優しさ

ユウ

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優しさ

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ただひたすらに、街灯が照らす自宅への道を1人突っ走っていた。


仕事場から逃げるように走った。


『まだお前は終わらないのかっ?!』

『もう少し効率よくしていこーよー』


まだ頭に残っている声に心がはち切れそうだ。

そんなに言うなら手伝ってくれても良いじゃないか?!
お前は私の何を知っているのだ?


そんな事を考えて考えて、やっと見覚えのある扉が目の前に立ちはだかった。


「……家だ……」


そう声に出すと先程までの痛みが少しだけ和らいだ気がして、肩で息をする。


目の前の取手にそっと手を伸ばす、が私よりも先に扉が開いた。


「あぁやっと帰ってきたな」


その先には愛しい奴が笑っていた。


「あ、うん……あ、その、えっと」

何を言えばいいのだろう。
焦れば焦るほど急激に体温が下がっていくのを感じた。

「……そんなに焦らなくても大丈夫だよ。君が疲れている事も、頑張っている事も、辛い事も……全部分かっているから」


そう奴は笑って私の腕を引っ張り自身の中に取り込んだ。

「おかえり。それから……お疲れ様」

「……っ……!」

その一言で私の心が軽くなったと同時に、視界が滲んでいた。

「君は……なんでも溜め込んじゃうから、絶対に壊れちゃうよ?」


──だから少しだけでもここで休んでいけばいい



そう奴は笑って『優しさ』という大きな手で私の頭を撫でて笑っていたのだった──。
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