幸福からくる世界

林 業

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精霊たち井戸端会議

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レイアンがルーンティルの肩に乗っている。
その近くには薄透明な魚。

「レイアン、フィーアも一緒に行くんだ」
話しかければレイアンが舌を出しつつ目を細める。
喜んでいるので手を出したいが近くまで伸ばすと熱すぎるので止める。

薄透明の魚は、水精霊のフィーア。
海までお使いをお願いしていたため、ハルシオが出会えたのはここに来て一ヶ月ほど立った頃である。
お財布になりそうな皮袋にパンパンに詰め込まれた琥珀を多く含んだ心臓核を持って帰って、ハルシオのお腹にたまたま当たった痛みは今でも思い出せる。
癒やしを担当するらしく、慌てて精霊魔法で傷を癒やされたのはいい思い出。

「他の子たちも行くよ」
ウルカがハルシオの頭の上に現れ、オウルは肩に乗り移る。
最近の定位置。
オウルに関しては肩幅が出てきたと最近になって止まるようになった。
「皆、ってことは、あ、あの、ウィリーさんも?」
「道案内してくれるんだけど」
うぁと頭を抱えそうになる。

「悪い。待たせたな」
サジタリスが走ってやってくる。
「まぁ、サジいるから大丈夫でしょう」

裏庭へと続くドアを潜れば浮かんだランタンの側にいるジャックウィリー。

「!」
サジタリスを見てくるくると回る。
しかしルーンティルを見てから、気合を入れると前へと歩き出す。
「今のは」
「サジタリスをリスペクトはしているんだけど」
ルーンティルが歩き出し、後を追う。
「恐れ多いって感じかな」
「何かしたんですか?」
「初めてあったとき、ルーにちょっかいかけてたからカボチャを殴っただけだ」
「ちょっかい?いたずらってこと?」
「いや。契約してくれ契約してくれっていう感じの、いわゆるストーカーもどきかな」
ルーンティルが苦笑しながら告げる。
「あんまり植物精霊との相性良くないからあんまりする気はなかったんだけど、殴られて、しょんぼりしてたのがあんまりにも、可哀想?いや。気の毒?なんか憐れになって。ウルカが事情聞けばって言うから聞いたら、うちの裏庭を好きに手入れしたいって。此処は精霊の集会場と繋がる場所だからって。だから契約したんだ。あと植物精霊なのかなぁと」
「そうなんですね。じゃあ、師父。誰が一番付き合い長いんですか?」
「ウルカだね。子供の時から一緒。それからしばらくして、集会場に誘われてフィーアとオーランと契約。それから今の家を買ってから、旅行先でレイアンと。ジャックウィリーはここ五年ぐらいで出会ったんだっけ」
えっへんと胸を張っているが、オウルに調子に乗るなと言わんばかりにカボチャを突かれ、ごめんなさいと周囲を走り回る。

「オーラン。まだ案内中だから後でね」
「南瓜が弱点なんですか?」
「死ぬっていう意味では違うと答えるけど欠けると弱体化するみたいだね。修復するのに力を使っちゃう感じ」
ジャックウィリーは足を止めて、どうぞとランタンを前に出して道を譲ってくれる。
何?と不思議に思いつつもルーンティルに付いていく。



目の前に広がる光景に思わず眺める。
あらゆる動物、植物、人に類似した生物。

様々な生き物がそれぞれの生活環境にあわせてそこに在る。
オウルが飛び立ち、樹木の上にいる鳥の中へと。
ウルカが地面へと降り立つと周辺にいる動物たちへと声をかける。

フィーアも水辺へと。
レイアンはこちらをちらりと見てから地面へと飛び降りて岩山へと向かっている。


「さぁさぁ」
男の声に振り返れば、燕尾服を着たカボチャ頭。
基、ジャックウィリーがいる。
「今から君に友達を作る道標を与えよう」
「う、ウィリーさんが喋った。しかもなんかいい声なのがムカつく」
「酷い!というか、もっと耳を澄ましてご覧よ。ここでは精霊たちと人は会話ができるんだ。聞こえてくるぞ」
言われて耳を傾ければ、笑い声から世間話のような楽しそうな声が聞こえてくる。
「ヒトだ」
「契約しに来たんだよ。きっと」
「ヒトの子」
こちらを見ている精霊を眺め返す。

「ルシオ」
ペタペタと歩いてレイアンが来る。
一周りほど小さな青白いトカゲも一緒である。
「こいつがルシオと契約してもいいって。こいつも火蜥蜴の精霊だ」
若い男の声で喋っている。
「ハルシオ!この子が契約したいって。土精霊なんだよ」
犬に乗ってウルカが来る。
まるで小さな子供のような甲高い声。
「ルー。この子もいいって言っているわ。この子は水精霊よ」
フィーアは女性のような静かな声をかけられ、三毛猫がのんびりと後ろを歩いてくる。

「ハルシオ。契約方法は」
「待て。こいつもいいそうだ」
野太い声で、オーランが燕を連れてくる。


「じゃあ、まずは精霊に魔力を放つ。その魔力を気に入って貰えれば、次の段階。気に入らなかったり相性が悪いと精霊は立ち去る」
「それはそれで辛い」
「まぁ、無理して一緒にいることもないよ。とりあえず魔力を」
「あぁ。ご主人様。とりあえずその子の封印を解こうじゃないか」
「封印。解けるの?」
「あぁ。とはいえ膨大な量だし後で封印し直すとしても契約には魔力を使うからな」
ぽんぽんと頭を叩かれ、ハイ終わりと告げる。
「じゃ、魔力を」
燕と犬がごめんね。と一言告げて立ち去る。
「膨大すぎて潰されそうになったみたいだな」
サジタリスが二匹の様子を見て告げる。

申し訳無さにしょんぼりしながら残った二体を見る。
魔力を少量ずつ流せば、特に変化はなくこちらを見ている。
「じゃあ、一体ずつ、名前を付けてあげて」
「あ、えっと、猫さんの方は、えっと、ララ。蜥蜴さんの方は、クラーク」
「ララ。僕ララ」
「オレ、クラーク」
嬉しそうに跳ねる猫と、のんびりと答える蜥蜴。
「触ってご覧」
言われて恐る恐る抱き上げる。
ほんのりとした暖かさのクラーク。ひんやりとしたララ。
「今日からよろしく。主人」
「よろしく。オレの主様」
「うん。よろしく!」
「よし。封印し直そう。そして遊んでくるといい」
犬と燕が恐る恐る戻ってくる。
そして遊びに誘ってくる。
「行っておいで。見える範囲でね」
「はい」
大きく頷き、ルーンティルが見える場所で精霊と遊ぶ。
「ところで、ジャックウィリー」
「なんだい。ご主人様」
「君、本当に植物精霊?」
「どっからどう見ても植物じゃないか」
えっへんと胸を張る。
「封印を解いたり付けたりできる精霊って光とか闇じゃなかったかな?」
笑顔のルーンティルにジャックウィリーは胸を張ったまま。

「ティルが聞いているぞ。かぼちゃ野郎」
ウルカが前足を出し、オーランが木の上からかぼちゃを狙う。
「主人が聞いてんだ。うまそうなかぼちゃ突っついて中身出してやろうか」
「カボチャ。ささっと答えなさい」
「なんでみんな俺に厳しいんだよ」
「ティルに付きまとったの忘れてないんだからな」
しゃーと威嚇するウルカ。
「まぁいいや。何でも」
ルーンティルがウルカを抱き上げる。
「久々の精霊の集会だから挨拶しておいで」
「はーい」
ウルカが上機嫌で走っていく。

「ご主人」
「いつの日かデコピンね」
「そんなぁあ」
ジャックウィリーはすぐ近くの木の根本で体を丸める。

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