1 / 44
ある大陸のある国にて
1
しおりを挟む
ルーンティルは、銀髪に銀に近い青い瞳を持つ。
彼は杖を付いたまま植木の植物に水を与える。
「おはよう。お水は美味しい?今日のは」
話しかけていれば、ドアが開く。
「あ、さ、サジ」
驚いて声を上げるルーンティル。
対してドアすら小さく感じてしまうほどの大男であるサジタリス。
のそりとドアを潜り、それからルーンティルを見下ろす。
「水やり、か?」
こくこくと何度も頷くルーンティル。
「そうか。元気なのか?」
不思議そうに葉っぱを突く姿に、頷く。
「サジがきて、更に嬉しそうにしてる」
それを聞いて、サジタリスは微笑む。
「そうか」
嬉しそうに植木に向ける笑み。
ルーンティルは思わず目をそらす。
イケメンの破壊力。と考えている横で、やっぱりまだ恐ろしいのか。と落ち込むサジタリス。
少し前の出来事に心と記憶が追いついていないのだろう。
あの時は人の区別も付かず、怖がられた。
そんな的はずれなことを考える。
「それより、飯ができた。食うぞ」
返事を返して、杖を付く。
だが、腰に手を当てられ、抱き上げられる。
「こっちのほうが早い」
足の腱を切られ、十数年、足の腱を治療して一年。
心と身体の傷を直しつつ、同時にリハビリを初めて半年ほど。
手足の筋力を戻しながらなので更に時間がかっている。
ルーンティルがまともに話せるようになったのも、半年前の事である。
冒険者として活躍中のサジタリスにとって、ルーンティルは足手まといだと自分で考え肩を落としつつ寄りかかる。
うろ覚えながらも彼に背中を預けてもらえるほどだったのに今では荷物も同然。
サジタリスはリビングにある椅子に座らせ、ひざ掛けを掛けてくれる。
それからお皿に乗っているトースターを机に置く。
「何かつけるか?」
「じゃあ、バターで」
サジタリスが、握りやすいように支えのある匙と四角いお皿に乗ったバターを置く。
「飲み物は」
何も落とさないようにと最新の注意を向けながらバターをトースターに塗るというリハビリ。
ほんの数ヶ月前までは一口サイズのパンを運ぶのにも四苦八苦していた。
だがその最中に横から声をかけられ、戸惑う。
「あ、えーっと」
「あるのはオレンジ、ミルク」
「じゃあ、オレンジで」
木のコップにオレンジを注いで側に置く。
「出来た!」
バターに塗れたと喜び、トースターを口に持っていき咀嚼する。
そしてトースターを置いて両手でコップを持って口に運ぶ。
落とさないように。
ひたすら注意をして、食事を続ける。
じっとこちらを見ながら食事をするサジタリスに、緊張しながらも口に運ぶ。
ほんの数年前までの記憶はほぼあやふや。
大事な誰かを闇の中で恋焦がれていたのだけは覚えている。
それとなくサジタリスに聞くが、その期間のことはわからない。とだけ言われた。
何か知ってそうだったが、答えてはくれなさそうだった。
自分で納得し理解しろと言うことなのはわかるが。
ほぼ会話のない食事を続ける。
「肉と野菜も食え」
そう差し出される野菜の入ったボウル。
頷いてフォークで刺して口にする。
バターやパンより、断然、美味しいと食べきってしまう。
「今日、俺は明日から三日、狩りに行ってくる。お前はリーンの家でいろよ」
「家で待ってても良いんだけど」
「断固として断る」
即答するので渋々出かける用意をする。
彼は杖を付いたまま植木の植物に水を与える。
「おはよう。お水は美味しい?今日のは」
話しかけていれば、ドアが開く。
「あ、さ、サジ」
驚いて声を上げるルーンティル。
対してドアすら小さく感じてしまうほどの大男であるサジタリス。
のそりとドアを潜り、それからルーンティルを見下ろす。
「水やり、か?」
こくこくと何度も頷くルーンティル。
「そうか。元気なのか?」
不思議そうに葉っぱを突く姿に、頷く。
「サジがきて、更に嬉しそうにしてる」
それを聞いて、サジタリスは微笑む。
「そうか」
嬉しそうに植木に向ける笑み。
ルーンティルは思わず目をそらす。
イケメンの破壊力。と考えている横で、やっぱりまだ恐ろしいのか。と落ち込むサジタリス。
少し前の出来事に心と記憶が追いついていないのだろう。
あの時は人の区別も付かず、怖がられた。
そんな的はずれなことを考える。
「それより、飯ができた。食うぞ」
返事を返して、杖を付く。
だが、腰に手を当てられ、抱き上げられる。
「こっちのほうが早い」
足の腱を切られ、十数年、足の腱を治療して一年。
心と身体の傷を直しつつ、同時にリハビリを初めて半年ほど。
手足の筋力を戻しながらなので更に時間がかっている。
ルーンティルがまともに話せるようになったのも、半年前の事である。
冒険者として活躍中のサジタリスにとって、ルーンティルは足手まといだと自分で考え肩を落としつつ寄りかかる。
うろ覚えながらも彼に背中を預けてもらえるほどだったのに今では荷物も同然。
サジタリスはリビングにある椅子に座らせ、ひざ掛けを掛けてくれる。
それからお皿に乗っているトースターを机に置く。
「何かつけるか?」
「じゃあ、バターで」
サジタリスが、握りやすいように支えのある匙と四角いお皿に乗ったバターを置く。
「飲み物は」
何も落とさないようにと最新の注意を向けながらバターをトースターに塗るというリハビリ。
ほんの数ヶ月前までは一口サイズのパンを運ぶのにも四苦八苦していた。
だがその最中に横から声をかけられ、戸惑う。
「あ、えーっと」
「あるのはオレンジ、ミルク」
「じゃあ、オレンジで」
木のコップにオレンジを注いで側に置く。
「出来た!」
バターに塗れたと喜び、トースターを口に持っていき咀嚼する。
そしてトースターを置いて両手でコップを持って口に運ぶ。
落とさないように。
ひたすら注意をして、食事を続ける。
じっとこちらを見ながら食事をするサジタリスに、緊張しながらも口に運ぶ。
ほんの数年前までの記憶はほぼあやふや。
大事な誰かを闇の中で恋焦がれていたのだけは覚えている。
それとなくサジタリスに聞くが、その期間のことはわからない。とだけ言われた。
何か知ってそうだったが、答えてはくれなさそうだった。
自分で納得し理解しろと言うことなのはわかるが。
ほぼ会話のない食事を続ける。
「肉と野菜も食え」
そう差し出される野菜の入ったボウル。
頷いてフォークで刺して口にする。
バターやパンより、断然、美味しいと食べきってしまう。
「今日、俺は明日から三日、狩りに行ってくる。お前はリーンの家でいろよ」
「家で待ってても良いんだけど」
「断固として断る」
即答するので渋々出かける用意をする。
1
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
仄仄
papiko
BL
ルルニアは、没落寸前の男爵家の三男だった。没落寸前だというのに、貴族思考が捨てられなかった両親に売られ、伯爵家であるシルヴェルに引き取られた。
養子のルルニアと養父のシルヴェル、それから使用人たちの仄仄(ほのぼの)としたお話。
※かわいいを目指して。
※気持ちBL
※保険のR15指定
灰色の天使は翼を隠す
めっちゃ抹茶
BL
ヒトの体に翼を持つ有翼種と翼を持たない人間、獣性を持つ獣人と竜に変化できる竜人が共存する世界。
己の半身であるただ一人の番を探すことが当たり前の場所で、ラウルは森の奥に一人で住んでいる。変わらない日常を送りながら、本来の寿命に満たずに緩やかに衰弱して死へと向かうのだと思っていた。
そんなある日、怪我を負った大きな耳と尻尾を持つ獣人に出会う。
彼に出会ったことでラウルの日常に少しずつ変化が訪れる。
ファンタジーな世界観でお送りします。ふんわり設定。登場人物少ないのでサクッと読めます。視点の切り替わりにご注意ください。
本編全6話で完結。予約投稿済みです。毎日1話ずつ公開します。
気が向けば番外編としてその後の二人の話書きます。
冤罪で投獄された異世界で、脱獄からスローライフを手に入れろ!
風早 るう
BL
ある日突然異世界へ転移した25歳の青年学人(マナト)は、無実の罪で投獄されてしまう。
物騒な囚人達に囲まれた監獄生活は、平和な日本でサラリーマンをしていたマナトにとって当然過酷だった。
異世界転移したとはいえ、何の魔力もなく、標準的な日本人男性の体格しかないマナトは、囚人達から揶揄われ、性的な嫌がらせまで受ける始末。
失意のどん底に落ちた時、新しい囚人がやって来る。
その飛び抜けて綺麗な顔をした青年、グレイを見た他の囚人達は色めき立ち、彼をモノにしようとちょっかいをかけにいくが、彼はとんでもなく強かった。
とある罪で投獄されたが、仲間思いで弱い者を守ろうとするグレイに助けられ、マナトは急速に彼に惹かれていく。
しかし監獄の外では魔王が復活してしまい、マナトに隠された神秘の力が必要に…。
脱獄から魔王討伐し、異世界でスローライフを目指すお話です。
*異世界もの初挑戦で、かなりのご都合展開です。
*性描写はライトです。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
狼くんは耳と尻尾に視線を感じる
犬派だんぜん
BL
俺は狼の獣人で、幼馴染と街で冒険者に登録したばかりの15歳だ。この街にアイテムボックス持ちが来るという噂は俺たちには関係ないことだと思っていたのに、初心者講習で一緒になってしまった。気が弱そうなそいつをほっとけなくて声をかけたけど、俺の耳と尻尾を見られてる気がする。
『世界を越えてもその手は』外伝。「アルとの出会い」「アルとの転機」のキリシュの話です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
花交わし
nionea
BL
虎猫族(こびょうぞく)と犬狼族(けんろうぞく)は、友好関係を強固にするため、族長の血筋同士で婚姻関係を結ぶ事にした。
山を二つ隔てた距離を嫁入り行列は粛々と進む。
たどり着いた先で待つ運命を、担がれたまま進む花嫁達はまだ知らない。
※見た目耳と尻尾だけ獣な感じの獣人のお話
※同性同士でもお薬で体を作り変えて子供が出来る和風ファンタジー世界
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる