僕のおじさんは☓☓でした

林 業

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無事、学校を卒業して、一週間、最後の荷物を送り終えて、最後まで置いておいた物と着替えを背中にバス停へ向かう。
「お、こっちこっち。れん」
待ち合わせ場所にいる伯父に、思わず駆け寄る。

「ソウスケおじさん」
「迎えに来たぞ。一緒に帰るけどいいよな」
乱暴に頭を撫でられ、うんと頷く。

バスに揺れながら伯父を見上げる。
今にも寝そうな伯父。
「おじさんって母さんたちと仲良かったの?」
眠そうに見下ろして、笑う。
「まーったく。仲なんて悪かったな。小さい頃は別として」
驚いて見れば微笑まれる。
「思春期になった頃に思いっきり殴られたことがある。そのぐらいには仲が良くなかった」
しかし頭を撫で回される。
「とはいえ、その子供を嫌いになれるほど、俺は人が出来てない」
「普通はいい人じゃないかな」
「残念ながら俺はいい人では無い。妹が結婚したことも子供が生まれたことも、俺は知らなかった。連絡の一つも無いからな」
何も言えずに目を逸らす。
「よくも悪くもお前のこと知らないから比較的にはすんなり受け入れる。後は同居人が承諾してくれたしな」
「尻に敷かれてるの?」
「そ、そんなことないぞ!」
垣間見える動揺に、敷かれてると理解する。
「そんな言葉よく知ってたな」
「友達が言ってた」
「最近の子供怖い」
「ソウスケおじさんって何してる人?」
「仕事か?俺は接客業。宿泊施設で働いている」
「へぇ。今忙しい?」
「お迎えに行くだけの余裕はある」
「ふぅん?観音寺さんは?」
「農家」
「お米?」
「それもだが基本は野菜だな」
「野菜か」
「あいつの野菜はうまいぞ」
思わず嫌だと思えば乱暴に頭を撫で回される。
満面の笑顔にやっぱり彼女だと考える。

「僕、お邪魔じゃない?」
「子供一人ぐらい俺は養える」

バスが休憩所へと停まり、コンビニ行くぞと連れて行かれる。
「体に悪いって母さんが」
「あとで野菜いっぱい食っときゃ一回ぐらい平気だろ」
呑気な伯父はあまり匂いがしないのを、とパン等を買っている。

「お、おじさん。あれは駄目?」
思わずレジ前のお惣菜のホットドックを示す。
「すぐ食べるならいいぞ」
「食べる」
即答すれば、ついでおにぎりと袋に入れて買う。
バスに座って出発前にと口にする。



食べ終わる前に出発し、食べ終わった頃には眠気が襲ってくる。
「寝てていいぞ」
「起きてる」
しかしおじに寄りかかっていつの間にか寝てしまう。


妹には似ていない甥っ子を眺める。
義弟似で良かったとも、似ていたら、引き取るのは辞めたのかと悩む。
同時に痛かったなぁと殴られた頬を撫でる。

妹が自分に対して嫌悪したきっかけは古くなった記憶の一つだが今でも思い出せる。
そして思いっきり殴られ、両親には色々とバラされ。
正直受験時期に何故修羅場を体験しなければ、とさえ思った。
大学進学と同時に家を出て、大学の寮に住んでいた。
家は引越し費用や、学費だけは出してくれていたがほとんど勘当同然で、バイトで食いつないでいた。


正直、今回妹の葬式に呼ばれたのも甥っ子がいるので親族会議に出ろとのことだった。
涙を耐えているのか、葬式では泣かない甥っ子が陰口を叩かれているのは不憫だと思った。

突然親に死なれて、葬式で泣けるものだろうか。
頼りになっていた人との別れ。
当時の自分ならまだ親と仲良くしていたから、帰宅途中で大泣きしていたかもしれない。
もうすぐ中学生とはいえ親がいて当たり前だった年頃の子。
しっかりした子だとは思うが、だからこそ頼れない人が多い中で泣くなど出来ないかもしれない。

親の代わりなど言うつもりはないし資格もないが、この子供を少なくとも伯父としては支えたい。

観音寺もいるからなんとかなるかと小さな頭を撫でる。

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