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社会人
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何度もいうが俺は同性愛者だ。
だからだろう。
カラスに似たカラスの姉に誘惑されようともあまり心が揺れ動かなかったのは。
カラスに似ているから若干揺れ動きそうだったが、カラスの一言のほうが心惹かれる。
「やっぱ俺って男が好きなんだなって」
カラスが不思議そうに見てくる。
「いきなり何?」
「いやー。カラスの姉さんより、カラスに俺のって言われたことのほうが心惹かれるなって」
カラスは不思議そうに見つめてくる。
「姉さんに見惚れてたじゃないか」
「見惚れてはいたけど、カラスに似ているからだしな」
「そっか。喜んでいいのか、余所見するなと怒ったらいいのか微妙だ」
「仲悪くないのに嫌なのか?」
「似てるって言われるのは微妙。一緒に住んでた期間が少なかったとはいえ、「姉」を知っているから、似ているといわれるといいところも悪いところも浮かぶというか」
似たくない部分があるのかと首を捻る。
「姉弟なのに?あぁ。どっかに進学ってこと?」
「いや。親との折り合いが悪いんだよ。別に大喧嘩するほどってわけじゃないんだけどね。意見が噛み合わないというか、お互いの価値観が違うから一緒に暮らしているとお互いストレスになっちゃうんだよね」
今一緒に暮らしている時点ではそこまで価値観が違うという感じはしない。
それだけ相性がいいのか、それともお互いに合わせて暮らせているからか。
両方かもしれない。
「今も両親との会話は最低限だなぁ。元気とか。そっちはどう?仕送りについて。姉の助言で父母の誕生日とか記念日に花贈ったりとか。機械とかの使い方を教えてくれ。とかそのぐらいだよ」
「仲違いって言うほどではないのか」
もっと仲が悪いなら会話すらしないだろう。
それこそ縁を切ってしまうぐらいのことを、カラスがすることは想像に容易くない。
「そうだよ。本当に価値観が違うだけで普通に親子の情はあるんだよ。その辺は姉に感謝かな。姉がいなかったら早々に児童保護法とかの助言で施設に預けられてたと思うしね。中学ぐらいから幼なじみの家に間借りさせてもらってた」
「その幼馴染いい人だったんだな」
「んー。なんでもお互い、お互いの家に恩義があるらしくて、家族ぐるみの付き合いで、家の様子を見かねた犬飼さんが申し出てくれたんだけど家も恩義があるから中学までは断ってたんだけどさ。姉が流石に家の空気に耐えれないからって、家賃や生活費はもちろん親持ちだったけどお世話になったわけ」
「お互いに恩義?」
「俺もよくわかんないよ。祖父母の時代のことらしいし、知りたいと思う頃には亡くなってた上にその詳しい詳細は子はもちろん、親族にも話してないぐらいだから。だからお互いの家に何らかの恩義があるってお互いの家で思い込んでるらしい」
「否定しなかったのか?」
ないならないといえばいいし、そういうお互いにわかっているならば。
と考えてしまう。
だがカラスは苦笑する。
「真実は墓の中だしね。張本人が居ないし友好的な付き合いができているうちは、その変はなぁなぁじゃないかなぁ。そのうち、仲違いするまで、なんで家族ぐるみで仲良しなのかな。って疑問すら感じなくなるんじゃない?そんなどっちに恩があるなんてことで喧嘩したってしょうもない話なわけだしさ」
カラスの言葉に唸る。
真実を突き詰めないのも幸せなのかと。
同時に無くした記憶を思い出したくても思い出せない事実にコメカミを思わず押さえる。
「頭痛い?」
覗き込まれ、運転どうした。と青ざめて前を見ればお店の駐車場。
「いや。大丈夫」
「そう。ご飯取ってくるから待ってて」
優しい笑顔に、頷く。
だからだろう。
カラスに似たカラスの姉に誘惑されようともあまり心が揺れ動かなかったのは。
カラスに似ているから若干揺れ動きそうだったが、カラスの一言のほうが心惹かれる。
「やっぱ俺って男が好きなんだなって」
カラスが不思議そうに見てくる。
「いきなり何?」
「いやー。カラスの姉さんより、カラスに俺のって言われたことのほうが心惹かれるなって」
カラスは不思議そうに見つめてくる。
「姉さんに見惚れてたじゃないか」
「見惚れてはいたけど、カラスに似ているからだしな」
「そっか。喜んでいいのか、余所見するなと怒ったらいいのか微妙だ」
「仲悪くないのに嫌なのか?」
「似てるって言われるのは微妙。一緒に住んでた期間が少なかったとはいえ、「姉」を知っているから、似ているといわれるといいところも悪いところも浮かぶというか」
似たくない部分があるのかと首を捻る。
「姉弟なのに?あぁ。どっかに進学ってこと?」
「いや。親との折り合いが悪いんだよ。別に大喧嘩するほどってわけじゃないんだけどね。意見が噛み合わないというか、お互いの価値観が違うから一緒に暮らしているとお互いストレスになっちゃうんだよね」
今一緒に暮らしている時点ではそこまで価値観が違うという感じはしない。
それだけ相性がいいのか、それともお互いに合わせて暮らせているからか。
両方かもしれない。
「今も両親との会話は最低限だなぁ。元気とか。そっちはどう?仕送りについて。姉の助言で父母の誕生日とか記念日に花贈ったりとか。機械とかの使い方を教えてくれ。とかそのぐらいだよ」
「仲違いって言うほどではないのか」
もっと仲が悪いなら会話すらしないだろう。
それこそ縁を切ってしまうぐらいのことを、カラスがすることは想像に容易くない。
「そうだよ。本当に価値観が違うだけで普通に親子の情はあるんだよ。その辺は姉に感謝かな。姉がいなかったら早々に児童保護法とかの助言で施設に預けられてたと思うしね。中学ぐらいから幼なじみの家に間借りさせてもらってた」
「その幼馴染いい人だったんだな」
「んー。なんでもお互い、お互いの家に恩義があるらしくて、家族ぐるみの付き合いで、家の様子を見かねた犬飼さんが申し出てくれたんだけど家も恩義があるから中学までは断ってたんだけどさ。姉が流石に家の空気に耐えれないからって、家賃や生活費はもちろん親持ちだったけどお世話になったわけ」
「お互いに恩義?」
「俺もよくわかんないよ。祖父母の時代のことらしいし、知りたいと思う頃には亡くなってた上にその詳しい詳細は子はもちろん、親族にも話してないぐらいだから。だからお互いの家に何らかの恩義があるってお互いの家で思い込んでるらしい」
「否定しなかったのか?」
ないならないといえばいいし、そういうお互いにわかっているならば。
と考えてしまう。
だがカラスは苦笑する。
「真実は墓の中だしね。張本人が居ないし友好的な付き合いができているうちは、その変はなぁなぁじゃないかなぁ。そのうち、仲違いするまで、なんで家族ぐるみで仲良しなのかな。って疑問すら感じなくなるんじゃない?そんなどっちに恩があるなんてことで喧嘩したってしょうもない話なわけだしさ」
カラスの言葉に唸る。
真実を突き詰めないのも幸せなのかと。
同時に無くした記憶を思い出したくても思い出せない事実にコメカミを思わず押さえる。
「頭痛い?」
覗き込まれ、運転どうした。と青ざめて前を見ればお店の駐車場。
「いや。大丈夫」
「そう。ご飯取ってくるから待ってて」
優しい笑顔に、頷く。
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