上 下
20 / 25
貴方を支える未来

6

しおりを挟む
この世界では子供は宝だ。
だから基本、子を害する者はいない。
子は大人たちで見守り育てる。

ただ僅かながらもたまに狂ったように子供を奪う人もいるし、誘拐する者もいる。
だから慎重に、神経質に守ることになるだろう。


約半月で実に変化した。
長兄と義兄は教会へ受け取りに行き、今は布に包まれ義兄の肩にかかっている。
受取の儀式は見せて見せてもらえなかった。
まるで卵のようだと義兄に断って触れる。

柔らかいような、硬いような。
不思議な感触。
だが触れると何かが触っているような気もする。
「手や足ができた頃だからね。多分それだよ。イネスおじさんだよ。王妃になる王様の次に偉い子なんだよ」
そう話しかける義兄が幸せそうで、いつまでも見ていたいと眺める。
だがリーマンに授業だと引き戻される。
「明日、ベビー用品買いにいくんでしょう?時間を作るためにも頑張りましょう」
「はい」
そうだったと気合を入れ直す。



実になって、暫くして、何日頃産まれると教会から連絡があったらしい。
「秋口だって。結婚式の綺麗な姿は見られないんだって。残念だったね」
「そっか。でも、義兄上が参加できないのも嫌です。だから良かったかもしれないです」
実に触れて、蹴られる。
可愛いなとこっちと叩けばそこ目掛けて手が当たる。

「出てきてたらしばらくお出かけはできないから」
「そうだった」
実をよしよしと撫でる。
「そういえば、もし義兄上が領地にいたら領地に出てくるんですか?」
「そう。すべての大樹は繋がっているとされているから。本来領地で出てくるはずだったけど、こっちに来てお祈りしたからここに現れたんだろう。できる限り祈りを捧げるっていうのはそういうこと。気づいても我が子の花を見ることができないことも多々あるらしい。戻ってきても木の実だけ。みたいなことが。さすがに一度咲いちゃうとそこから移動できないらしいからさ」
「じゃあ義兄上は幸運ですね」
彼が嬉しそうに微笑む。
「そうだね。幸運だ」
幸せそうに、嬉しそうに実を撫でる。
「名前は決まったんですか?」
「今考えているそうだよ。毎日あれはどうだこれはどうだと頭を悩ませてる」
「どんな名前かな。元気に育って出ておいで。みんなまってるよ」
声を掛ければ、そうだねと義兄は微笑む。



そしてあっという間に結婚式の時期が近づく。
なんとか結婚式前に会えるようリーマンや王が調整してくれていたようだが用事意外の外出すらままならなかった。

義兄がなんだかんだで時間を作って構ってくれていなければ、義兄の子の成長も見られなかっただろう。

「今よろしいですか」
リーマンが声をかけてくる。
「なんですか?」
「結婚式での正装が出来たそうなので今から試着に行きましょう。よかったらご一緒に」
義兄は二つ返事で引き受ける。


翌日ようやく来た父母に
きれいだった。
可愛かった。
と興奮気味に語り、長兄に身体に触るからと宥められていた。
母は母でずるいと不貞腐れていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします

muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。 非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。 両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。 そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。 非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。 ※全年齢向け作品です。

好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼 *全12話+後日談1話

帝国皇子のお婿さんになりました

クリム
BL
 帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。  そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。 「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」 「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」 「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」 「うん、クーちゃん」 「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」  これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。 ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが……… ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ…… 世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。 気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。 そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。 ※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。

処理中です...