
「姉さん。相っ変わらず失礼だな」
携帯が鳴り、カラスは電話を取る。
「もしもし?オオカミさん?どうしたの?」
「カラスはハンバーグ好きか?」
「そりゃあ人並み程度には好きだけどさ」
「ならいい。仕事邪魔した。あ、甥っ子さんと姪っ子さんが来たこと伝えとくからな。じゃあな」
電話が一方的に切れて、姉を見る。
「今うちに来てるって」
「あら。メッセージ来てたわね。どれどれ」
姉が携帯を見て慌てて内容に目を通す。
「なんか嫌な予感したと思ったので避難ですって」
「まぁ、俺はいいけど。タナカ君、ハンバーグ作る技術あったっけ」
カラスが首を捻り、燕は嘘でしょと見てくる。
「子供でも作れるような料理じゃない」
「オオカミさん。チャーハン。冷凍の野菜を買ってきて冷えたご飯とケチャップで炒めるぐらいしかできないよ。後は下味もつけないままステーキにして焼くぐらい」
「美味しいの?」
「お世辞にも家庭料理。とは言えないけど、食べれる」
うんと頷け姉は不思議そうに見てくる。
「そう言えばあんたどんな料理でもほぼ食べてるわね」
「味の良し悪しはお金払わない場合は二の次だと思ってる。じゃないと姉さんの実験台に突き合わされたあの日々が無駄に」
はっと口を塞ぎ、しかし燕は微笑みを浮かべる。
「お陰で旦那と子供たちには美味しいご飯を作ってあげれるものねぇ」
言葉尻から滲み出る何かに恐怖する。
「ところであんた。タナカ君のことオオカミさんって呼んでるの?」
「うん。流石に外では呼ばないけどさ。学生時代じゃあるまいし」
「ならいいけどねぇ」
そう言いながら外を見て、来たみたいねと出ていく。
タバコを携帯灰皿へと放り込み消臭グッズをカバンから取り出す。
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