愛鳩屋烏

林 業

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社会人

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カラスが朝ごはんを食べた後に告げてくる。
「オオカミさん。お話があります」
真剣な様子になんだろうと向き合う。

「今度の土曜日、オオカミさんお休みかと思いますが、一緒に遊園地に行きませんか?」

遊園地。
あのリア充の聖地。
同性愛者の男二人で行くには中々勇気のいる、しかし憧れる場所。
だが返事は決まっている。
「いかな」
「事情がありまして」
珍しく言葉を遮ってくるので、事情ぐらい聞くかと耳を傾ける。
「俺に姉がいるのは話したかと思います」
「あーうん。まだ紹介されたことないけど、話だけは」
「その姉の子供に関することです」
紹介されても同性愛者としてお互いに反応に困るだろう。
等と考えていれば、カラスはこちらを見る。
「姉夫婦の代わりにその遊園地にあるイベントに連れて行ってほしいと命令が姉から下りました」
「えっと。命令なんだ」
「姉に逆らえる弟はいません。それに文句は言ったんだけど敵いませんでした。一応検討すると言いましたが」
「そっか」
一人っ子のタナカにはピンとくるような話ではないものの、それでもそういうものなのだと今までの交友関係から理解する。
カラスはいくつか、提示してくる。
「チケット代は向こう持ちです」
「三人で行ってこればいいじゃん」
むしろ邪魔じゃないのかと、姉へのあてつけかと睨む。
「甥っ子と姪っ子はね。やんちゃなんだよ。片方の目を離すとふたりとも別の方向へと走っていくような好奇心で生きているような子なんだ。正直遊園地であの二人の子守とか」
「どれだけ暴れる子なんだよ」
「とりあえず写真は撮れないかな。でもお願いされてるから。っていうか撮ってこないと後々義兄さんにもしくしくと言われる。ポチもいいけど、ポチは土曜日は基本仕事だから」
「しくしくって」
「可愛い姿見れなかった。泣き。的な」
「あぁ。わかったよ。付き合う」
「助かるよ」
折角カラスが助けを求めてきてくれたのだから手伝おうと心に決める。
少し、ほんの少しだけ、タナカがテーマパークでデート気分を味わいたかったとは言えない。

「男二人でって誘拐犯に思われない?」
「対策しておくさ」
どんな対策をするのか気になるが当日の楽しみにしてカラスを眺める。
「そういえばお姉さんたちの仕事って?」
「編集。姉さんは女性誌。義兄さんは、小説関係の編集長。二人共、入校日被ったらしい」
「大変なんだな」
「らしいね。俺は姪っ子たち預かるのは、可愛いし好きだからいいけどさ」
「え?ロリショタコン?」
「違う。自分の名誉のためにも訂正する。それに、見たらわかるよ」
カラスは苦笑する。


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