幸福からくる世界

林 業

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ある大陸のある国にて

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熱と痛みに目を開ける。

熱を持つ己の手や腕を見て手当がされていると頭の片隅で考えて飛び起きる。
ここは何処だと痛む体を押さえて部屋を出れば、イタチが目の前を駆け抜けていく。
なんだったんだ。と驚いて眺める。
「あ、起きた?」
優しげな青年がイタチを抱き上げて、見つめてくる。
イタチは反対側の肩にいた梟に威嚇され、威嚇を返している。

「こーら。オーラン。ウルカ」
優しい声で窘める青年に、しょんぼりと二匹は落ち込んでいる。

杖を付いて近づくと顔を覗き込んで、触れてくる。
「まだ熱があるみたいだね。事情とかあれば聞くけど、その前にベッドに戻ろうか」
「な、なんだよ。あんた」
「あ。僕?しがない魔導具技師、ルーンティル。よろしくね。こっちの梟がオーラン。イタチがウルカ」
「ま、ってこの大陸にたった一人だけの?」
「そうだね。色んな子達に教えたけど、皆別の道を進んでるよ。それよりベッドベッド」
背中を押され、ベッドに戻される。
「あ、あの。俺、あんた、じゃない。貴方の弟子になりたくて。それでこの国に」
「わかったわかった。その辺は傷を治したらね。ところで名前は?」
頭を撫でられ、何故か眠気が襲ってくる。
「ハオラン」
「わかった。ハオラン。今はゆっくり傷を癒やしなさい」
目を閉じれば子守唄が聞こえてくる。

「おやすみ。小さな子。おやすみ、愛しき子。精霊の腕に抱かれて眠れ。ゆらりと揺れる揺りかごの中。愛しき神の子。おやすみ。おやすみ。暖かな夢を見て眠れ。ハオラン」

何処か聞いたことある歌声に耳を傾けながら眠る。


ルーンティルは眠った子供の頭を撫でてから、おやすみなさいと告げて明かりを消して外に出る。

「今戻った。起きてたのか?」
「うん。でもとりあえず寝かせた。寝不足に栄養失調らしいからね。とりあえずはゆっくり休ませるよ。ウルカ。悪いけど、側にいてくれる?」
嬉しそうにきゅっと返事をして体を伝ってドアの中へ消えていく。

「こういうとき魚の出番だろ」
「フィーア?だったらお仕事頼んでるよ。どうしてもほしいものがあったから採取に行ってて」
「あの子供、引き取るのか?」
「弟子になりたいって言ってたし選択肢には入れてるけどとりあえず話聞いてからかな」
「ふぅん。続くといいな」
「引き取ったらとりあえず一人前にはしないとね。後は王に連絡入れて。申請書類の用意と」
「無理するなよ」
「久々に子育て。張り切っている」
嬉しそうに微笑む姿にそうかと笑い返す。

「とりあえず今日はもう寝るぞ」
「そうだね」
抱き上げられ、部屋へと連れて行かれる。


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