細やかな愛情

林 業

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アオイが免許書をレオンに示す。
「取ったぞ」
「おめでとう」
レオンは素直に褒めて、アオイは満足げ。

「葵 双葉」
免許書の名前を見て視線を反らしてから今一度見る。
思わず立ち上がる。
「あれ?アオイって名字だったのか!」
「言ってなかったか?フタバが名前だけど」
アオイは不思議そうに聞いてくる。
「代々木のおじさんから聞いているんだと思ってた」
「聞いてない。いや。不思議だと思ったんだよ。親父がなんでアオイの名前を呼ぶのか。そこまで気に入っているんだと」
「仕事じゃあ名字だけだしな。それに名前は祖父母が付けてくれたぐらいであまり思い入れないからあんまり名乗らないんだよ」
「じゃあ、フタバって呼ぶ」
「アオイがいい。むしろ名前はいやだ」
「なんでだよ」
「兄がヨウ。葉っぱって書いて葉と呼ぶんだけど、名前が似てるってわかってるから正直薄ら気味悪い」
「あ、はい」
真剣な眼差しにそれならと頷く。
だがと一つ不思議に思う。
アオイ ヨウ
何となく呼びにくいなぁと考える。
「兄は立花 ヨウ。俺はおばあちゃんの養子に入ってるから親兄弟とは名字は違う。母方の祖父母なんで、父親の名前になる」
納得したと頷くレオン。

アオイの持つ携帯が鳴り、葵は免許書を片付けながら電話を取る。
「あ、弁護士。話ししてくる」
アオイが部屋へと戻っていく。
旅館と親についてだろう。
現在、両親と兄を訴えているとのこと。
祖母からのお金を勝手に使い込まれたことや、家を不法占拠していることについて。
また旅館売買についても、だそうだ。
弁護士といろいろと相談することが多いらしい。


電話をしている間にと飲み物を入れていれば思ったより早く戻ってくる。
「どうだった?」
「うん。今ん所問題ないってさ」
「そうか」
「一応旅館も閉館したし、売却も決まりそうだからあとは明け渡しだけだって」
この間勝手だがタカシとダタシを連れて、ゴミ屋敷となっている家から電化製品を回収してきていた。
アオイにしてみれば自分が買ったものだからという理由らしい。
そこも認められているそうだ。
旅館に関しては家電ごと手放す予定らしい。
どうやら旅館の再生を謳っている会社に売れたらしい。


「旅館売れたら一度俺の国に遊びに行かないか?」
「遊びにか。それもいいかもなぁ。両親と兄が良からぬことをするかもと言われたしな」
「良からぬこと?」
「なんか、俺に危害を加えるとかいう話」

そんな危機感の薄いアオイに、早めに旅行の計画しようと押し切ることにする。
後誕生日も書いてあったのでちゃっかり覚えた。
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