僕のおじさんは☓☓でした

林 業

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レンはバスを降りる。
眠い目を擦りつつ、忘れ物がないか確認して、運転手に礼を言ってからバスを後にする。
「車はあるけど、今日は置いてきたからバス使うぞ」
「んー」
眠そうな声を出して、はっと我に返る。
「わ、わかった」
ソウスケはゆっくりでいいからなと優しく声をかけてくる。
「あれ?きりちゃんじゃないか」
知らないおじさんがソウスケに声をかけてくる。
思わず背後に隠れる。
「さわちゃん。ひっさー。昨日ぶりー」
「てっきり旅行に行ったかと。そっちの可愛い子誘拐してきたのか?」
「今日から俺の家で住む甥っ子の」
頭を撫でられ、はっと気づいて頭を下げる。
「は、はじめまして。レンです」
「偉いな。俺は藤沢って言ってな。かんちゃん。じゃない。観音寺君と同業者なんだぞ。お、そうだ。途中まで送っていってやろうか?俺はもう帰るだけだしな」
「あー。レン。お前車は平気か?」
「え、あ。うん。おじさんがいいなら」
「よし。じゃあ。チョット待ってな。車回してくるからよ」
そう言うと走っていく。

しばらくしてやってきた車に乗り込む。
「お願いします」
「よろしく。さわちゃん」
「おうよ」
しばらく走っていれば、学校が目に入る。
「あ。あそこだ。あそこ。お前が通う学校」
「そうなんだ」
どんなところかと期待と、少しだけ恐れが芽生える。


「さわちゃん。この辺りで。近く歩きながらいくからさ。ありがとう」
「別にいいのに。んじゃあ。またな」
「ありがとうございました」
頭を下げて、車を見送る。
伯父の後を追いかけながら歩けば一軒家が見える。
周囲の家はまばらでほとんど畑。
人影も無く、鳥の声が響いてくる。

鞄を抱え直し、その一軒家の門を通る玄関の隣にある軒下に愛用のママチャリ。
「それ使って中学行くといい」
「ありがとう」
鍵は閉まっているので、どこかと聞けば玄関の中下駄箱上のコルクボードにかかっている。
「ただいまー。まだ帰ってないか」
返事を待ってから呟くと、こちらを見る。
「レン。お帰り」
「おじゃま、します」
「おう。靴はそのままでもいいし、下駄箱に入れてくれてもいいけど、出すのは一人一足までな。それ以外は部屋か下駄箱」
「うん」
とりあえず揃えて玄関先に置いておく。
「部屋は平屋なんで一階な」
「買ったの?」
「貸家だ」
そう告げて日当たりのいい洋室へと通される。
今まで使っていたベッドや机等の家具が適度な感じで配置されている。
驚いて振り返る。
「模様替えするか?」
「良い部屋だよ」
「この家は全部日当りがよくフローリングなんです。そういえば位牌って持ってきたのか?」
「え?あ、うん。じいちゃんたち持って行けって」
「仏壇は?ないよな。一応届いた荷物は名前が書いてないのは確認させてもらったけど」
「ダンボールの上に置いておけばいいかなって」
「今度の休みに買いにいこう」
額を抑えながら呟く。
「いいよ。適当で」
「位牌は見下ろすのはだめなんだ。ともかくそこまで良いのは買えないが、仏壇じゃなくとも最悪それ専用の棚を買おう」
「別にいいのに」
父母がこれなわけではない。
そう考えつつ鞄を下ろす。
祖父母に持たされた小箱から位牌を取り出して、ダンボールを探す。
「とりあえず此処」
位牌を示すのはタンスの上。
示されたままそこに置く。

「俺の部屋はこの通路の突き当りから一つ手前。同居人の部屋はその奥な」
おおよその間取りを聞いて頷く。
「ん。わかった」
「今日の晩飯は六時ぐらいだからそれまで好きに家の中を探検してもいいし、庭で遊んでもいい。ただし家から見えない位置には今日は行かないでくれ」
「おじさん。ありがとう」
「どういたしまして」
乱暴に頭を撫で回される。

「じゃ、俺リビングにいるからなんかあったら来いよ」
「あ、うん」

頷いて出ていく背中を見送る。
ベッドに座って、叩く。
それから天井を見て、もう家じゃないんだと改めて思い、嗚咽をこぼす。


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