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精霊たち井戸端会議
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ご飯を食べ、リースティルが語りだす。
「僕から話す話じゃないかもしれないけれど、多分言わないだろうからね」
「はい」
なんだろうとワクワクしながら眺める。
「僕はね、七歳ぐらいの頃に師父達に引き取られたんだ。今から二十年程前のことだね」
「はい。確か魔導具技師になるためにと」
「も、あるんだけど、師父たちは時々親のいない子を最大で二人ほど教会からひきとって一人前に育ててくれてたんだ。中には相性の合わない子もいたらしいけど、きちんと成人まで見送ったそうだよ」
他にも兄弟がいると言うにはそういうことか。と頷く。
「僕もその一人であり、弟子として引き取られたのはたまたま器用だったからうちに来て覚えてみる?っていうレベルだったんだよね。ものづくり嫌いじゃなかったから頷いたんだけどね。引き取られてからは体を崩しやすくて気づいたら医者になりたいって思っていたね。二人に恐る恐る相談したらいいよ。ってお金やら勉強道具揃えてくれたのは今でも驚きだけど。あの二人はそこまで弟子に執着してないんだよね。子供はのんびり育てればいいや。ぐらいで」
だから、嫌だったら辞めていいんだよ。育児放棄はしない人だから。
と念押しされつつ続ける。
「当時僕は二十歳ぐらいかな。医者として勉強が佳境だった頃だね。師父が誘拐された」
「え?」
「誘拐と言っていいのかよくわからないんだけどね。戻ってきた本人も特に語らないし。記憶障害も少々あるから。精霊たちがいてなんでと思うかもだけど、召喚するときは体調とかも左右されるそうだからそういう時期だったんだろうね」
「誘拐」
そういえば、特に力を持っていて損はないとサジタリスは度々言っていたのを思い出す。
「十年近くかかって先生が発見したときは暗い部屋の中で拷問を受けた傷を治療もされないまま、鎖に繋がれひたすら魔導具を作らされていたそうだよ」
「師父」
思わず猫を抱きしめる。
「この国に戻ってきてから何度も脱走を試みたのか、何か脅されていたのか、必死にその部屋に戻ろうとしてたのは辛かった。数カ月経って、ようやく此処を認識し初めてね。今もここが夢で現実か、理解しにくい部分もあるそうだけど、ゆっくりと心を癒やしているところなんだ」
「俺、師父、好きです。優しい、から」
なのに、何故そんなひどいことができる人がいるんだと胸を抑える。
たかだか、魔導具じゃないか。
ちょっと便利で強力な道具なだけ。
師父に言えば快く教えてくれる技術じゃないか。
人に希望を与えくれる人なのに。
なのに。なんで。
「そうだよ。師父は優しい。だけど悪意ある人間のせいで何がなんだかわからなくなって体調を崩す。今も暗所恐怖症を持っているから暗い部屋では発作を起こす。君が来てからはだいぶマシになってたんだけど。久々に発作を起こしたんだね」
「俺、何かできることありますか?」
「んー。子育てしてる今、元気だから、君がいるだけで元気だと思うな」
「俺、何もできません」
「親に何もしてないようで、親は十分と幸せに笑ってるんだったら何か返せてるってことだって本人が言ってたし。まぁ、ハルシオ君にできることは早く、魔導具技師になっても、ならずとも一人前になって、すごいでしょ。って自慢できるようになることかなぁ。すっごく喜ぶよ」
「そう、なんですね」
「後植物好きだから今日は花とか買って帰るといいかもね」
「そうします」
今から行こうと食べ終わったお弁当を片付ける。
「あ。ついでに伝言頼んでいい?」
「はい?」
ララを抱き上げているリースティーンを見て、首を捻る。
「僕から話す話じゃないかもしれないけれど、多分言わないだろうからね」
「はい」
なんだろうとワクワクしながら眺める。
「僕はね、七歳ぐらいの頃に師父達に引き取られたんだ。今から二十年程前のことだね」
「はい。確か魔導具技師になるためにと」
「も、あるんだけど、師父たちは時々親のいない子を最大で二人ほど教会からひきとって一人前に育ててくれてたんだ。中には相性の合わない子もいたらしいけど、きちんと成人まで見送ったそうだよ」
他にも兄弟がいると言うにはそういうことか。と頷く。
「僕もその一人であり、弟子として引き取られたのはたまたま器用だったからうちに来て覚えてみる?っていうレベルだったんだよね。ものづくり嫌いじゃなかったから頷いたんだけどね。引き取られてからは体を崩しやすくて気づいたら医者になりたいって思っていたね。二人に恐る恐る相談したらいいよ。ってお金やら勉強道具揃えてくれたのは今でも驚きだけど。あの二人はそこまで弟子に執着してないんだよね。子供はのんびり育てればいいや。ぐらいで」
だから、嫌だったら辞めていいんだよ。育児放棄はしない人だから。
と念押しされつつ続ける。
「当時僕は二十歳ぐらいかな。医者として勉強が佳境だった頃だね。師父が誘拐された」
「え?」
「誘拐と言っていいのかよくわからないんだけどね。戻ってきた本人も特に語らないし。記憶障害も少々あるから。精霊たちがいてなんでと思うかもだけど、召喚するときは体調とかも左右されるそうだからそういう時期だったんだろうね」
「誘拐」
そういえば、特に力を持っていて損はないとサジタリスは度々言っていたのを思い出す。
「十年近くかかって先生が発見したときは暗い部屋の中で拷問を受けた傷を治療もされないまま、鎖に繋がれひたすら魔導具を作らされていたそうだよ」
「師父」
思わず猫を抱きしめる。
「この国に戻ってきてから何度も脱走を試みたのか、何か脅されていたのか、必死にその部屋に戻ろうとしてたのは辛かった。数カ月経って、ようやく此処を認識し初めてね。今もここが夢で現実か、理解しにくい部分もあるそうだけど、ゆっくりと心を癒やしているところなんだ」
「俺、師父、好きです。優しい、から」
なのに、何故そんなひどいことができる人がいるんだと胸を抑える。
たかだか、魔導具じゃないか。
ちょっと便利で強力な道具なだけ。
師父に言えば快く教えてくれる技術じゃないか。
人に希望を与えくれる人なのに。
なのに。なんで。
「そうだよ。師父は優しい。だけど悪意ある人間のせいで何がなんだかわからなくなって体調を崩す。今も暗所恐怖症を持っているから暗い部屋では発作を起こす。君が来てからはだいぶマシになってたんだけど。久々に発作を起こしたんだね」
「俺、何かできることありますか?」
「んー。子育てしてる今、元気だから、君がいるだけで元気だと思うな」
「俺、何もできません」
「親に何もしてないようで、親は十分と幸せに笑ってるんだったら何か返せてるってことだって本人が言ってたし。まぁ、ハルシオ君にできることは早く、魔導具技師になっても、ならずとも一人前になって、すごいでしょ。って自慢できるようになることかなぁ。すっごく喜ぶよ」
「そう、なんですね」
「後植物好きだから今日は花とか買って帰るといいかもね」
「そうします」
今から行こうと食べ終わったお弁当を片付ける。
「あ。ついでに伝言頼んでいい?」
「はい?」
ララを抱き上げているリースティーンを見て、首を捻る。
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