愛鳩屋烏

林 業

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社会人

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一人先に遊園地の前で待つ。
遊園地から姉宅へ行くと起きる時間が早くなるので、一人で遊園地に来た。
後初対面と車という密室で長時間いるのは応える。
決して待ち合わせ気分を味わいたいとかそういうつもりじゃない。
決して!
することもないので携帯をいじること三十分。

二人の天使を連れたカラスがやってくる。
性別は辛うじて服装で判断できるのだが、中性的で、愛らしい。
見た目は日本人であるのだが、ほかの子達とは一線を超えている。
まさに天使の中の天使。
この二人といるとカラスすらも天使ではないかと考える。
「天使?」
「な。かわいいだろ?」
親馬鹿と言われてしまうような発言だが、この二人の前には頷いてしまう。

「始めまして!」
「タナカ君。こんにちわ」
小学生ぐらいの二人の挨拶に思わず顔が解れる。
「こんにちわ。今日はよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ペコリと二人同時に頭を下げられる。

「名前は、甥がレオ、姪が、マオ。双子だ」
二人共似ているのはそういうことかと眺める。
「レオだよ」
活発そうなズボンを穿いて、何処かの野球のロゴが入った帽子をかぶっている。
「マオです」
ひらひらのスカートと服装に、帽子には猫なのか獣耳が付いている。

「両親、外人?」
「正真正銘日本人です」
カラスは苦笑しながら二人の頭を撫でる。
「とりあえずタナカ君には物をねだるなと言いつけてある。欲しそうにしても買わないでほしい」
「教育方針?」
「あぁ。クラスメイト、親以外のお土産以外で、自分への土産で買っていいのは一個だけって約束させてある」
「一個だけか」
「後はお小遣いのみでやりくりしなさい。と言ってある」
じっとマオがカラスを見上げる。
「カラスのおじさんケチー」
「けちー」
笑顔を浮かべて真似をするレオ。
イタズラ好きなのかもと頭を撫でれば嬉しそうに笑っている。
「おじさんじゃなくてお母さんに言ってくれないかな」
カラスは呆れたようにマオの頭を乱暴に撫でる。

「おじさんお金持ってるでしょ?」
「そーそー」
「俺だって買ってあげたいけど甘やかすなって怒られるんだからさ」
「バレなきゃいいじゃん」
自慢するばらすのがお前らだよな」
笑顔のカラスに二人はそっぽを向く。


「そのことはまた後で話すとして中入ろう。どこをどう回るか決めてきたんだろ」
「うん」
綺羅びやかな手帳をマオが向けてくる。
やっぱり女の子はデコる?というのかと手帳を眺める。
カラスは中身を見てからこっちと案内してくる。



「カラスって甥姪にもカラスって呼ばれてるのか?」
「名前だしねぇ」
軽く言われて、思わず叫ぶ。
「えっ!」

レオが何かを見てそわそわと落ち着きがないのに気付く。
「カラス。待ってくれ」
声をかけてからレオを見る。
「何か気になったか?」
「あれ」
示されたのはゴーカートらしき乗り物。
「あれやだ。まずはあっちの、お城でしょ」
「車乗りたい」
二人が睨み合うために、カラスはこちらを見てから告げる。
「二手に分かれる?タナカ君はいい?レオ任せて」
「いいけど。写真大丈夫か」
「そこは、まぁ、撮れたらでいいよ」
「タナカ君はどっち行く?」
ぎゅっとレオに手を握られ、じゃあ、とゴーカートを示す。
「タナカ君も一緒に乗ろう?」
顔を明るくして見てくるので断れるはずもない。
というかあの程度なら問題ないだろう。

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