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第四章
大人達の会議⑥
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〈父:フリッツィSide〉
アーデルハードの答えにサロン内の空気が重苦しくなる。
「アーデルハード…、それはどういう事だい…?」
「言葉の通りですよ、兄上。ハンナの懐妊が分かった時に、私達は悪魔の選択をしたのです。
これ以上カーラの醜聞が社交界に広まる前に処分しようと。
フォーゲル家の跡継ぎは煩わしいカーラではなく、新たに産まれてくるお腹の子にしようと。
カーラはウィルフリードくんを前にすれば絶対に暴走する。そうなれば騒ぎを起こした張本人の責任としてカーラを処断し、北の修道院に送ろうと計画していたのです…。
もちろん今はそんな恐ろしい事は思っていませんっ!!
エルシーアちゃんの七色の魔力の効果なのかわかりませんが、今は頭がとてもスッキリしているのです。
今思えば、何故あんな恐ろしい事を当たり前の様に考えていたのか…」
アーデルハードが自分の前髪をくしゃりと乱し項垂れる。
普段の儚げで楚々とした姿とは全く違う憔悴っぷりに、本当に後悔をしている様子が伺える。
【カーラが付けていた香水『惑わす者』は、人間が心の奥底に持つ負の感情を徐々に表面化させる効果がある。
香水の効果は本人だけでなく、その臭いを嗅いだ周囲の人間にも影響を与える。
アーデルハードとハンナはカーラの最も身近にいる人間だ。それだけ『惑わす者』の影響が強かったのであろうよ】
これまでエミリーの膝の上でくつろいでいたシロガネ殿が、顔を起こしカーラ嬢の香水の効果を説明する。
『惑わす者』…。恐ろしい効果を持つ香水だ。
しかし──
「──シロガネ殿、喋ってしまってよろしいのですか?」
エミリーの向かいに座るアーデルハードの様子を確認すると、案の定、驚きの表情をしている。
【ちょうどいいタイミングだったのでな。
フリッツィ、我とペルルをアーデルハードに紹介し、エルシーアの事を説明せよ】
そう言うと、シロガネ殿とペルル殿はエミリーと妻の膝の上からそれぞれサロンのテーブルの上にぴょんと飛び乗り、アーデルハードの方を向く。
「アーデルハード。まずは何も言わず、わたしの話を聞いて欲しい。
このおふたりの名前だが、虎模様の白猫がシロガネ殿。そして隣のカーバンクルがペルル殿だ。
おふたりとも人語を解する事ができる。ここまではよいか?」
「えぇ…、兄上。先程の騒動でシロガネ様とペルル様がエルシーアちゃんと話しているのを見ましたから。やはり夢ではなかったのですね」
「あぁ。それで話はここからが本番だ。
アーデルハード、この屋敷に着いてから見聞きした事、そしてそれから見聞きする全ての事は一切他言無用とする。ハンナ夫人、カーラ嬢にも話してはならない。
万が一、ほんの少しでもここで見聞きした事を外に漏らす様な事があれば、その命は無いと心得よ」
もしここでアーデルハードが少しでも躊躇う様子を見せるのであれば、闇魔法に精通しているエミリーに今日の出来事全てを記憶から抹消してもらう必要が出てくる。
初めからハンナ夫人とカーラ嬢から今回の騒動の記憶を抹消するつもりであった。
そこにアーデルハードの記憶まで抹消してしまうと、復活した邪神の手がかりを得るのが難しくなってしまう。
できればアーデルハードには王家の裏の番犬の一員として、邪神の封印に力を貸して欲しいところだ。
「わかりました、兄上。私はこの屋敷で見聞きした事、そしてこれから見聞きする事全てを一切他言無用とすると誓います」
アーデルハードが胸に手を当て誓いを立てる。
「よろしい。ではまず、シロガネ殿だが、四聖獣が一体の白虎様の分身体である。そしてペルル殿はとある神々によって遣わされた、願いの守護獣カーバンクルだ。このおふたりは常にエルシーアの側で、エルシーアの守護をしてくださっている。
そしてそのエルシーアは、この世界の創造主で在らせられるエアネスト様から託された、この世界の愛し子だ」
アーデルハードの答えにサロン内の空気が重苦しくなる。
「アーデルハード…、それはどういう事だい…?」
「言葉の通りですよ、兄上。ハンナの懐妊が分かった時に、私達は悪魔の選択をしたのです。
これ以上カーラの醜聞が社交界に広まる前に処分しようと。
フォーゲル家の跡継ぎは煩わしいカーラではなく、新たに産まれてくるお腹の子にしようと。
カーラはウィルフリードくんを前にすれば絶対に暴走する。そうなれば騒ぎを起こした張本人の責任としてカーラを処断し、北の修道院に送ろうと計画していたのです…。
もちろん今はそんな恐ろしい事は思っていませんっ!!
エルシーアちゃんの七色の魔力の効果なのかわかりませんが、今は頭がとてもスッキリしているのです。
今思えば、何故あんな恐ろしい事を当たり前の様に考えていたのか…」
アーデルハードが自分の前髪をくしゃりと乱し項垂れる。
普段の儚げで楚々とした姿とは全く違う憔悴っぷりに、本当に後悔をしている様子が伺える。
【カーラが付けていた香水『惑わす者』は、人間が心の奥底に持つ負の感情を徐々に表面化させる効果がある。
香水の効果は本人だけでなく、その臭いを嗅いだ周囲の人間にも影響を与える。
アーデルハードとハンナはカーラの最も身近にいる人間だ。それだけ『惑わす者』の影響が強かったのであろうよ】
これまでエミリーの膝の上でくつろいでいたシロガネ殿が、顔を起こしカーラ嬢の香水の効果を説明する。
『惑わす者』…。恐ろしい効果を持つ香水だ。
しかし──
「──シロガネ殿、喋ってしまってよろしいのですか?」
エミリーの向かいに座るアーデルハードの様子を確認すると、案の定、驚きの表情をしている。
【ちょうどいいタイミングだったのでな。
フリッツィ、我とペルルをアーデルハードに紹介し、エルシーアの事を説明せよ】
そう言うと、シロガネ殿とペルル殿はエミリーと妻の膝の上からそれぞれサロンのテーブルの上にぴょんと飛び乗り、アーデルハードの方を向く。
「アーデルハード。まずは何も言わず、わたしの話を聞いて欲しい。
このおふたりの名前だが、虎模様の白猫がシロガネ殿。そして隣のカーバンクルがペルル殿だ。
おふたりとも人語を解する事ができる。ここまではよいか?」
「えぇ…、兄上。先程の騒動でシロガネ様とペルル様がエルシーアちゃんと話しているのを見ましたから。やはり夢ではなかったのですね」
「あぁ。それで話はここからが本番だ。
アーデルハード、この屋敷に着いてから見聞きした事、そしてそれから見聞きする全ての事は一切他言無用とする。ハンナ夫人、カーラ嬢にも話してはならない。
万が一、ほんの少しでもここで見聞きした事を外に漏らす様な事があれば、その命は無いと心得よ」
もしここでアーデルハードが少しでも躊躇う様子を見せるのであれば、闇魔法に精通しているエミリーに今日の出来事全てを記憶から抹消してもらう必要が出てくる。
初めからハンナ夫人とカーラ嬢から今回の騒動の記憶を抹消するつもりであった。
そこにアーデルハードの記憶まで抹消してしまうと、復活した邪神の手がかりを得るのが難しくなってしまう。
できればアーデルハードには王家の裏の番犬の一員として、邪神の封印に力を貸して欲しいところだ。
「わかりました、兄上。私はこの屋敷で見聞きした事、そしてこれから見聞きする事全てを一切他言無用とすると誓います」
アーデルハードが胸に手を当て誓いを立てる。
「よろしい。ではまず、シロガネ殿だが、四聖獣が一体の白虎様の分身体である。そしてペルル殿はとある神々によって遣わされた、願いの守護獣カーバンクルだ。このおふたりは常にエルシーアの側で、エルシーアの守護をしてくださっている。
そしてそのエルシーアは、この世界の創造主で在らせられるエアネスト様から託された、この世界の愛し子だ」
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