36 / 46
第一章
夢
しおりを挟む『ドリサ空港』と書かれた建物。
その受付のすぐ奥の発射場にて。
太いロケットのような形の飛行船が飛び立とうとしていた。
ラヴィポッドは手続きを済ませ、あとは乗るだけというところで、ドリサの皆と別れの挨拶を交わす。
「世話になった。母親を見つけた後でも、疲れた時でもいい。また戻ってこい。歓迎する」
ダルムは内心、心配もあるのだろうがこの場でそれを口にはしなかった。
いつでもいい。
ドリサはラヴィポッドが帰って来ていい場所なのだと。
どっしりと構え、それだけを伝える。
「は、はい! こちらこそご飯ありがとうございました!」
出会った当初に比べれば、ラヴィポッドも怯えることなく話せるようになった。
初めは見ただけで失神しそうになっていたのだから。
「貴女は立派よ。凄いんだからもっと胸張ってシャキッとなさい」
ルムアナは知っている。
ラヴィポッドは普段ビクビクしていても、いざという時には誰かのために動ける子だということを。
だからこそできれば自分たちだけでなく、多くの人にその凄さを知ってもらいたい。
「こ、こうですか?」
精一杯胸を張ってふんぞり返る。
「その調子よ」
ルムアナが微笑む。
立派というより、かわいらしさが印象としては先にくるが、それもラヴィポッドらしくて良いのかもしれない。
「ぜってぇ負けねえから!」
アロシカの宣言。
「……ゴブリンにですか?」
ラヴィポッドには伝わらなかったようで首を傾げるばかり。
「ちげーよ……まあいいか。怪我すんなよ」
負けたくない。
そう口にしたが、本音は追いつきたいだけ。
愛らしい少女に。
絶望の淵にいた村の皆を救ってくれた魔術師に。
次会ったときは実力だけでも隣に並べるようになりたいから。
「け、怪我は痛いですもんね」
アロシカの原動力は何なのか。
ラヴィポッドはついに気づくことがなかった。
「マフェッドさん、見つかるといいね」
ハニはラヴィポッドの母に魔術の教えを受けていた。
その行方は気になるところ。
娘を置いて一人で出ていく人には見えなかった。
何か理由があるのだろう。
ラヴィポッドも少し変わっているが良い子なので、親子の再会を切に願っていた。
「王都に行くって言ってたんですよね?」
「うん。会えたら私のことも伝えといて。親子揃って会いに来てくれたら嬉しいな」
「わかりました……!」
母に会う理由が一つ増えた。
ハニが見つけられると信じて話してくれるからか、母のことを考えても後ろ向きにならずにいられる。
ハニのことを報告したり、ゴーレムを見せたらどんな顔をするのか。
会える時が更に楽しみだ。
「チビ、これあげる」
ユーエスからは箱を手渡された。
「あ、ありがとうございます」
開けてもいいですか?
と一言あっても良さそうだが、そういった気遣いにはまだ疎いラヴィポッド。
受け取るなり、箱を開けて中身を確認する。
「笛だ!」
箱から出てきたのは銀色のホイッスル。
「その笛を吹くと、音に乗せてすごく小さなマナを拡散させることができるんだ」
ラヴィポッドのために特注で作ってもらったものだ。
一般的には不要なものだろう。
微弱なマナを拡散したところで何ができるのか。
ラヴィポッドも用途がわかっていないようだが。
「チビが笛を吹けば三体のゴーレムを同時に起動できる筈だよ。一体ずつ起動する時間もないようなピンチの時に使ってね」
ラヴィポッドの出発に合わせてプレゼントをしよう。
そう思ったは良いものの、喜びそうなものを考えると食べ物しか浮かばなかった。
そんな中、ゴーレム起動の条件を聞いたときピンときた。
用途を聞いたラヴィポッドの目が輝いていく。
「すごい! すごいですね! ではさっそく……」
興奮して笛を吹こうとするも、ユーエスに止められた。
「ブリザードゴーレムが出ると一面氷漬けになるから、時と場所を考えて慎重に使うように」
コクコクと頷き、笛を吹くのはやめて紐を首にかけるだけに止める。
気に入ったのか指でチョイチョイとつついて頬を綻ばせた。
「ありがとうございます、騎士さん!」
名を呼ばないのは他人行儀だと思う人もいるかもしれない。
けれどユーエスにとって、騎士と呼ばれることは何よりも誇らしかった。
「うん。こっちも色々ありがとう」
ユーエスがしゃがみ、ラヴィポッドの頭を撫でる。
ダルムにラヴィポッドのお守りを任された時、最初は面倒なことを押し付けられたと思った。
やたら食べるし。
すぐ逃げ出そうとするし。
ベッドを使わせろと我がままを言うし。
だけど。
忙しい毎日。
一人の時間が減って自責の念に駆られる暇も無くなっていた。
その事実に気づくまで、随分と時間がかかってしまった。
ラヴィポッドと過ごしている間は、いつもより心穏やかにいられたのだと。
「チビといるの、楽しかったよ」
楽しい。
そんな当たり前の感情を抱けたのはいつ以来だろうか。
「わ、わたしも──」
「お客様~! そろそろ出発ですのでご搭乗くださーい!」
ラヴィポッドの言葉を遮り、フライトキャップを被った大きなツバメが羽ばたきながら出発を告げる。
「ほら、時間だって」
ユーエスに促されて、ラヴィポッドが進む。
途中で振り返り、
「わたしも! 楽しかったです!」
元気いっぱいにそういって飛行船に乗り込んだ。
窓に張り付き大きく手を振る。
ドリサの皆も手を振り返してくれた。
ドリサ騎士団、ドリサ家の使用人たち、スモーブローファミリーに大工の親方の姿まであった。
こうしてみると、本当にたくさんの人と関わっていた。
もう声は届かない。
だからせめて、皆の顔が見えなくなるまで。
飛行船が離陸すると、急に実感が込み上げてきた。
顔が見えなくなったら、もうしばらく会えないのだと。
しっかり目に焼き付けておきたいのに、皆の顔が滲む。
ゴシゴシと袖で涙を拭うと、皆呆れたように笑っていた。
「ばいばぃ……」
掠れた声で呟く。
一か月と少し。
それほど長くはなかったけど。
皆との出会いが良いものだったから。
臆病なラヴィポッドでも、自然と旅を続けようと思えた。
次はどんな出来事が待っているかな。
どんな出会いが待っているかな。
鼻水をすする。
気持ちを切り替えられるのは……もう少し先になりそうだ。
その受付のすぐ奥の発射場にて。
太いロケットのような形の飛行船が飛び立とうとしていた。
ラヴィポッドは手続きを済ませ、あとは乗るだけというところで、ドリサの皆と別れの挨拶を交わす。
「世話になった。母親を見つけた後でも、疲れた時でもいい。また戻ってこい。歓迎する」
ダルムは内心、心配もあるのだろうがこの場でそれを口にはしなかった。
いつでもいい。
ドリサはラヴィポッドが帰って来ていい場所なのだと。
どっしりと構え、それだけを伝える。
「は、はい! こちらこそご飯ありがとうございました!」
出会った当初に比べれば、ラヴィポッドも怯えることなく話せるようになった。
初めは見ただけで失神しそうになっていたのだから。
「貴女は立派よ。凄いんだからもっと胸張ってシャキッとなさい」
ルムアナは知っている。
ラヴィポッドは普段ビクビクしていても、いざという時には誰かのために動ける子だということを。
だからこそできれば自分たちだけでなく、多くの人にその凄さを知ってもらいたい。
「こ、こうですか?」
精一杯胸を張ってふんぞり返る。
「その調子よ」
ルムアナが微笑む。
立派というより、かわいらしさが印象としては先にくるが、それもラヴィポッドらしくて良いのかもしれない。
「ぜってぇ負けねえから!」
アロシカの宣言。
「……ゴブリンにですか?」
ラヴィポッドには伝わらなかったようで首を傾げるばかり。
「ちげーよ……まあいいか。怪我すんなよ」
負けたくない。
そう口にしたが、本音は追いつきたいだけ。
愛らしい少女に。
絶望の淵にいた村の皆を救ってくれた魔術師に。
次会ったときは実力だけでも隣に並べるようになりたいから。
「け、怪我は痛いですもんね」
アロシカの原動力は何なのか。
ラヴィポッドはついに気づくことがなかった。
「マフェッドさん、見つかるといいね」
ハニはラヴィポッドの母に魔術の教えを受けていた。
その行方は気になるところ。
娘を置いて一人で出ていく人には見えなかった。
何か理由があるのだろう。
ラヴィポッドも少し変わっているが良い子なので、親子の再会を切に願っていた。
「王都に行くって言ってたんですよね?」
「うん。会えたら私のことも伝えといて。親子揃って会いに来てくれたら嬉しいな」
「わかりました……!」
母に会う理由が一つ増えた。
ハニが見つけられると信じて話してくれるからか、母のことを考えても後ろ向きにならずにいられる。
ハニのことを報告したり、ゴーレムを見せたらどんな顔をするのか。
会える時が更に楽しみだ。
「チビ、これあげる」
ユーエスからは箱を手渡された。
「あ、ありがとうございます」
開けてもいいですか?
と一言あっても良さそうだが、そういった気遣いにはまだ疎いラヴィポッド。
受け取るなり、箱を開けて中身を確認する。
「笛だ!」
箱から出てきたのは銀色のホイッスル。
「その笛を吹くと、音に乗せてすごく小さなマナを拡散させることができるんだ」
ラヴィポッドのために特注で作ってもらったものだ。
一般的には不要なものだろう。
微弱なマナを拡散したところで何ができるのか。
ラヴィポッドも用途がわかっていないようだが。
「チビが笛を吹けば三体のゴーレムを同時に起動できる筈だよ。一体ずつ起動する時間もないようなピンチの時に使ってね」
ラヴィポッドの出発に合わせてプレゼントをしよう。
そう思ったは良いものの、喜びそうなものを考えると食べ物しか浮かばなかった。
そんな中、ゴーレム起動の条件を聞いたときピンときた。
用途を聞いたラヴィポッドの目が輝いていく。
「すごい! すごいですね! ではさっそく……」
興奮して笛を吹こうとするも、ユーエスに止められた。
「ブリザードゴーレムが出ると一面氷漬けになるから、時と場所を考えて慎重に使うように」
コクコクと頷き、笛を吹くのはやめて紐を首にかけるだけに止める。
気に入ったのか指でチョイチョイとつついて頬を綻ばせた。
「ありがとうございます、騎士さん!」
名を呼ばないのは他人行儀だと思う人もいるかもしれない。
けれどユーエスにとって、騎士と呼ばれることは何よりも誇らしかった。
「うん。こっちも色々ありがとう」
ユーエスがしゃがみ、ラヴィポッドの頭を撫でる。
ダルムにラヴィポッドのお守りを任された時、最初は面倒なことを押し付けられたと思った。
やたら食べるし。
すぐ逃げ出そうとするし。
ベッドを使わせろと我がままを言うし。
だけど。
忙しい毎日。
一人の時間が減って自責の念に駆られる暇も無くなっていた。
その事実に気づくまで、随分と時間がかかってしまった。
ラヴィポッドと過ごしている間は、いつもより心穏やかにいられたのだと。
「チビといるの、楽しかったよ」
楽しい。
そんな当たり前の感情を抱けたのはいつ以来だろうか。
「わ、わたしも──」
「お客様~! そろそろ出発ですのでご搭乗くださーい!」
ラヴィポッドの言葉を遮り、フライトキャップを被った大きなツバメが羽ばたきながら出発を告げる。
「ほら、時間だって」
ユーエスに促されて、ラヴィポッドが進む。
途中で振り返り、
「わたしも! 楽しかったです!」
元気いっぱいにそういって飛行船に乗り込んだ。
窓に張り付き大きく手を振る。
ドリサの皆も手を振り返してくれた。
ドリサ騎士団、ドリサ家の使用人たち、スモーブローファミリーに大工の親方の姿まであった。
こうしてみると、本当にたくさんの人と関わっていた。
もう声は届かない。
だからせめて、皆の顔が見えなくなるまで。
飛行船が離陸すると、急に実感が込み上げてきた。
顔が見えなくなったら、もうしばらく会えないのだと。
しっかり目に焼き付けておきたいのに、皆の顔が滲む。
ゴシゴシと袖で涙を拭うと、皆呆れたように笑っていた。
「ばいばぃ……」
掠れた声で呟く。
一か月と少し。
それほど長くはなかったけど。
皆との出会いが良いものだったから。
臆病なラヴィポッドでも、自然と旅を続けようと思えた。
次はどんな出来事が待っているかな。
どんな出会いが待っているかな。
鼻水をすする。
気持ちを切り替えられるのは……もう少し先になりそうだ。
10
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる