7 / 25
まだ未熟な
7
しおりを挟む
イネスは兄二人と釣りに来ている。
それぞれ岩の上に座り、釣り糸が絡まないように距離を保っている。
リーマンから釣り道具を渡され、いいお魚期待しています。と送り出された。
会談が終わればすぐ駆けつけてくれるらしい。
「剣術がなくなったけど遊べるんだからいいよな」
兄二人は楽しげ。
授業が先生の事情でなくなったとはいえ、少々の罪悪感を感じるイネス。
「王様や王妃様だって人なんだからこういう息抜き覚えてたっていいだろう」
「うん」
兄の言葉に頷きながらも魚を釣る。
「とはいえ、私の場合は、昔の慣習で選ばれただけなんだけど」
何でも、王室の妃選びには必ず、女、若しくは女の産んだ一番近い子孫を候補者に選ぶべしと書かれている。
その事情もあって既に後継ぎ候補が二人もいた我が家に話が来たのである。
「どんな王子様なんだろうな」
「今度会えるから楽しみにしているんだ。お友達になれないかなって」
「そうだな」
兄二人は楽しげ。
そんな二人を見るのは楽しい。
「なんせ、下手に出掛けりゃあ、あのバカがイネスにちょっかいかけるしな」
「うん」
数年前、他の子たちと遊んでいたときに、アーケロンがちょっかいをかけ他の子も巻き込む大喧嘩になった。
それ以来イネスは領民と遊ぶことがない。
なので話し相手が出来るのは嬉しいのだろう。
リーマンがいるとやり返されるとわかっているからか、近寄ってこない。
できる限りリーマンがいてくれるのだが、隙を見つけてはちょっかいをかけてくる。
「先生が王子が好きな本教えてくれたんだ。面白かったから話ししたいな」
「ごめんな。兄たちあんまり本読まないからな」
「うんん。こうして兄上たちと遊べるんだから嬉しいよ」
笑顔を浮かべれば、兄たちは照れ臭そうに、釣り糸を見る。
「うおりゃああ」
唸り声に見た雄叫びに、イネスの身体が浮き上がり川へと落ちる。
「へっ?」
驚きの声を上げたのがまずかったのか、水に落ちると、すぐに口に水が入ってくる。
咄嗟に口を押さえるが、浮き上がることが出来ない。
息止めも数秒も持たずに息を吐き出す。
(せんせ。せ、ん)
もう駄目だと意識が続かず目を閉じる。
派手な水音に一瞬頭が真っ白になる。
だが一度深呼吸して、すぐに行動に移す。
長兄は次兄に叫ぶ。
「お前は大人を。俺は」
次兄はうんと叫び踵を返す。
イネスをと、飛び込もうとして、しかし先に大人の人影が飛び込む。
しばらくして、リーマンとイネスが飛び出て来る。
川岸に上げられ、咳き込みながらも呆然としているイネスに、兄弟二人は飛びつく。
「イネス。大丈夫か」
その言葉に、ぎこちなく兄二人を見るとしがみついてくる。
恐る恐る二人に抱きついて、しゃっくりが上がったのを皮切りに、泣き叫ぶ。
「ご、ごわがっだぁああ」
イネスは大泣き。
「じぬがとおもっだぁ」
「うん。うん」
兄二人もごめんな。と抱きしめる。
(あのガキ。絶対にしばく)
リーマンが間に合ったから良かったものの。
危うく死ぬところだったと、すでに消えているアーケロン。
逃げ足だけは早いと舌打ちしながら三人の頭を撫でて抱きしめる。
それぞれ岩の上に座り、釣り糸が絡まないように距離を保っている。
リーマンから釣り道具を渡され、いいお魚期待しています。と送り出された。
会談が終わればすぐ駆けつけてくれるらしい。
「剣術がなくなったけど遊べるんだからいいよな」
兄二人は楽しげ。
授業が先生の事情でなくなったとはいえ、少々の罪悪感を感じるイネス。
「王様や王妃様だって人なんだからこういう息抜き覚えてたっていいだろう」
「うん」
兄の言葉に頷きながらも魚を釣る。
「とはいえ、私の場合は、昔の慣習で選ばれただけなんだけど」
何でも、王室の妃選びには必ず、女、若しくは女の産んだ一番近い子孫を候補者に選ぶべしと書かれている。
その事情もあって既に後継ぎ候補が二人もいた我が家に話が来たのである。
「どんな王子様なんだろうな」
「今度会えるから楽しみにしているんだ。お友達になれないかなって」
「そうだな」
兄二人は楽しげ。
そんな二人を見るのは楽しい。
「なんせ、下手に出掛けりゃあ、あのバカがイネスにちょっかいかけるしな」
「うん」
数年前、他の子たちと遊んでいたときに、アーケロンがちょっかいをかけ他の子も巻き込む大喧嘩になった。
それ以来イネスは領民と遊ぶことがない。
なので話し相手が出来るのは嬉しいのだろう。
リーマンがいるとやり返されるとわかっているからか、近寄ってこない。
できる限りリーマンがいてくれるのだが、隙を見つけてはちょっかいをかけてくる。
「先生が王子が好きな本教えてくれたんだ。面白かったから話ししたいな」
「ごめんな。兄たちあんまり本読まないからな」
「うんん。こうして兄上たちと遊べるんだから嬉しいよ」
笑顔を浮かべれば、兄たちは照れ臭そうに、釣り糸を見る。
「うおりゃああ」
唸り声に見た雄叫びに、イネスの身体が浮き上がり川へと落ちる。
「へっ?」
驚きの声を上げたのがまずかったのか、水に落ちると、すぐに口に水が入ってくる。
咄嗟に口を押さえるが、浮き上がることが出来ない。
息止めも数秒も持たずに息を吐き出す。
(せんせ。せ、ん)
もう駄目だと意識が続かず目を閉じる。
派手な水音に一瞬頭が真っ白になる。
だが一度深呼吸して、すぐに行動に移す。
長兄は次兄に叫ぶ。
「お前は大人を。俺は」
次兄はうんと叫び踵を返す。
イネスをと、飛び込もうとして、しかし先に大人の人影が飛び込む。
しばらくして、リーマンとイネスが飛び出て来る。
川岸に上げられ、咳き込みながらも呆然としているイネスに、兄弟二人は飛びつく。
「イネス。大丈夫か」
その言葉に、ぎこちなく兄二人を見るとしがみついてくる。
恐る恐る二人に抱きついて、しゃっくりが上がったのを皮切りに、泣き叫ぶ。
「ご、ごわがっだぁああ」
イネスは大泣き。
「じぬがとおもっだぁ」
「うん。うん」
兄二人もごめんな。と抱きしめる。
(あのガキ。絶対にしばく)
リーマンが間に合ったから良かったものの。
危うく死ぬところだったと、すでに消えているアーケロン。
逃げ足だけは早いと舌打ちしながら三人の頭を撫でて抱きしめる。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
好きな人の婚約者を探しています
迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼
*全12話+後日談1話
行き倒れ吸血鬼は勇者に尽したい
青空びすた
BL
お腹が空いて行き倒れた吸血鬼。
そんな彼を拾ったのは勇者だった。
献身的な看病で意識を取り戻した吸血鬼は、少しずつ彼に惹かれていく。
勇者への依頼で訪れた村、そこで目にしたもの。そして変わる彼らの関係。
勇者×吸血鬼のお話。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる