鬼は精霊の子を愛でる

林 業

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鬼人族。
獣人族の括りの種族であり、人族から見れば、魔物のゴブリンやオーガと大差ないらしいが、全く違う。
人で言う猿と人間ぐらい違う。
何が違うかと言うと、まず肉体が細マッチョなのが多い。
見境なく襲うということもないし、きちんとある程度の分別は付く。
武器は鈍器よりは刃物を得意としている。
強さを最もとし、首都に行くと戦士とも呼ばれる。
何よりゴブリンやオーガより強い。


獣人国の首都より大きくな離れた鬼人族の村。
モリオンはそこで産まれた。
モリオンは赤毛や金髪など多い鬼人族の中でも全く類を見ない色をしていた。
それは黒。
目も髪も、真っ黒。
家族で赤毛であるにも関わらず真っ黒。

家族は母の浮気を疑ったそうだが、それは直ぐに払拭されたらしい。
何でも父より強い戦士が、当時いなかったこと。
また、精霊がそれを否定したからだと言う。

父母は、色の違うモリオンに対して、個性と受け止めてくれた。
だが周囲の村人たちはそうはいかなかった。

子供たちは自分をいじめ、大人は父母に陰口を叩き出した。
やめてくれと叫んでも、怒りに任せて拳を震っても、それは収まるどころかさらに非難される物となった。
両親はそんな自分を捨てることなく育ててくれて感謝しかない。

それから五十年。
ろくな嫁も取れず、周囲の幼馴染みたちすら連れ添いをもらっているのを冷ややかに眺める日々。
むしろ、今まで陰口を叩いていた彼らと付きたいたいとは思っていなかった。


十年前、村を捨てようかと何度も思ったが、父母は故郷を捨てるのを躊躇った。
そして、他の村へと向かったところで今よりも扱いが良くなるとは思えなかったそうだ。
だけど、そんな日々だったがある日、父は狩りの最中に死んだ。
仲間を庇い、死んでいった。
母はその後、心労が祟って後を追うように無くなった。


自分は山の麓で一人暮らすことにした。
村に居れば罵りを受ける。
ならば、と思った。
だけど、いつの間にか二人暮らしになっていた。
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