幸福からくる世界

林 業

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ある大陸のある国にて

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ルーンティルは、銀髪に銀に近い青い瞳を持つ。
彼は杖を付いたまま植木の植物に水を与える。

「おはよう。お水は美味しい?今日のは」
話しかけていれば、ドアが開く。
「あ、さ、サジ」
驚いて声を上げるルーンティル。

対してドアすら小さく感じてしまうほどの大男であるサジタリス。
のそりとドアを潜り、それからルーンティルを見下ろす。
「水やり、か?」
こくこくと何度も頷くルーンティル。
「そうか。元気なのか?」
不思議そうに葉っぱを突く姿に、頷く。
「サジがきて、更に嬉しそうにしてる」
それを聞いて、サジタリスは微笑む。
「そうか」
嬉しそうに植木に向ける笑み。
ルーンティルは思わず目をそらす。


イケメンの破壊力。と考えている横で、やっぱりまだ恐ろしいのか。と落ち込むサジタリス。

少し前の出来事に心と記憶が追いついていないのだろう。
あの時は人の区別も付かず、怖がられた。
そんな的はずれなことを考える。
「それより、飯ができた。食うぞ」
返事を返して、杖を付く。
だが、腰に手を当てられ、抱き上げられる。
「こっちのほうが早い」
足の腱を切られ、十数年、足の腱を治療して一年。
心と身体の傷を直しつつ、同時にリハビリを初めて半年ほど。
手足の筋力を戻しながらなので更に時間がかっている。
ルーンティルがまともに話せるようになったのも、半年前の事である。
冒険者として活躍中のサジタリスにとって、ルーンティルは足手まといだと自分で考え肩を落としつつ寄りかかる。
うろ覚えながらも彼に背中を預けてもらえるほどだったのに今では荷物も同然。

サジタリスはリビングにある椅子に座らせ、ひざ掛けを掛けてくれる。

それからお皿に乗っているトースターを机に置く。
「何かつけるか?」
「じゃあ、バターで」
サジタリスが、握りやすいように支えのある匙と四角いお皿に乗ったバターを置く。

「飲み物は」

何も落とさないようにと最新の注意を向けながらバターをトースターに塗るというリハビリ。
ほんの数ヶ月前までは一口サイズのパンを運ぶのにも四苦八苦していた。
だがその最中に横から声をかけられ、戸惑う。
「あ、えーっと」
「あるのはオレンジ、ミルク」
「じゃあ、オレンジで」

木のコップにオレンジを注いで側に置く。
「出来た!」
バターに塗れたと喜び、トースターを口に持っていき咀嚼する。
そしてトースターを置いて両手でコップを持って口に運ぶ。

落とさないように。
ひたすら注意をして、食事を続ける。


じっとこちらを見ながら食事をするサジタリスに、緊張しながらも口に運ぶ。

ほんの数年前までの記憶はほぼあやふや。
大事な誰かを闇の中で恋焦がれていたのだけは覚えている。
それとなくサジタリスに聞くが、その期間のことはわからない。とだけ言われた。
何か知ってそうだったが、答えてはくれなさそうだった。
自分で納得し理解しろと言うことなのはわかるが。

ほぼ会話のない食事を続ける。
「肉と野菜も食え」
そう差し出される野菜の入ったボウル。
頷いてフォークで刺して口にする。
バターやパンより、断然、美味しいと食べきってしまう。

「今日、俺は明日から三日、狩りに行ってくる。お前はリーンの家でいろよ」
「家で待ってても良いんだけど」
「断固として断る」
即答するので渋々出かける用意をする。
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