僕のおじさんは☓☓でした

林 業

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妹が両親と攻め立ててくる。
「気持ち悪い。ふざけんな」
「なんでお前はまともじゃないんだ」
「どうして。どうしてぇ」
殴りつけてくる父に泣きじゃくる母。

あぁ。俺、気持ち悪いんだなぁ。
男を好きってことがこんなに辛いのか。
普通じゃないってどうしてこんなに嫌われるんだろうか。

いいなぁ。
俺も家族みたいに異性を好きになりたかった。
もっと普通になりたかった。

でも、気づいた以上、戻れない。

いや。変わることができない。
変われない。


ホストを過ごして少しでも異性に興味を持たなければ。
俺は変わらなきゃいけない。
でも、正直、身も心も持たない。
店の人たちも、お客もみんないい奴らで。
俺だけは普通じゃない。
時々妹と父に殴られた場所が痛む。


俺は普通じゃない。
普通じゃないけれど、そんな俺にだって、好きになってくれる人がいる。





買い出しをして、車に載せてから家へと帰る。
「ただいま」
「あ、おかえり」
笑顔で迎えてくれるレン。
そしてキョウヘイはリビングで横になっている。

「今日は観音寺さんの代わりに草抜きと水やりしたんだ」
偉いでしょと胸を張るレン。
昨日足腰立たなくなったのはキョウヘイでした。
とはいえ、レンには腰の調子が悪いとだけ言ってある。
「そっか。レンは偉いな」
えっへんと嬉しそうなレンに、ケーキを示す。
「食後に食べような」
「わーい。冷蔵庫入れてくる」
えへへと楽しそうに走っていく。
ついでにと食材も冷蔵庫に入れてもらう。
「ソウスケのばーか」
「はいはい」
背中を撫でながらお酒を示す。
「今日は飲んでいいぞ」
がしりと掴まれるので手放す。


「んで、片つけてきたのか?」
「後は本人たち次第かな」
「相変わらず優しいこった」
「俺はいい大人じゃない」

キョウヘイが頭を撫でてくる。
「そんな大人を俺は甘やかして、褒める。よくやった」
何故か気が抜けてくる。
「なになに?おじさん。褒められることしたの?じゃあ、俺も、おじさん。すごいね」
レンが戻ってきてよくわからないまでも頭を撫でてくる。
「おうよ。おじさん。凄いからな」
敢えて胸を張れば、キョウヘイはお酒の蓋を開けている。


「あ。そうだ。レン。ちゃんと、佐藤君に謝るんだぞ」
「謝ったよ。聞いてくれなかったけど」
「レンは偉いな」
お返しにと頭を撫でれば、真似たのか胸を張る。



「で、この間の職業体験のまとめできたか?」
「あ、明日にはできる」
「そうか。楽しみだな」
笑顔を向ければ、明日頑張ると一人ぼやく。

「別に一日ぐらい宿題できなくてもいいだろう」
キョウヘイがお酒を飲みながらレンを見る。
「おじさん。こういうとき怖いんだもん」
「あー」
「ともかく、今度の遊園地楽しみだな。レン」
「うん!」
話題をそらすために告げればレンは大きく頷く。





この子は大きくなったとき
俺達の関係を知ったらどうするんだろうか。
妹のように拒否するのだろうか。
騙されたと怒鳴るだろうか。
それとも受け入れてくれるだろうか。


わからない。
わからないが、それでも、今はこの平穏を守りたい。

「なぁ、レン」
「んー?」
相変わらず酔の回ったキョウヘイに好き放題されているレン。
「ごめんな。こんな田舎に住んでて」
「別に平気だよ。佐藤君はともかく毎日楽しい」
「そっか」
「それより観音寺さん止めてくれない?」
しょうがないなぁとレンからキョウヘイを引き剥がす。


とりあえずレンの頭を撫でておく。
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