8 / 15
8
しおりを挟む
ドアを叩き、しばらく。
後ろにいる高橋が欠伸をする。
「お出かけ中じゃないですか?親父」
「とりあえず連絡してみましょうか」
電話を弄るソウマ。
入っていいかと連絡したのだと思いつつも眺める。
「なんでお前もいるんだ。ソウマ。高橋」
「俺は東郷さんに親父をお願いしますって言うの忘れてたんで」
「親父の恋人を見たさに」
「お前ら死にてぇのか」
家の中から電話が鳴り響いてくる。
(寝てんのか?)
「おーい。入るぞ」
合鍵を取り出して、中へと入る。
「タクマ?」
入ってすぐのトイレに寄りかかるように蹲るタクマ。
「タクマ!おい。タクマ」
「あ、れ?とう、まさん?」
虚ろな瞳に、体を支える。
転がっているペットボトルを見る。
高橋が冷蔵庫から水を取って渡してくるので飲ませる。
「そんな時間、なんですね」
ぼんやりとした様子に、立ち上がろうとして足に力が入っていない。
高橋と肩を貸して、玄関前へと移動させる。
病院で必要なものを回収する。
ソウマが車を回しているのを待つ。
「いつから吐いてたんだ」
「え、あ、わかんないんです。水飲んでも全部吐いてしまって。目を閉じても開けてもカエデたちがいて。もう、いいやーってなって」
回された車に乗せて急いで病院に向かう。
ぼんやりと、車の中を眺めるタクマ。
「とうま、さん。二人のとこ、行きたいです。いいですか」
「許さん」
即答する彼に、不安そうに鏡越しに見る運転中のソウマ。
「許してください」
「目閉じてろ。二人の代わりには到底及ばないが俺がいる」
寄りかかるようにと肩に手を回される。
当麻は震える手を誤魔化すように肩で押さえる。
高橋が病院に電話をして事情を話している。
「俺がいるから側から離れんな。俺だけ見てればいいんだ」
もう失うのは嫌だと病院へ急がせる。
病院のベッドで点滴を受けているタクマの手を握る。
「今日会う日で良かった」
「脱水症状だそうですよ」
医者の説明から受付まで対応していた高橋が顔を出す。
「親父。お金払っときましたよ」
「あぁ。助かる。先帰っといていいぞ」
「いえ。途中まで送ります。外いますんで帰るとき声かけてくださいね」
看護師に挨拶して、出ていく。
手を握って額に当てる。
「居なくなるのはもう勘弁してくれ」
指先が動いたのに気づいて、顔を覗き込めば、目が開く。
「当麻さん?」
「起きたか。体は平気か?」
「楽になりました」
「薬は少し軽いのに変えるらしい」
「そう、ですね。もうちょっと早く先生に言っておけばよかったです」
「俺はお前をまだ妻子のとこにはやらないからな」
「わかってますよ」
苦笑しながら点滴が終わったのを見て体を起こす。
「苦しくても一緒に生きるって決めたばっかですからね」
微笑む顔に、意識朦朧としていたときにいったことは何だという疑問を必死に飲み込む。
後ろにいる高橋が欠伸をする。
「お出かけ中じゃないですか?親父」
「とりあえず連絡してみましょうか」
電話を弄るソウマ。
入っていいかと連絡したのだと思いつつも眺める。
「なんでお前もいるんだ。ソウマ。高橋」
「俺は東郷さんに親父をお願いしますって言うの忘れてたんで」
「親父の恋人を見たさに」
「お前ら死にてぇのか」
家の中から電話が鳴り響いてくる。
(寝てんのか?)
「おーい。入るぞ」
合鍵を取り出して、中へと入る。
「タクマ?」
入ってすぐのトイレに寄りかかるように蹲るタクマ。
「タクマ!おい。タクマ」
「あ、れ?とう、まさん?」
虚ろな瞳に、体を支える。
転がっているペットボトルを見る。
高橋が冷蔵庫から水を取って渡してくるので飲ませる。
「そんな時間、なんですね」
ぼんやりとした様子に、立ち上がろうとして足に力が入っていない。
高橋と肩を貸して、玄関前へと移動させる。
病院で必要なものを回収する。
ソウマが車を回しているのを待つ。
「いつから吐いてたんだ」
「え、あ、わかんないんです。水飲んでも全部吐いてしまって。目を閉じても開けてもカエデたちがいて。もう、いいやーってなって」
回された車に乗せて急いで病院に向かう。
ぼんやりと、車の中を眺めるタクマ。
「とうま、さん。二人のとこ、行きたいです。いいですか」
「許さん」
即答する彼に、不安そうに鏡越しに見る運転中のソウマ。
「許してください」
「目閉じてろ。二人の代わりには到底及ばないが俺がいる」
寄りかかるようにと肩に手を回される。
当麻は震える手を誤魔化すように肩で押さえる。
高橋が病院に電話をして事情を話している。
「俺がいるから側から離れんな。俺だけ見てればいいんだ」
もう失うのは嫌だと病院へ急がせる。
病院のベッドで点滴を受けているタクマの手を握る。
「今日会う日で良かった」
「脱水症状だそうですよ」
医者の説明から受付まで対応していた高橋が顔を出す。
「親父。お金払っときましたよ」
「あぁ。助かる。先帰っといていいぞ」
「いえ。途中まで送ります。外いますんで帰るとき声かけてくださいね」
看護師に挨拶して、出ていく。
手を握って額に当てる。
「居なくなるのはもう勘弁してくれ」
指先が動いたのに気づいて、顔を覗き込めば、目が開く。
「当麻さん?」
「起きたか。体は平気か?」
「楽になりました」
「薬は少し軽いのに変えるらしい」
「そう、ですね。もうちょっと早く先生に言っておけばよかったです」
「俺はお前をまだ妻子のとこにはやらないからな」
「わかってますよ」
苦笑しながら点滴が終わったのを見て体を起こす。
「苦しくても一緒に生きるって決めたばっかですからね」
微笑む顔に、意識朦朧としていたときにいったことは何だという疑問を必死に飲み込む。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる