未来の王妃として幸せを紡ぐ

林 業

文字の大きさ
上 下
16 / 25
貴方を支える未来

2

しおりを挟む
うわぁと頭を抱え、今まで書いてきた手紙の内容を浮かべてはあれもこれもと考える。

リアムは黒歴史となっている数年前の自分を思い出しては頭を抱える。
まさか、暴れ、好き放題していた日々を知っている友人とその弟である婚約者候補。
今尚手紙に婚約者に対しての愚痴なんかを書き込んではお前に弟はやらんとか書いてあったりした。
何より剣術では大人にだって負けたことないのに彼らとは正直、勝てることも負けることもなかった。
それからは色々と思い改めた。
自分は国のために良い王となり、民のためにより良い跡継ぎを作らなければ。と。
その日から勉強や剣技に励んだ。


そして先日、流行り病で寝込んでいるという本来の婚約者が死んだと連絡が来た。
正直来年の夏には結婚式を上げる予定であったのだが。
なので少々困ったことになっていた。
その他の婚約者候補たちはすでに別の婚約者がいたり結婚していたり。
中には王妃教育を途中でやめている者もいる。
正直今から始めても来年には間に合わないだろう。


そして唯一残ったのがイネスという婚約者候補。
自分が熱を出し、彼も熱を出したため会うことは一切なかった。

建国祭などの社交界では彼が顔を出すのはほとんどない。
時々兄たちに連れられ顔を出すこともあるそうだが、すでに婚約者候補なのでと踊ることもないという。
何度か顔を会わせようとするのだが尽く会えずじまい。

貴族たちもそういえば居たな。と今回の自体になって思い出したぐらいの存在感。
王としてはすでに紹介する相手を選別中だった程だった。

そうしてそこで新しい婚約者だと紹介されたのが手紙のやり取りをしていた友人二名の弟である。

色々と教わっているのだろうと思うとやるせない気持ちと過去の自分のやらかし具合で愛想を尽かされないか心配である。

後はいつ会えるかだが、お互いのスケジュールでは結婚式当日になりそうである。

(とりあえず聞いたことを伝えてあるし返答次第だな)

そろそろ手紙が届いてもいい頃だと思っていれば、幼馴染であり右腕であるロベルトがやってくる。
「ロベルト。来たか?」
「えぇ」
差し出され手紙を受け取り読む。
一応イネスが好きなものなど書いてくれている。
そしてようやく知ったか。と煽られる。
ただ最終的に、頑張れ。とだけ。

違うんだよぉと叫びたいのを我慢してうめき声を上げる。
ロベルトは必死に笑いを堪えているのに気づいて恨めしく見ればこほんと咳払い一つで誤魔化す。
「こういう奴らだって知ってたけどさ。教えてくれよ」
「あって聞けばよろしいかと」
「そんなに俺を婿にしたくないってことか」
はぁと盛大な溜息をこぼす。

単に弟を取られるという兄のいたずら心と、イネスへはイネスが持つ王子のイメージを壊したくがない。
そんな兄心だが、それを未だ知る由もない。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

続・聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。 あらすじ  異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。

琉海
BL
 不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。  しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。  迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。  異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。

処理中です...